晩秋から初冬にかけては、庭木や街路樹の実が目を愉しませてくれる。
「うつろ庵」では蘇芳梅の根元に置いた、鉢植えの「千両」が見事な紅の実をつけて、朝な夕なに虚庵夫妻にご挨拶をしてくれるこの頃だ。
千両の実は、雀や小鳥たちにとっては冬の恰好なご馳走で、彼・彼女らの群れに目を付けられれば、あっという間に丸坊主になることも間々ある。そんな被害予防に、レースのカーテン風ネットをすっぽりと被せて、せめて正月までは紅の実を保ちたいと、心配りするお宅もあるほどだ。頬かむりした千両の、哀れな姿をご想像あれ。
「うつろ庵」では総て、在るがままが原則だ。
小鳥たちも狭い庭のお仲間として、「啄ばむのも遊ぶのもご自由に」が原則だから、千両も南天の実もかなり早い段階で消え失せる。だが、時には小鳥たちの置き土産から、思いも掛けない可愛い芽生えがあったりして、じじ・ばばを狂喜させることもあるから、小鳥達とは持ちつ持たれつのお仲間なのだ。
紅の小粒のかずかず寄り添えば
みどり葉大事に捧げる風情ぞ
紅の見事な実房は千両の
値打ちと古人は名前にとどめぬ
小鳥らの啄ばみ避けむと頬かむり
させるは余りに哀れならずや
小鳥らが啄ばみから穂になりたれば
もてなし「千両」と お誇りなされ
朝な夕な千両の実房のご挨拶に
じじ・ばば頷き 「あいさつ」 返しぬ
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