「うつろ庵」の窓辺に、鳩ポッポが巣を作って抱卵した。
リビングの西窓には、日除けを兼ねた生垣を、軒先まで伸ばしてあることは先の 「椿と小鳥達」にも書いたが、その窓辺に鳩ポッポが巣を作って抱卵中だ。
カーテン越しに、鳩ポッポを驚かせないように、そっとカメラに収めたのが下の写真だ。中央上部、矢印の先に鳩ポッポが見える。巣に蹲って、昼夜を問わず卵を抱き続ける姿は、何ともいじらしい。
虚庵夫妻は普段の生活スタイルを変えないで、優しく見守ることにした。
夕刻から翌朝までは厚手のカーテンを静かに閉めるが、日中はレースのカーテンを開けずに置き、室内の行動も極力静かに振る舞っているこの頃だ。
鳩ポッポの巣の向こうは4メートルの私道で、人も車も殆ど通らないのが幸いだ。
「うつろ庵」の周りの道路の落葉や花びらを掃除するのが、虚庵居士の毎朝の日課だが、その作業も出来る限り静かに続けることにした。
数日前から、鳩ポッポの巣の下を掃く際には、彼女にだけ聞こえる程度の小声の「鳩語」で、数回のご挨拶をする虚庵居士だ。何回目のご挨拶であったろうか、虚庵居士の小声のご挨拶に対して、鳩ポッポがごく低音で喉を鳴らして応えたのには、 感激であった。ほんのささやかな交歓であったが、確かな心の繋がりが感じられた。
実はこの番(つがい)の鳩ポッポは、3年前から「うつろ庵」の窓辺に営巣しているのだが、悲しい物語を繰り返してきた。 最初の営巣の様子は「西窓の鳩ぽっぽ」に 記したが、残念ながら雛を孵すまでには至らなかった。
翌年の4月再び抱卵し、その時の状況は「じじ・ばばと鳩ポッポ」に詳しく書き残したが、誠に悲痛な結果になった。「ひび割れた泥岩と鳩ポッポ」及び「母鳩の号泣」に、涙ながら書き留めた。お目通し頂き、鳩ポッポの思ひを共にして頂きたい。
彼女ら番の鳩ポッポと共に、虚庵夫妻も今年こそは元気な雛が育って欲しいものと、心から願い、祈る思いで見守り続ける毎日だ。
窓近く吉備の椿の鳩の巣に
雛の孵るを じじ・ばば祈りぬ
鳩の声に こぞおととしを偲ぶかな
涕あふれる悲しき結果を
吉備椿の古巣に戻り母鳩は
ただひたすらに卵抱けり
鳩の巣の下を掃きつつ小声にて
励まし送りぬ鳩の言葉で
はからずも頭の上から母鳩は
幽かにのどを鳴らして応えぬ
今年こそ元気な雛の声聞かむ
餌のおねだり 羽ばたきも観む
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