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幸宏氏の死を、湯治先で唐突に知った日曜朝から、四、五日が経った。実際亡くなった11日からすると、もっと経っている。
自分の感情を激しくゆらしたパニックはいったんはおさまったが、ふんづまったまま心の整理ができないでいる。
しかし、そうやっていても仕方がないから、とにかく動こうと朝に思い立ち、藤原新也さんの写真展を予約し、疼痛をちらして世田谷美術館に向かった。
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藤原新也さんを初めて知ったのは写真と文章を織り交ぜた著書「東京漂流」だった。
しかし、実際の藤原さんの姿を初めて見たのは、2001年デヴィッド・シルヴィアンの来日コンサート会場である中野サンプラザでのこと。コンサートもアンコールが終わり、会場を後にする聴衆たちに混じって階段を降りて、ロビー入口付近で振り返ると、階段を真ん中にして左側脇に藤原新也さん、右側に大竹伸朗さんがいた。
個人的に敬愛する2人が数メートル内、同時に視野にいることに 、卒倒しそうになった。
デヴィッド・シルヴィアンゆえに女性ファンがたくさんホールに溢れて、グッズを買ったり、一緒の方とおしゃべりしたりにぎやかで華やかなコンサート終了後の空間。
その往来の中、リュックを片腕で背中側に回し、キャップかぶってタバコを吸い出した大竹伸朗さん。一方、斜め上の空(くう)を眺める藤原新也さん。女性陣は両方の存在に気づかずに動き回る中、藤原さんだけがお地蔵さんならぬ仁王立ちで、直立不動だった。
どちらもファンだったから、サインして欲しかったがあぜんとしたままカラダが動かなかった。その日を思い出す。
現在、偶然にも2人の作品展が同時期に開かれている。この2つの展示会に行くことは、昨年末からの楽しみだったが、宿題のまま越年した。
どちらも見るつもりだが、今の憂いの中で大竹伸朗さんの絵のエネルギーを浴びるチカラがなく、テーマとしても藤原新也さんの大回顧展「祈り」をまずは、と見に行った。
藤原さんの半世紀に渡る旅の中に、デヴィッド・シルヴィアン、レイン・トゥリー・クロウ、EP-4のレコードジャケットに使われた写真や絵を見つけ、猛烈に情動をかきたてられた。
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ブログ「キャットウォーク」では、常にリアリティを重んじながら、するどい目線で世間の事象を言葉に置き換えていくのを見せて頂いている。
それに加えて数年前から始まったポッドキャスト配信の「新東京漂流」は、肉声で伝えてくれるお話しを毎回楽しみにしている。
数年前第一回目を聞いたときには、久々に聴いた声に呼気の弱さを感じたが、配信される話し方、考え方や感じ方は昔通りの「藤原新也」だった。
さらには、今回の展示会に先立ち、昨年Eテレで放送された「日曜美術館」での姿は、78歳とは思えない脚力、精神力。まだまだこれからも様々な教えを願いたいと思っている。
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そして、話しは最初に戻る。
ひとりの大事な人が居なくなった。どうすればいいのか?
答えは、その人の不在を感じることしかない。
マスコミみたいに、訃報を報じたらすぐスポーツのコーナー、などと1.2日騒いで終わるものじゃない。
どうしても40余年を簡単にくくれるわけがない。好きだった母親が亡くなったときと同様、日々徐々に不在になった世界を認識していくしかない。
カラダはもうこの世には無いが、彼が残した作品との付き合いは続く。
これが、今の私が、私に向けた現時点のこたえ。それくらいしか言えない。
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ユキヒロさんのことは、かたちんばさんに比べたら100分の1くらいしか知らないと思いますが、寂しく思います。家にYMOのCDや鋤田さんによる写真を掲げて妻共々喪に服しています。
いつもお気遣いありがとうございます。
藤原新也さんの日曜美術館、良かったですよね。その番組内で門司港を巡って新たに撮りおろした写真も最後のコーナーになっていました。写真は多岐に渡り、正直言って一日仕事でかなりエネルギーが必要でした。そういう意味では大竹伸朗さんの個展と変わらなかったかもしれません。
藤原さんを長く知ってるつもりも、行ってみて初めて知る作品やいきさつもありました。(駅からえらい遠かったですが)とても静かな冬の森の美術館で、異次元世界に入り込んでいくような感じが、これまた「藤原新也的」マジックだな、と思いました。
「祈り」は写真集も出ていますので、もし見る機会があれば是非、、。