海山の創作ノート

工房T 海山の書、印、絵、版画、工作、etc.日々の暮らしの中で出来た作品を紹介します。 さて、今日は何を作るかな。

No.1572 藤沢一茶・「雀の子…」

2019-08-24 | 


藤沢一茶・「雀の子…」

木がらしや地びたに暮るる辻諷ひ
霜がれや鍋の墨かく小傾城


この句は、藤沢周平氏の最も好きな句として、小説「一茶」の最後の解説文の中にあります。

小林一茶、そういえば、今までに一茶の句はいろいろと書いてきたけれど、伝記などは読んだことがないと思い、図書館で手に取ったのが、藤沢周平の「一茶」でした。

藤沢周平の小説なら、きっと心に染みるかな、と思い読んでみる気になったのです。

思った通り、やはり美しい情景描写です。

小林一茶の生涯は、かなり詳しい足取りが、一茶自身の記したもので分かる様ですが、生まれ育った信濃国柏原を、15歳の時に江戸に出てから、俳句を発表するようになるまでの十年間は、どこで何をしていたのか、全く分かっていないそうです。

そのあたりから、小説という形での作者の想像力が面白く、長い小説ですが、引き込まれてしまいます。

そして、一茶について、今までに思ってもいない人生があり、それ故に、生まれべくして一茶の句が生まれたということ。

生涯で二万もの句を作ったということ。

小動物にも優しい善良で滑稽な句を作るばかりではなかったこと。

かなりひねくれた一茶像が、芸術に身を置く自分にとっても、親密に感じられました。

読後に、早速筆を執ったのですが、どの句にするか、迷いましたが、やはり、こんな句を選んでしまいました。(小説の中では、このタイプの句は出てきませんでした。そこがちょっと残念です。)

痩せ蛙まけるな一茶是にあり
蟻の道雲の峰よりつづきけん

続けて三枚書きました。

(本画宣、聯の切れ端)