科学 2007年 03月号 [雑誌] 価格:¥ 1,400(税込) 発売日:2007-02-27 |
「ゲーム脳」についても話題になっており、ぼくも
「《座談会》“神経神話”が問いかけるもの──科学と社会の関係を考える」というのに参加しています。「ふたこと」くらいしか発言は出ていないんですけどね(サイエンスアゴラでの座談会を採録したもの)。
読了して、追記。
まず、津本忠治による特集の「巻頭言」は、
脳科学の知見から教育や子育てへの示唆を得ようとする試みは有意義な場合もあるが、誤解あるいは拡大解釈に基づいている場合も多い
と警句めいたもの。
その上で彼自身の論考は、「"臨界期"概念の成立、展開と誤解」というもの。
早期教育が一部の脳機能の発達には有効かもしれないが、普遍化できるほどのものではないと解説している。
なるほど、これはスロースターター万歳なぼくには意を得たりな概説だった。
坂元章による「テレビゲームが子どもに及ぼす影響」という概説もある。これはゲーム脳理論を意識したもので、直接の言及もある。
あと、発達障害について今の脳科学が到達している地点についてのもいくつかの論考が掲載されており興味深い。
ぼくが参加している「《座談会》“神経神話”が問いかけるもの──科学と社会の関係を考える」は、よくまとまっている。編集者の剛腕ぶり。
座談会を終えた後での松村京子(兵庫教育大学)の「教育現場で「神経神話」がはびこる背景」は一読の価値有り。ゲーム脳や水からの伝言への言及がある。
よい特集だと思う。
にもかかわらず、一番琴線に触れたのは、特集外のエッセイで、神経心理学の田中茂樹による「子育て?最高の体験を生きるために」。
親の過大な期待を背負ってしまう子どもが多くいる現状に心を痛めてこう書く。
……ごく?部にはイチローやヨーヨー・マのような人も出てくるだろう。しかし、しばしば指摘されるように,そのレベルにあとー息,二息でたどり着けなかった何百何千の人たちがいる。彼らは気楽に過ごせたはずの子ども時代を捨てて親の選んだ目標に挑むことに、大人になってからでは同意しなかつたかもしれない。
(中略)
私は地元のスポーツ少年団で小学生のサッカーの世話をしている。毎年冬になると,受験の準備のために4年生や5年生の何人かがクラブをやめていく。三度の飯よりサッカーが好きな子どもたちが、大人のような表情とあらたまった口調で、お世話になりましたと言った後,背中を向けてから泣きはじめた子もいた。そんな彼らの姿にはなんともいえないものがある。塾に行くために退部することになったある子どもの母親は「プロ選手になるわけじやないから……」と言った。稼ぐ手段にならないサッカーではなく、稼ぐ手段になる勉強をするために塾へ行く,というのだろうか。それじゃあまるでもう仕事が始まっているようなものではないか。サッカーは楽しむためにやるものだ 。そして,そもそも私たちは楽むために生きているのではないのか? その年齢でしか楽しめない仲間がありサッカーがある。それを捨てる(奪う)リスクに見台うゲインが、母親には見えているのだろうか。
しんしんと胸が痛い。
札幌で、ゲーム脳関連(かもしれない)の真面目なワークショップが行われるようです。
科学技術振興機構の社会技術研究開発センターが主催で、脳神経や教育関係の学者だけでなく、ソニーの福永氏などのお話も聞けるそうです。一般向けのサイエンスカフェも開催されるのですが、どんな形でゲーム脳が取り上げられるのか、興味深いところです。
「脳科学と社会」研究開発領域 第3回 脳神経科学と倫理ワークショップ
赤ちゃんの脳、子どもの脳 -科学と育ちと学びの倫理-
http://brain2007.stxst.com/
情報ありがとうございます。
自分の科学の記事を読んで頂いたことを偶然知り、驚きました。コメントありがとうございます。
銀河のワールドカップ 元気の出るいい本ですね。今後もよろしくお願いします。
こういうのも、サッカーの縁ですね。
いや、脳科学の縁?
銀河のワールドカップで元気を出して頂くのは、たいへん「正しい」読み方だと思います。ありがとうございます。
田中さんの文章は、考えさせられますね。何とも言えない気持ちになります。
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『銀河のワールドカップ』、私は、ワクワクしながら読みました。気持ちの良くなる本ですね。
「銀河のワールドカップ」をワクワクしながら読んでいただけるのも、著者としてはこのうえなく「正しい」読み方です。たいへん、うれしいです。