川端裕人のブログ

旧・リヴァイアさん日々のわざ

また新しい春が来る(校長先生のためのPTA入門最終回を公開)

2012-05-10 12:38:27 | 保育園、小学校、育児やら教育やら
月刊プリシンパルに昨年度連載した最終回。
PTA役員だけを見ていると、PTAにある程度適応できた人が集まりがちなので、校長は「うちのPTAは大丈夫」と思いがちかも、という話。
校長にPTAの現状を知ってもらうのはわりと大事なことなので、学事書房のご厚意で、誌面を掲載します。配布オーケイ。PDF版も下からにリンクがあります。
201203princi1
201203princip2

PDF版はこちらからダウンロードできます。

さらにテキスト・バージョン(検索にひっかかればいいなと思い掲載)。



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 また新しい春が来る

 連載開始から暦は一周し、学校の1年度は終了。進級といい卒業といい、学校を仕事場にする人にとって、一番ドラマティックで、感動的な季節であろう。

 学校で活動するPTAにとっても、3月は区切りの月だ。役を担った保護者たちは一応のところ、3月末日をもって重責から解放される。

 様々な価値観を持つ保護者が、学校という不思議な空間(保護者からはそう見えることが多いのです)で活動するPTAは、本来必要ないはずのやっかいごとを学校にもたらしたり(例えば、広報が学校経営上あまりうれしくない特集をしたがったり)、校長からは見えない水面下の摩擦(次年度役員を決める時など、保護者にとって深刻な大問題に発展していることもある)を経つつ、最後は雨降って地が固まるがごとく、形の上では大団円を迎えるようにできている。もちろん、もう二度とやらない、登校拒否!という保護者もいるから「終わりよければ全てよし」と手放しで言うわけにはいかない。

 この点、校長からは実に見えづらく出来ている。機会があったら、任期を終えようとしている本部役員に、ぜひ質問してみてほしい。「一年間の感想は?」と。

 回答として標準的なのは、「大変だったけど、勉強になった。学校のことがよく分かるようになった」というものだろう。かくいう筆者も、はじめて本部役員をやり遂げた3月に校長から聞かれ、そのように回答した。

 でも、実際には、言わなかった続きがある。
「それにしても……無駄な摩擦や、理不尽や、軋轢が多すぎる。心身に不調きたす保護者もみた。嫌々やっている人が多いから、やる気があると逆に疎んじられる。元々、保護者や教員の学習の場なのに、学校への奉仕だと思っている人が多い。それもこれも、関心のない人、出来ない人にまで網をかける強制加入の問題が大きい……」

 実は、その時の校長は女性で、自分の子どもの学校のPTA活動を経験していた。広報の仕事で夜なべしてガリ版を切ったといった思い出も語ってくれた。共感してもらえるかと期待して、実は折に触れて先の様な本音も述べていた。しかし、反応は芳しくなかった。年度末、校長からの質問に、筆者は、自分にちょっと嘘をつき前述のような総括に留めたのだった。

 今にして思うと、件の校長はPTA活動の本当のしんどさを体験していなかったのかもしれない。PTAの保護者会員で、職業が教員であることは最強のカードだ。ほかの保護者は、自分の子の先生を通じて、教員たちがいかに替えの効かない仕事をしているか目の当たりにしている。基幹病院の手術室看護師のように、別の意味で替えの効かない仕事をしている人より、教員の方が「大変だ」と認定を受けやすい。そんなわけで、かの校長のPTA体験は「一般保護者」とはかなり違っただろう。

 大変だったけど……の背景には、校長が想像する以上に、ぎゅっと凝縮されたひと言で言い表せない苦労が含まれている可能性がある。だからこそ、校長には、PTAが本来の主旨を超えて、義務・強制・負担になってしまいがちな現状に、歯止めをかけられる可能性があることを自覚していただきたいと願うのだ。筆者は世の校長先生に、そう伝えたい一心で本連載に臨んだ。

 なにはともあれ、また新しい春が来る。
 
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なお、月刊プリンシパルはこんな雑誌です。
ぼくは今年も連載を持ってるんですが、PTAを離れた話題です。6月号では、ルワンダの小学校を訪問した時の話を書いています。
月刊 Principal (プリンシパル) 2012年 06月号 [雑誌]月刊 Principal (プリンシパル) 2012年 06月号 [雑誌]
価格:¥ 620(税込)
発売日:2012-05-12