「虚庵居士のお遊び」

和歌・エッセー・フォート 心のときめきを

「空蝉の群れ」

2013-10-31 01:43:59 | 和歌

 珊瑚樹の生垣に、「空蝉の群れ」が留まっていた。

 今年の夏は類い稀な猛暑であった。夏を謳歌した蝉たちの鳴き声も、例年に比べて一際賑やかだった。そんな名残が、生垣の空蝉の群れで見られようとは思いもよらぬことであった。

 過日の台風は猛威を奮って、大島の土砂崩れでは、お気の毒にも数多くの犠牲者が出た。心からの哀悼を捧げたい。横須賀での被害はごく些細なもので、ガレージの屋根の破損や、物置や塀の転倒程度であったが、それでも真夜中の烈風の音は筆舌に尽くし難いものだった。

 そんな強烈な風に吹かれても、空蝉が生垣の葉にとどまっていたのは信じ難いことだ。何年かの幼虫時代を地中で過ごし、空へ舞い立つ前の脱皮では、渾身の力を籠めて珊瑚樹の葉に、鋭い爪を立ててしがみ付いた結果であろうか。

 「空蝉の群れ」には、蝉たちの命を懸けた、羽ばたきへの思いが偲ばれる。




           生垣に群れて留まる空蝉に

           今年の猛暑をしみじみ思いぬ  


           この夏は一際激しく鳴く蝉を

           恨めしくすら思いこそすれ


           秋立つについぞ蜩聞かぬとは

           如何なることか蝉の事情は


           真夜中に荒れ狂うかな台風の

           すさまじき音をいまだ忘れず


           あれほどの烈風豪風すさぶるに

           葉にしがみ付く空蝉あっぱれ


           生垣の空蝉の群れみるにつけ

           脱皮にかけた思ひをしのびぬ







最新の画像もっと見る

コメントを投稿