小説「新・人間革命」
【「聖教新聞」 2013年 (平成25年)12月2日(月)より転載】
o☆:*:.♪o☆:*:.♪o☆:*:.♪
若芽36(12/2)
一九七七年(昭和五十二年)十月、有竹富美枝は、「聖教新聞」に掲載された東京創価小学校の募集要項を見た。
“できるなら、創価小に行かせたい!”
そう思ったが、現実の生活を考えると、とても通わせることはできそうになかった。
婦人部の先輩と、子どもの小学校入学の話になった時、東京創価小学校をめざしてはどうかと、熱心に勧められた。
募集要項に記載されていた、授業料などの諸経費を見ながら、頭の中で計算し、生活が成り立つかどうか考えた。
“生活費をもっと切り詰めれば、なんとかなるかもしれない。でも、そんなことができるのだろうか。もし、家族のうち、誰かが病気にでもなったら、入院することさえ難しくなってしまう……”
彼女の心は揺れた。
婦人部の先輩が、わざわざ、東京創価小学校まで、入学願書を取りに行ってくれた。
願書を目にすると、“絶対に創価小に行かせたい”との思いが込み上げてきた。
“創価一貫教育の学舎をつくることは、初代会長の牧口先生、第二代会長の戸田先生が念願とされ、そして、山本先生が、それを実現されたのだ。今、その創価の師弟三代の大願が、東京創価小学校の開校によって完成をみるのだ!
子どもの幸福のため、社会の不幸をなくすための創価の人間主義教育とは、どんな教育なんだろう。息子の正義を、ぜひ、この小学校に通わせたい。そして、世界の平和のために挺身する創立者・山本先生の、理想の一端でも担えるような子どもになってほしい”
彼女は決意する。
“お金のことは、なんとかしよう! 親の私が塩をなめてでも、息子を、必ず創価小に行かせよう!”
彼女が願書を提出したのは、締め切り日の夕刻であった。
母は強い。母は一途である。母は勇敢である。その母ありて、師子は育つ。
o☆:*:.♪o☆:*:.♪o☆:*:.♪
、