１０月 １０日

　　　　　　　　　　　　　（　梅擬・うめもどき　）


澄むものは空のみならず梅擬 　　　　　　　　　　　森澄雄


梅擬つらつら晴るゝ時雨かな 　　　　　　　　　　　川端茅舎


伊賀人の土間艶やかや梅擬 　　　　　　　　　　　　皆川盤水


兄のこと話せば泣くや梅擬 　　　　　　　　　　　　高浜虚子





ガウラ・白蝶草



今日は体育の日・東京オリンピックの時にころころは中学二年生でした


体育の日や荷役場の熱気球 　　　　　　　　　　　　秋田裕弘


万歩計先づ買ひに行く体育日 　　　　　　　　　　　山田節子

１０月 ９日

　　　　　　　　　　　　　（　衣被・きぬかつぎ　）



鍬の跡ざつくりとあり衣被 　　　　　　　　　　長谷川櫂


子にうつす故里なまり衣被 　　　　　　　　　　石橋秀野


衣被祖母のおやつの塩加減 　　　　　　　　　　関口 里


衣被好み江戸つ子三代目 　　　　　　　　　　　脇坂啓子





泡黄金菊（菊谷菊）



　　　　伊吹嶺１０月号　遠峰集より　


青田波小島の如き墓どころ

朝顔の初花小さき海の色

灼けゐたる鮮魚市場の大時計

塗り剥げし母の庭下駄水引草

植木屋の三角梯子油照　　　　　　　　　　　　　　　　　　こころ

１０月 ８日

　　　　　　　　　　　　( 杜鵑草・ホトトギス　）



ゆく水に触れて色濃し杜鵑草 　　　　　　　　　　山口いさを


活ける間も花のこぼるる杜鵑草 　　　　　　　　　松沢佐多子


紫の斑の賑しや杜鵑草 　　　　　　　　　　　　　轡田進




タイワンホトトギス

咲きはじめはや生臭き杜鵑草 　　　　　　　　　　川崎展宏


大磯や遊女の墓に杜鵑草 　　　　　　　　　　　　高木美波

１０月 ７日

　　　　　　　　　　　　　　（　稲架　）



豆稲架にとどかむばかり波の先 　　　　　　　　　　沢木欣一


豆稲架の日だまり婆々の居場所なる 　　　　　　　　細見綾子




棒稲架

棒稲架のみな旅人のごとく佇つ 　　　　　　　　　　大内史光


しばらくは新稲架として雨はじく 　　　　　　　　　能村登四郎


姥捨や田毎の稲架に後の月 　　　　　　　　　　　　　林 翔


棒稲架も冬囲も風の雄物川 　　　　　　　　　　　　石原八束


夕稲架のあはきほてりにしばし沿ふ 　　　　　　　　八木絵馬

１０月 ５日

　　　　　　　　　　　　　（　花野　）



花野より白根を指せる雲の日矢 　　　　　　　　　　　細見綾子


抱瓶(だちびん)を腰に吊して花野ゆく 　　　　　　　　沢木欣一


川上の水静かなる花野かな 　　　　　　　　　　　　　河東碧梧桐



花野来て夜は純白の夜具の中 　　　　　　　　　　　　岡本眸


岐れてもまた岐れても花野みち 　　　　　　　　　　　富安風生

１０月 ４日

　　　　　　　　　　　　（　秋七草　）

いつもの散歩コースの植物園、秋の七草の中で見ていないものは葛の花だけ


切りまじる秋七草や飼葉桶 　　　　　　　　福永耕二




薬園の秋七草を尽くすころ 　　　　　　　　松村幸一




秋七草嫌ひな花は一つもなし 　　　　　　　　鈴木真砂女




源流へ来て秋七草の手に余る 　　　　　　　　松村操




教室や馬穴にあふれ秋七草 　　　　　　　　　　秋沢猛





子の摘める秋七草の茎短か 　　　　　　　　　　星野立子

１０月 ３日

　　　　　　　　　　　　（　稔り田　）



稔り田を置く谿々のまつり笛 　　　　　　　　福永耕二


バス停は稔り田の中三河晴 　　　　　　　　　関野敦子


稔り田へせり出す佐渡の能舞台 　　　　　　　橋本榮治


稔り田に二つの神輿光り合ふ 　　　　　　　　冨田みのる





黒米


佐久ここの起伏も一揆田の稔り 　　　　　　　諸角せつ子


稔り田に無頼の草が混り立つ 　　　　　　　　山口誓子

１０月 ２日

　　　　　　　　　　　　　（　金木犀　）



金木犀風の行手に石の塀 　　　　　　　　　　澤木欣一


金木犀これよりの日々矢の如し 　　　　　　　中嶋秀子


木犀のしきりにこぼす夜の花 　　　　　　　　中川宋淵


木犀の匂ふ見知らぬ町歩き 　　　　　　　　　新田久子




銀木犀


木犀の金銀へだてなき匂ひ 　　　　　　　　　三田きえ子


闇に出て銀木犀の香に触れぬ 　　　　　　　　山本 祐三


木犀の残り香ほどとなりしかな 　　　　　　　片山由美子