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海山の創作ノート

工房T 海山の書、印、絵、版画、工作、etc.日々の暮らしの中で出来た作品を紹介します。 さて、今日は何を作るかな。

No.508 実験書 遂

2014-10-07 | 


「遂」ですが、
なぜ実験としたのか?

実はこれ、二回書いています。
一度目は普通に
(普通にといっても普通に見えないかも知れませんが)
そして、二度目はその動きを覚えておいて、
目をつぶって書いてみました。

どれくらい、体がこの動きを覚えているのか、
という実験です。

驚いたことに、
ほとんどの同じ軌道を通って筆が動いています。
特に最後のしんにゅうは、
筆が割れているようにも見えますね。

書は一回性というのが重要な要素です。
だから、筆の動いた跡を追いかけると
書いた人の手や体の動き、そして心までも
読み取ることができるのです。

「書は凍れる音楽である。」といった人がいます。
まさにその通りで、
時間の流れを作品の中に閉じ込めているようなものです。

絵画はどうでしょうか。
一般的には、はじめに描いた線の上から何度も何度も
色々な作業や色彩が加わっていきます。
時間の流れは積み重なっていくのです。
だから、一枚の絵が完成するまでの時間の蓄積が
目の前に見えるのです。当然時間もかかっています。

絵画と比べると、書はほんの一瞬の時間、
という感じですが、実はそうではありません。
作者がそれまでに培ったものを、その刹那に込めて
筆を動かすのです。
もちろん、練習、技術的な面もありますが、
精神、人間性そのものの表出を意味しています。

芸術の優劣ではなく、
書と絵画には、そんな違いがあると思います。

書でもっと長い時間を表現するには、
沢山字を書けばいいのですが、
一字の書で、何とかならないものかと…。

長くなりあしたが、そんな風に
一枚の紙の中で表現することは可能なのか、
という実験でもありました。