「うつろ庵」の深紅の蘇芳梅(すおうばい)が、ちらほら咲き始めた。
春日に輝く、燃える表情をご紹介するつもりでいたが、今日は朝から霧雨が煙り、濡れる夕暮れの表情が、何とも言えず潤いを湛えていたので、急遽ご紹介することにした。毎回のことながら、虚庵居士が感じ取った紅梅の表情を、写真に写し撮れないのが悔しい思いであるが、拙い歌と合せて読者の「心眼」に、その表情を描いて頂きたいものだ。
南天の深緑の葉と古竹を
襲ねる色目は「梅かさね」かな
誂えし梅咲く振袖はじらひて
身に付け初めにし吾娘を偲びぬ
花びらに雫を湛えて咲く梅は
嫁ぎし娘の残せる笑みかも
濡れて咲く夕暮れの梅 紅に
氷雨に堪えるは滾るこころか
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