「虚庵居士のお遊び」

和歌・エッセー・フォート 心のときめきを

「甲斐路」

2008-10-30 01:53:41 | 和歌

 甥の通夜・葬儀、それと初七日の法要の間に、多くの懐かしい皆さんと、親しくお話しする機会が持てた。疎縁の親類縁者とは、不祝儀の席でもないと普段は殆ど顔を合わせないので、若くして逝った彼には済まない言い分であるが、甥の引き合わせだと、感謝している。
  
 その様な中に、実直な一人の好漢がいた。
二・三年前に、彼の収穫したトウモロコシの初物を、姉からのお裾分けとして宅急便で頂いた。丹精こめて育てた玉蜀黍は、皮を剥けば新鮮な香りが昇り立ち、粒がキラキラ輝く様を、「未生の真珠」と歌に詠んだことを思い出した。

 通夜の席で久方ぶりのご挨拶を、小声で、言葉少なに交わして別れた。
葬儀が済んで、初七日の法要までの短い相間に彼が傍に来て、今日は車で来たかと聞いた。「マイカーの余寿命と、己の余命を勘案して車を買い換え、馴らし運転を兼ねてやって来た」と答えたら、笑みを浮かべて駐車場に連れて行かれた。彼のワゴン車の荷台を開き、大ぶりの市販用葡萄セットを取り出して、車に積んで行けと言う。房の大きな「甲州葡萄」と「甲斐路」のセットであった。


        


             
          収穫が遅れた葡萄と言いながら

          手渡す箱には房が溢れて


          手に取れば粒はプリプリ実がしまり

          皮ごと食めば香りたつかな


          遺児のこと頼むと云えば快く

          請けにしまなこは澄みて清しき






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2 コメント

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身に沁む寒さ・・ (お~どりん)
2008-11-11 00:29:03
甥ごさんの訃報は
何とも寂しいですね・・
ご冥福をお祈りいたします。
しかし使命を全うされての旅立ちだったのでしょうね
虚庵さまのお歌を天国で、どんなにか感謝されている
事でしょう。

実は私の友人の
ご主人が今日お亡くなりになりました。
絶対に良くなって退院する!と固い約束をしたのに・・
働き盛りの55才でした。
人生長生きに越したことはありませんが
どう生きたか・・?が大事ですね。
チャランポランな我が身を振り返り
反省しきりです。

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身に沁む寒さ・・ (虚庵)
2008-11-11 11:49:57
友人のご夫君の、若くしてのご逝去
ご冥福をお祈りします。

余りにお若い旅立ちは、
友人をお慰めする言葉も失いますよね。
無言で、そっと肩を抱きしめてあげて下さい。

シニアと学生の対話を重ねている虚庵居士ですが、
最近は、”死 near ”かなと、しんみりとします。
「笑って死ぬ」準備が出来るまで、
死神に「待った」を申し伝えております。

雪の舞う季節、風邪を引かないよう
念じております。

   (虚庵居士の念力、格段の威力あり)



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