「うつろ庵」の葡萄が、芽吹きの季節を迎えた。
葡萄棚の下から見上げれば、陽光を浴びた若葉が透けて、鳥が羽根をひろげ、
青空に向けて将に飛び立つ瞬間を観る様だ。
昨年までは生垣の珊瑚樹に絡ませて、蔓を好き放題にさせていたが、葉が枯れ落ちた年末に葡萄棚に移した。葡萄棚と云えば聞こえはよいが、「棺桶ベンチ」の日除け簾を外し、フレームを葡萄に明け渡したに過ぎない。篠竹を若干追加して葡萄蔓を固定したら、ほどほどの葡萄棚に変身した。
若葉を裏側からだけ見たのでは、葡萄に失礼だ。
「棺桶ベンチ」の上に立って、頭を葡萄棚の上に出したら、若葉が陽を浴びている初々しい姿が目に飛び込み、思わず「今年もガンバッテ!」と声を掛けた。
葡萄の新芽は、ごく繊細な羽毛に護られて成長する。その片鱗をご覧頂きたい。
この初々しい新芽が成長し、やがて小粒ながら葡萄の房を付けるのだ。虚庵居士は昨年、その葡萄を頂いてワインを醸造した。思わぬ上質なワインを口に含み、ご満悦の爺だったが、葡萄棚のプレゼントはそのワインへのささやかな御礼だ。
葡萄棚の下から若葉を見上げれば
羽ばたき飛び立つ鳥かとぞ観ゆ
春の陽をうけて透けにし若葉なれど
やがては葡萄を蔓に吊るさむ
葉裏のみ見上げるだけは失礼と
葡萄の棚に頭をもたげぬ
眼の前の新芽・若葉に目を瞠り
思わず「ガンバレ」励ます爺かな
いと細き羽毛は葡萄の新芽抱き
母のこころか育み念じて
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