シリーズでご紹介してきた佐渡・金北山の高山植物も、休みやすみの掲載ゆえに最終回の今日は、ついに梅雨をむかえた。佐渡も小雨にけむっているに違いない。
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猩々とは、古人が創りだした架空のケモノ。酒が好物で、しとど酔うた顔には朱がさすと云うが、つね日頃の虚庵居士もさながら猩々そのものといったところだ。
朱面を付ける能舞の猩々は、酒を堪能し、足さばきは水面に浮かぶが如く、はたまた飛沫を上げて水上に跳躍するが如く、髪振り乱して千変万化に舞い戯れ遊ぶ。
猩袴の花の風情に、髪振り乱す謡曲の一節が思い出されて・・・。
猩袴(しょうじょうばかま)
芦笛と波の鼓は空耳か
猩々舞ふに いざ酒酌まむ
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一人静(ひとりしずか)
君知るや山伏二人の越後路を
一人静は佐渡に咲くかも
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山荷葉(さんかよう)
山深く踏み分け入れば大き葉に
小花を抱ける母児迎えぬ
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いとけなき小花は小声の囁きに
耳を貸すらしこうべを傾け
佐渡・金北山に登山されたK氏が、高山植物の写真集を態々お届け下さったのは、ほぼ1ヶ月前であった。学生時代以来、山登りから遠のいている虚庵居士にとっては、誠に貴重な贈物であった。花ばなと言葉を交わすうちに、何時しかK氏に誘われて、一歩一歩高みへ登ってゆく思いであった。
高山植物に和して詠んだ歌の数々は、その様な夢想世界で佐渡・金北山の仙郷に遊び、花々と交わした詞を書き記したものである。
本来であれば、K氏のご芳名を明かすべきであろうが、万が一ご迷惑の及ぶことがあっては申し訳ないので、敢てK氏とさせて頂いた。貴重な写真の数々をご提供下さったことに改めて感謝申し上げて、四回シリーズを閉じることとしたい。
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