ご苦労さん労務やっぱり

労務管理に関する基礎知識や情報など。 3日・13日・23日に更新する予定です。(タイトルは事務所電話番号の語呂合わせ)

労働時間の“状況”の把握とは?

2019-08-13 15:59:36 | 労務情報

 労働基準法第41条は、管理監督者(※)には労働時間等に関する規定を適用しない旨を定めている。そのため、タイムカードやICカード等の制度を導入している企業であっても、管理監督者に該当する従業員については、これらの打刻義務を免除する、出勤時のみ打刻する(退勤時は打刻しない)、といった例が見受けられた。今年の3月までは。
 (※)ここで言う「管理監督者」とは、社内で呼称される「管理職」とは少し意味が異なり、「経営者と一体的な立場にある者」を指す(S22.9.13発基第17号)。

 しかし、働き方改革関連法の一環として労働安全衛生法が改正され、この4月からは、管理監督者を含むすべての労働者(ただし高度プロフェッショナル制度の適用者を除く)について「事業者は(中略)労働時間の状況を把握しなければならない」とされた(同法第66条の8の3)。
 具体的には、タイムカード、パソコン使用時間の記録、事業者の現認等の客観的な記録により、労働日ごとの出退勤時刻や入退室時刻の記録等を把握しなければならない(H30.12.28基発1228第16号)。

 さて、ここで気を付けたいのが、「状況」という二文字だ。
 そもそも管理監督者や裁量労働適用者は、始業・終業・休憩時間はもとより労働の密度でさえ自ら決定することができ、そこに「労働時間」という概念は(本来は)無い。しかし、それが過重労働につながっている現状を鑑みて、厚生労働省は「労働者がいかなる時間帯にどの程度の時間、労務を提供し得る状態にあったか」(同通達)という少し広い概念を「労働時間の状況」と定義し、これの把握を事業主に義務づけた。
 つまり事業主は、管理監督者や裁量労働適用者についても他の従業員と同様に出退勤時刻を把握しなければならないわけだが、それだけに止まらない可能性がある。というのは、管理監督者や裁量労働適用者は社外(在宅中を含む)においても「労務を提供し得る状態」にあることが少なくないからだ。
 行政通達の文面からは、そうした時間もすべて把握しなければならない、と読める。この点、行政当局がどのように運用していくか、今後の動きを注視しておきたい。

 ところで、この規定は、同法第12章に定める罰則の対象には含まれていない。しかし、従業員や退職者(場合によりその遺族)から「過重労働により健康を害された」などとして民事訴訟を提起された場合には、法律に定める義務(「努力義務」ではなく「義務」)を果たしていない会社は、それだけで不利になる。
 もっとも、刑事罰を逃れたり民事訴訟で有利に立つためではなく、従業員が健康で働いてくれることが会社にとっても望ましいはずだ。労働時間の“状況”の把握は、「義務」というより「経営に必須の事項」と認識するべきだろう。


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