「虚庵居士のお遊び」

和歌・エッセー・フォート 心のときめきを

「珊瑚樹 夏の名残り」

2009-09-06 11:09:41 | 和歌
 
 「うつろ庵」のごく狭い敷地は三方が珊瑚樹の生垣に囲まれているが、今まさに珊瑚の季節を迎えて眼を愉しませてくれている。

 今年は春先から殊のほか「あおば羽衣」の幼虫が、珊瑚樹の枝先や花穂について、白い粉末をあちこちに付着させた。成虫に脱皮した後も、そのまま珊瑚樹に留まって樹液を吸い続けるので、鮮やかな珊瑚の実にはお目に掛かれないかと心配したが、それも杞憂になってほっとした。元来、珊瑚樹は精力の極めて旺盛な庭木ゆえ、「あおば羽衣」の寄生などはへっちゃらなのであろう。

 将に珊瑚色に色づいた実房を観ていたら、昵懇にしている植木職人の親方が通りかかって、お褒めに預かったことを思い出した。
珊瑚樹の花房がまだ咲かぬ梅雨前の時節で
あったが、生垣の枝の中に閉じ込められている花房を、日当たりの良い場所へ引き出して、やがて真っ赤な実が生る日を夢見ていた。植木職人の親方はその整枝を目ざとく見つけて、プロ職人にも見習わせたい業だとのお褒めであった。彼の言うには、「植木の手入れは心配り気配りが肝心だ。やがて育った
先の姿をどの様にイメージするか、その様な姿を頭に描けるか否かが、職人の勘どころと云うものだ」と
宣うた。全てに共通する名言として、心に刻みつけた。


             紅の珊瑚の実房は雨に濡れて

             色とけぬかと 稚児は問ふかな







             妹が胸の飾りになさんか紅の

             珊瑚の珠の豊かな房を


             空蝉は夏の名残りをささやくや

             紅深まる珊瑚の実房に






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