「虚庵居士のお遊び」

和歌・エッセー・フォート 心のときめきを

「あっぱれカラス君」 (2)

2016-07-24 13:57:17 | 和歌

点滴に繋がれた虚庵居士は、頻繁に尿意をもよおすので、深夜・早暁を問わず目覚めるのが習慣になった。


カーテンの仄かな明かりに誘われて窓を覗けば、高層マンションは朝もやに抱かれたまま安らかに眠っている気配だったが、街並には既に多くのカラス君達が活発に飛び回っていた。

病室に閉じ込められ身動きならぬ身には、そんなカラス君達の早暁の活動が羨ましく、眩しくすら見えるのだった。


             夕陽さす

             ビルの山々 谷抜けて     

             カラスも家路を 急ぐらし

             幼き頃の あの歌を

             思わずしらず 口ずさむ

             「オテテツナイデ カエリマショ

             カラストイッショニ カエリマショ」      

             点滴つながる 身にしあれば    

               如何にや帰らむ 

                 妻待つ我が家へ


             泣き伏すに

             あらねど睡気(ねむけ)の なすがまま

             まどろむ翁は 点滴の

             なせる小水 度(たび)重ね

             眼(まなこ)をこすり のぞく窓

             まだ明けやらぬ 街並みに

             飛び交う数多(あまた)の カラスかな 

             杜のねぐらを 夙に出て

               はげむ姿に

                 訓えを得るかも
 
                             ( つづく ) 





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