正行寺の境内で遊ぶ子供たちに、手をふり「さよなら」をして山門に向かったら、 参道脇に珍しくも「釣瓶井戸」があった。
黄葉と紅葉の「もみじ」が釣瓶井戸に寄り添い、何とも言えぬ風情であった。
水道が普及して、今の社会生活では手汲みの井戸などは殆ど使われなくなった。
この寺の釣瓶井戸も実用に供していることはあるまいが、仏道修行の寺の境内に、「汲めども尽きぬ命の水」がひっそりと残されていることに、無言の訓えを頂いた。
釣瓶井戸を写し終えて、紅葉の葉を透かして境内の奥を見たら、子供たちは元気に遊び続けていた。晩秋の夕陽は、釣瓶落しの如く早く暮れるなどと言うが、西に傾いた夕陽が参道を木陰で覆っていた。
ほんの一寸した訪れであったが、紅葉と子供たちと釣瓶井戸に、豊かな心を頂いたひと時であった。
境内で遊ぶ姉妹に手を振りて
さよならすればモミジ葉舞うかな
山門を潜らんとしてふと見れば
釣瓶井戸かも もみじ寄り添い
青竹の井戸蓋の上に吊り下がる
傾く釣瓶は思案の姿か
仏門の黙して語らぬ釣瓶井戸は
汲めども尽きぬ命を説くらむ
葉隠れに奥を見やれば子供らの
遊ぶ姿に楽園おもほゆ
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