「椰子並木に、『椰子のおばけ』が出たのよ!」
クラウンから降り立った、虚庵夫人の第一声だった。買い物からの帰路、夕陽が三浦半島の山並みに沈み、暮れなずむ椰子並木を走って来たら、『椰子のおばけ』が目に入って怖かったという。翌日、手を引かれる様にして確認に連れて行かれた。
何時もは海岸のプロムナードを散歩する虚庵夫妻だが、手を引かれて行ったのは椰子並木の、住宅街側の外れだった。太い幹だが意外にも背の低い「カナリー椰子」が、たわわに実って垂れ下がっていた。
夕暮れの、街路灯の朧な明かりでは「お化けの手」の様に見えたに違いあるまい。それにしても、何とまあ「なつめ椰子の実房」の見事なことか。
カナリー椰子は「なつめ椰子属」のお仲間ではあるが、食用として持て囃されている「なつめ椰子」とは別種の様だ。
果糖とブドウ糖が豊富な「なつめ椰子の実」は、聖典コーランでは「神の与えた果実」と云われているが、カナリー椰子・ワシントン椰子の並木を散歩しつつ、「椰子の実」に涎を垂らす虚庵居士であった。
帰るなり 「椰子のおばけ」と ふるえたつ
わぎ妹子なだめつ明日見に行こうと
あくる日に手を曳かれゆく椰子並木
何時もと変らぬ椰子の並木は
先に立ち 「椰子のおばけ」 は あそこよ! と
カナリー椰子は 実房を垂れて
何とまあ 見事な実房か カナリー椰子の
棗の房の重たげなるかな
聖典のコーランに称える棗かも
神の与えた果実ならむや
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