「虚庵居士のお遊び」

和歌・エッセー・フォート 心のときめきを

「夕暮れの化粧」

2014-08-10 00:30:19 | 和歌

 野草の中でも、類い稀な艶やかな名前を授かっているのが、「おしろいばな」だ。



 日中は花びらを閉じて、あたかも仮眠状態だが、昼過ぎになるとお化粧を整え、
花びらを開いてお出ましになるのは、どこか「おいらん」を思わせる。

 紅色の花を「白粉ばな」と称し、白花には「夕化粧」との名前が付けられているのも、もの思わせげな命名だ。

 昔の子供たちは「おしろいばな」の実を潰し、実の中の「おしろい」を思わせる純白の粉を頬にぬり、「お化粧ごっこ」をして遊んだものだ。

 男児の虚庵居士は「おしろい」の化粧をせずに、何時も「お婿さん」役で、紅色の「おしろいばな」を盃に見立てて、三々九度を何遍となく繰り返して遊んだことが想い出される。

 そんなお遊びを続けて夕暮れになると、白花の「夕化粧」が薄暮にポッと
浮かびだすのが、子供ながらに印象的であった。子供の当時は、夕化粧の意味を
理解できなかったが、紅花は夕暮れに紛れるのに比して、白花が鮮やかに浮かぶ
姿が、未だに瞼に浮かぶ。

 最近は、交配が進んだのであろうか。黄色の「おしろいばな」にも時々お目にかかる。黄色だけでなく、紅色が適度に混ざった花など、野花の世界でも交雑種がかなり進んでいるようだ。

 昨今の子供たちは、オママゴト遊びなどとんと見かけないから、「おしろいばな」も「夕化粧」もお呼びがかからず、自然に萎れるて散るのが当たり前のようだ。




           道端におしろいばなの花咲けば

           幼き頃をおもほゆるかな 


           黒き実を石でつぶしておしろいの

           お化粧手伝うお婿さんでした


           くれないの花は盃いく度か

           三々九度をくり返すかな


           お嫁さんお婿さんとのオママゴト

           おしろいばなで飽かずに遊びぬ


           あの頃の幼き友は如何ならむ

           まだオママゴトの続く思ひぞ







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