川端裕人のブログ

旧・リヴァイアさん日々のわざ

声が大きなおばあさんのこと

2007-10-01 11:38:04 | 日々のわざ
きょうは都民の日で、学校はお休み。
息子と娘と3人で近所のプールに行ったら、午前中は団体利用のみで入れなかった。
帰り道、あるいていると、小柄なおばあさんが、奇声ともいえる大きな声で話しかけてきた。
「あんたたち、いいね!」
まわりの人たちはぎょっとしている。
でも、話しかけられたら、やっぱり返事するだろう。
「ああ、ありがとうございます」とか言っていると、ばあさんの話を聞かされる。
あたしゃ、86ですよ。ほめて、やってよ。
今じゃ、ひとりだもんな。よく生きてる。
27年前に病気して、それでも生きてる。
29ヵ国、旅行したよ。
くも膜下出血でね、死にそうになったけど、それから27年。
うんぬん。

声が大きなのは、少し障害が残っているのだと途中で分かった。
口が震えている。
呂律がまわらず、抑揚がうまくコントロールできない。
自然と大きな声になり、そのわりに、滑舌のはっきりしない、聞き取りにくい話し方になる。

だから、耳をすます。
わずか30秒くらいの立ち話で、いろいろなストーリーが心に立ち上がる。
家までのわずかな時間に、子どもたちに聞いてみる。
なぜ、あのおばあさん、「いいね!」と言っていたんだと思う?

若いから?
子どもがふたりいて、さびしくないから?
そんな回答。
そこからくも膜下出血について、話は滑っていく。

後遺症のことも述べる。ぼくの父も祖父も、脳の血管を切って人生の活動期にピリオドを打った。あのおばあさんは、それが軽くて今も元気。そして、海外旅行もたくさんしちゃう。
異質なうごきをする彼女を不審者にせずに、言葉をかわすと、ご近所さん(たぶん)になる。
きっと、次に顔を見たらあいさつをする。
最近いった旅行のことなんて、今度、聞かされるのかもしれない。