野草の中でも、類い稀な艶やかな名前を授かっているのが、「おしろいばな」だ。
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日中は花びらを閉じて、あたかも仮眠状態だが、昼過ぎになるとお化粧を整え、
花びらを開いてお出ましになるのは、どこか「おいらん」を思わせる。
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昔の子供たちは「おしろいばな」の実を潰し、実の中の「おしろい」を思わせる純白の粉を頬にぬり、「お化粧ごっこ」をして遊んだものだ。
男児の虚庵居士は「おしろい」の化粧をせずに、何時も「お婿さん」役で、紅色の「おしろいばな」を盃に見立てて、三々九度を何遍となく繰り返して遊んだことが想い出される。
そんなお遊びを続けて夕暮れになると、白花の「夕化粧」が薄暮にポッと
浮かびだすのが、子供ながらに印象的であった。子供の当時は、夕化粧の意味を
理解できなかったが、紅花は夕暮れに紛れるのに比して、白花が鮮やかに浮かぶ
姿が、未だに瞼に浮かぶ。
最近は、交配が進んだのであろうか。黄色の「おしろいばな」にも時々お目にかかる。黄色だけでなく、紅色が適度に混ざった花など、野花の世界でも交雑種がかなり進んでいるようだ。
昨今の子供たちは、オママゴト遊びなどとんと見かけないから、「おしろいばな」も「夕化粧」もお呼びがかからず、自然に萎れるて散るのが当たり前のようだ。
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道端におしろいばなの花咲けば
幼き頃をおもほゆるかな
黒き実を石でつぶしておしろいの
お化粧手伝うお婿さんでした
くれないの花は盃いく度か
三々九度をくり返すかな
お嫁さんお婿さんとのオママゴト
おしろいばなで飽かずに遊びぬ
あの頃の幼き友は如何ならむ
まだオママゴトの続く思ひぞ
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