「ふるさと無き世代~東京シャイネスボーイ~」
はちみちぱい&ムーンライダーズの音楽の幾分かには、破壊される前の東京世代にしかわからないニュアンスが多分に含まれている。
東京→Tokio→Neo-Tokyoという具合に「首都」であるがために、再開発という名の元に破壊され続けて来た、僕らが生まれ・育った故郷=「東京」。
ふるさとを壊されていく姿を見続けてきた僕ら。
瞬時にブルドーザーでむざむざと更地にされ、その地にあった街の匂い・人々の体温を一掃し、その後には、のっぺりした表情を失った無味乾燥なビルやマンションが建って行く。
だが、反対運動をする訳でもなく、行動したって反対になる事が無理であるのを『全共闘壊滅』で知ってしまっている僕らは、目の前で僕らの街=「東京」が壊されていく姿を、ただ見続けてきた・・・・。
僕は、昭和41年生まれだが、僕ら周辺の仲間辺りから前の世代の東京人には、そういう語り尽くせない哀しみと痛みがある。
そ知らぬふりをして、日々を暮らしているかに見えるが、それは、ある種の「達観」というか「諦念」の境地に至った、僕らの「内密された心情」を押し殺して生きていかざるを得ない宿命。
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このYOUTUBEでの、はちみつぱいの「塀の上で」のバックには、僕が愛してやまない、つげ義春さんの文学的作品『リアリズムの宿』。
実に「ガロ」の匂いが充満し、身をそこに下ろす事が出来る世界。
僕ら『東京人』のささやかな秘めたる感情が、なちみつぱい&ムーンライダーズ、そして、つげ義春さんの作品には詰め込まれている。
未来空間に生きる虚しさを押し殺して、僕は、この「故郷」=今は無き「東京」のかけらを拾いながら、行き続け、死んでいくのだろう。