生垣の珊瑚樹の「房珊瑚」が、見事に色づいた。
五・六ミリの小粒の実が、およそ 三百個ほどビッシリと房をなす姿は、其れだけでも見ごたえがあるが、鮮やかな珊瑚色に発色した様は、見事の一語に尽きる。
本物の珊瑚は、古来、宝飾品として人気がある。一般に出回っているのは朱色あるいはピンクの珊瑚だが、色の濃い「血赤珊瑚」は貴重品で、お値段もまた格別だ。更に黒みがかった深みのある色合いのものは、目利きの世界でも垂涎の品だ。
「うつろ庵の房珊瑚」は、光線の陰りによっては黒味を帯びぬでもないが、むしろ鮮やかな「血赤珊瑚」の部類であろうか。虚庵夫人には日頃から宝石のプレゼントなどしたこともないが、「房珊瑚」の一部を切り取り、彼女の豊かな胸もとを飾ったらどんなであろうか。
「やっぱり本物がいいわ!」 虚庵夫人の声が聞こえるようだ。
生垣に緑を連ねる珊瑚樹は
夏惜しむらし実房を染めるは
粒々のあまたの実をば残りなく
血赤に染めるは滾る思か
一つならず血赤珊瑚の房々の
滾る思いを誰ぞ受けなむ
としふるにいまだわぎもここふるかも
ちあかさんごにたくすやおもひを
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