教育破綻が日本を滅ぼす! (ベスト新書) 価格:¥ 780(税込) 発売日:2008-12-09 |
教師格差―ダメ教師はなぜ増えるのか (角川oneテーマ21) 価格:¥ 720(税込) 発売日:2007-06 |
彦根への往復で読む。
尾木さんは、一度、だけCSのニュースでご一緒したことがある。少年犯罪の(見かけの)増加について語ったのを思い出す。
それ以来、尾木さんの本は時々読んで来たのだけれど、彼の特徴はその時のアクチュアルな問題にすぐ飛び込んで行く瞬発力。これらの本も、その時に問題になったことに切り込んでいる。独自の調査手段、調査ネットワークを持つ強みが随所に活かされている。
思いが強い分、時間がたつと読むと筆が滑っているとおもえるようなところもあるし、「喪失の言説」にわりと素直に乗っかって議論する部分も読み取りつつ、意見を柔軟に修正して行く「走りながら考える」論者として、信頼してよいとかんじてきた。
さて、前者は、教育委員会の不祥事が続いた頃に、「教育委員会の内実」を書きつづったもの。
一定の独立性を担保された教育の舵取り役として、密室になりがちであるがゆえに、制度疲労を起こしている部分に切り込む。また、独自アンケートで教員が教育委員会に対して抱いている不満と期待掘り起こす。
議員からの質問に答えるために、現場の現状把握のための文書が、次から次へとやってきて、教員の一日の仕事を圧迫している現状など、「悲鳴」がつづられる。
また、一連のいじめ自殺の際に、いくつかの教育委員会が示した不可解なほど保身的な態度について痛烈に批判する。その上で、教育委員会再生の尾木案を提示するわけだが、ぼくとしては、「一連の教育委員会不祥事」などをめぐる備忘的な本としても役立ちそう。
で、「教師格差」は、安部内閣のもと、教育資格の更新制度など、教師の締め付けをきつくする方向で世論が流れていた頃にはじまる、教員バッシングなどを念頭に書かれている。
先生にそこまで負荷をかけないでほしい。子どもと向き合うじかんをなによりも大事にしてほしい、と思うぼくはおおいにうなずく。
2007年以降の未曾有の「大量採用時代」がひとつの試練であることは、以前、ぼくも実感として述べた。
http://blog.goo.ne.jp/kwbthrt/d/20081129
ずっと前に読んだものだけれど、下のモンスターペアレント本も、単に「最近の保護者」を非難するのではなく、なぜそのような事例が発生するのか、構造的な部分を含めて語ろうとした好著だった。
バカ親って言うな! モンスターペアレントの謎 (角川oneテーマ21) 価格:¥ 720(税込) 発売日:2008-04-10 |
ちなみに教育委員会の成り立ちについては、藤原和博さんのこの本が、これまで読んだ中でベスト。
校長先生になろう! (BP Online book) 価格:¥ 1,575(税込) 発売日:2007-03-21 |
ぼくはこの本を読んでから、教育委員会と教育員会事務局をはっきり区別して書くようになった。
広義の教育委員会として、教育委員会+教育員会事務局を指すことがあると思うけれど、教育委員会=教育委員会事務局として書かれている文章も多く、それは明かに誤用だし、きちんと区別した方がよいと思う。
ちなみに、教育員会事務局は、都道府県レベルでは、教育庁と呼ばれることも多くてややこしい。
北海道教育庁とか、東京都教育庁とか。事務局がえらそう、という点で、なにかやなかんじ。
もともと、レイマン・コントロール(素人による教育行政のコントロール)であり、市民による教育ガバナンスの仕組みであるはずが、結局は事務局側(教育長を頂点とする)の意向を追認する仕組みになってしまっている現状を示すような「偉そう」加減なのだ。