ご苦労さん労務やっぱり

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有期労働契約のクーリング期間に関する誤解と悪用

2023-08-13 15:59:10 | 労務情報

 雇用期間の定めのある労働契約(以下、「有期労働契約」と呼ぶ)は、その期間が満了したら雇用関係は解消されるのが基本であるが、両者の合意によりこれを更新することは差し支えない。
 そして、その更新が通算5年を超えて反復されることとなった場合には、労働者の申し出により無期契約に転換する(労働契約法第18条第1項)が、契約を一旦終了させて一定の空白期間(クーリング期間)を経過した後に新たな契約を結び直すのであれば、契約期間を通算しない(同法同条第2項)こととされている。

 しかし、これに関する誤解や悪用が多く見受けられている。

 「誤解」というのは、クーリング期間の長さに関するものだ。
 労働契約法はクーリング期間を「6か月(1年未満の有期契約については、その期間の2分の1)以上」と定めているところ、「クーリング期間を1日でも置けば契約期間は通算されない」と思っている経営者も一部にはいるようだ。 「誤解」というより「無知」というべきかも知れない。

 「悪用」というのは、クーリング期間の長さについては正しく理解しつつも、「6か月後に再雇用することを予め約束して一旦雇い止めする」という経営者が少なからずいることだ。 たしかにこうすれば無期転換しないわけだが、さすがにこれは“脱法行為”との誹りを免れえまい。

 これらの点に関し、厚生労働省に設置された労働政策審議会(労働条件分科会)が昨年末(年の瀬令和4年12月27日)に公表した『今後の労働契約法制及び労働時間法制の在り方について(報告)』において、「クーリング期間に関して、法の趣旨に照らして望ましいとは言えない事例等について、一層の周知徹底に取り組むことが適当である」と提言している。
 この報告書は“公労使”三者の意見を集約したものであるためソフトな言い回しになってはいるが、議論の中ではクーリング期間の廃止(空白期間の有無にかかわらず契約期間を通算する=無期転換しやすくなる)まで視野に入れて検討していた。
 最終的な報告には細かく言及されていないものの、クーリング期間に関する誤解や悪用は国も問題視しているのだ。

 そもそも、反復更新している有期労働契約を解消するのは、合理的な理由があり、かつ、社会通念上相当でなければならない(労働契約法第19条)。
 「無期転換させたくない」というのは、経営者側の“動機”としては理解できないでもないが、雇い止めの“理由”としては合理性も相当性も満たさない。
 トラブルの素でもあり、有期雇用従業員のディモティベーションにもなりかねないので、安易な雇い止めは慎むべきだ。


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