
この曲も幸宏の「オールナイトニッポン」で1983年8月30日に掛かった。
出会いは8月末だが、実際よく流れたのは9月以降だったため、いつも秋めいてきた季節のイメージがある。
「オールナイトニッポン」の2時台は、景山民夫さんと幸宏氏2人でぼそぼそ話す時間帯。
話題は、JJ・ノンノを持ち歩く女子大生が数人集まり、クルマについて話しているのを見た、という景山さん。彼女らが話している内容の無さに、景山さん・幸宏の不満が炸裂する。時は、深夜2時半を回ったあたり。
そこに、ヴァイオリンのヒュードロドロといった具合のイントロが入ってきた。
幸宏が「割と暗めの曲です。。。」と半笑いで曲を紹介する。この数週前には夏というのに、3時近くにオバケの話しをして「怖かった」というハガキが多かった。この週もそんな反応の人が多かったのではないか?
今とは違って、深夜はどっぷりと深い闇の世界だった。そんな静かな時間帯。
むしろこんな曲ばかりをヘッドフォンで聴いている子供が、周囲は怖かったかもしれない。

元ジャパンのミック・カーン、ウルトラヴォックス現リーダーのミッジ・ユーロ。
この2つの偉大なるバンドの両巨頭、それが合体して音楽を作ったらどうなるんだろうか?
そんな興味津々なぶつかり合いに大乱闘も期待したが、ゴジラ対モスラもしくはアリ対猪木のように、出てきた音楽はあくまで1+1=2で、2人が出会った化学変化は起きなかった。
2人それぞれのソロ演奏をした音楽を重ねてトレースしたままのようだった。
こう言うと悪いように聞こえるが、じぶん個人は単純に好きだった一枚。
どうせならこのシングルの勢いでアルバムまで制作して欲しかったが、それはかなわなかった。
ただ、どちらのバンドにも深い思い入れがあったので、もっと違う冒険も出来たのではないか?という面で残念だった。

ミッジ・ユーロのヴォーカルはそれまで以上に、言葉のアクセントが強い。
まるでテープの回転数変えているような声のうねりが、ミック・カーンのフレットレス・ベースの不気味さを強調させる。カーンのベースは普段ほどぶおぶお言ってはいない。
ジャケットの真正面を見る2人の肖像。
この写真は、リンダ・マッカートニー(ポールの奥さん)によるもの。
眉毛も無い凛々しい顔のミック・カーンは、松本清張ドラマ”けものみち”のギラギラした山崎努を彷彿とさせる。この2人はそんじょそこいらのカタギではない。そしてヤクザよりカッコ良い。
■Mick Karn & Midge Ure「After A Fashion」'83■
