師と教え子が机並べて百歳でも「まだまだだ」/私はこう思う
公明新聞:2013年12月13日(金)付
※※※※※習字教室で同窓会※※※※※※※
愛知県阿久比町 安部恵美子
わが町の町制施行60周年の記念要覧を見ていたら、歴代の町長の欄に懐かしい名前を見つけま
した。六代目町長を努められたSさんです。
Sさんは、私が高齢者施設で習字教室のボランティアを始めた頃、この施設に入所されていて習字
教室に欠かさず参加され端正な美しい文字を書かれていました。
歩行困難で車いすの日常でしたが、いつも頭髪や服装など身だしなみをきちんとされ、机につくと姿
勢を正し毅然と筆を運ばれていた姿が印象に残っています。
その後、Sさんの小学校時代の恩師Nさんと、同級生のMさんも入所されました。恩師と教え子たち
が楽しく思い出を語り合う様子は、ミニ同窓会のようでした。
リュウマチのため曲がった指に起用に筆をはさみ見事な字を書くMさんに「昔から努力家だったね」と
声をかけるNさんご自身も、もっと上手に書きたい」と熱心に稽古されるのです。
Nさんは100歳で亡くなられましたが、私が最後に聞いた言葉は「私の字はまだまだだねぇ」でした。
そも3日後に、Nさんは胸痛を訴えて病院に運ばれ、翌朝、息を引き取られたのです。
2人の教え子もすでに鬼籍に入られましたが、幾春秋を越え、師と教え子が晩年を同じ施設で暮ら
し、机を並べて精進する姿は一幅の絵のようであり、私は万感の思いで見つめてました。
最後まで向上心を燃やし、人生の年輪を光らせて生き抜かれた3人の先輩に、私は限りない尊敬
と感謝を捧げます。
(パート)
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