こころとからだがかたちんば

YMOエイジに愛を込めて。

2014年4月30日 水曜日 音楽風景 ~夜の孤島で夕食を~

2014-04-30 22:46:13 | 想い出かたちんば

テレビのコマーシャルが先だったか?FMラジオの洋楽ベスト10で聴いたのが先だったか?
今はもう定かではないが、スーパートランプの「ブレックファスト・イン・アメリカ」は、リアルタイム・同時進行で洋楽勉学途上の耳には、鮮やかな音楽として際立って聴こえた。

1979年のことである。
周囲には、終焉間近のイーグルス、クリストファー・クロス、J.D.サウザー、カーラ・ボノフなど、当時魅惑の世界。それらは自分に向かって、今でも切なくメロウな顔をして・奇妙な色気を放ってくる。
そこには「これはアメリカ、これはイギリス・・・」といった境目は、どうでも良い安息がある。

スーパートランプが、長い事バンドとして作品を出してきたことは、この曲が契機となって知った。
アルバム「ブレックファスト・イン・アメリカ」は、レコードジャケットのデザインがとても秀逸で、印象深いものだった。
海側から見えるニューヨーク・マンハッタンを模した、テーブルの調味料・お皿・フォークやナイフ。

その前で、自由の女神の格好をした、にこやかな太っちょおばさん。
そのおばさんは、ダイナーのような、安価なレストランで働いている制服姿。
〔クール&ザ・ギャングが『いつも行くお店のジョアンナおばさんが大好きなんだ』(ジョアンナ・アイ・ラヴ・ユー)と言う、名曲のくだりを思い出す。〕

タイトルは、明らかに映画『ティファニーで朝食を』のもじりである。
当時、かつて戸籍上の兄弟だった者から譲ってもらったアルバム『モーニング・アイランド』のジャケットで、青空のマンハッタンスカイラインを前に、最高の笑顔を浮かべていた渡辺貞夫さんの姿しかり、自分の空想上憧れのイメージと場所の一つがあり、「ブレックファスト・イン・アメリカ」は、それらと横並びの像を結んでいた。

どうにかして、このLPレコードを手に入れたいと思ったが、一方では、このタイトル曲しか知らないでいた。
そういう中、銀座にあった中古レコード屋「ハンター」に向かった。
ビルの地下にあったそのお店は、くるりとらせん状の階段で、一段一段が鍵盤となっていて、降りるたびに音がした。

そこで、中古レコードの価格の高さもあって、中古ミュージックテープ(カセットテープ版LP)のコーナーに、アルバム「ブレックファスト・イン・アメリカ」を発見した。ちょうど1,000円だった。
そこには、大事なジャケットは無く、カセットテープのインデックスカードも無い状態だったが、何より中身を聴くことを優先して購入した。

帰って聴くと、そこに、牧歌的だったりメランコリックな匂いの強い、味わいがある曲を発見する。そこから次第に入って行って、全部を通して聴けるアルバムとなった。繰り返し聴いても飽きなかった。
B面が始まる1曲目「Take The Long Way Home」は、切ないハーモニカで始まる。家に向かうまでの長い長い・泣きたくなるような帰り道を思わせて、心の中で未だにぐっと来る。

但し、彼らの演奏は、自分がよく囚われるようなジメジメした物悲しさが無く、ぬくもりと優しさにくるまれている。日本で言えばチンドン屋さん一座のように、街を通り過ぎ・去っては行くが、余韻を残すパレードの音楽隊みたいな感じ、とでも言うか。。。

シングルカット曲「ブレックファスト・イン・アメリカ」やジャケットデザインなどに、つい都会的イメージを当初抱いていたのだが、聴いていくうちに、昔テレビで放送されていたアメリカ農村のドラマ「大草原の小さな家」のようなイメージが入り混じった。

■Supertramp 「Breakfast In America」1979■
今夜、がさごそと家の中をめぐり、LPとカセットテープを探していた。
35年後になってから、バンド名であるスーパートランプが”漂流者”という意味であったのを知り、妙に腑に落ちた夜である。

雨はともかく、せっかく咲いたハナミズキが散ってしまうような、風の強い夜。
静かな島に戻ると、雨は小康状態。
南風に揺れる草木のさわさわする音に混じって、露地の家の風鈴が鳴っている。
ボクは、水に浸したお米が、炊き時を迎えるのを待っている。
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