Blog: Sato Site on the Web Side

「幻滅のたびに甦る期待はすべて、未来論の一章を示唆する。」(Novalis)

五反田団「いやむしろわすれて草」(@アゴラ劇場)

2007年03月17日 | Weblog
四姉妹の三番目が病弱で、彼女を中心に回っている家。母はずいぶん前に蒸発し父は先日倒れた。弱いものを囲むように出来上がった家族のなかで一番孤独なのはとうぜんその弱いもの(三女)なのであり、その弱いものが外との関わりのなかで震えているさまが丁寧に描出されている。とくに、構造としては、現在が語られる合間合間に過去の場面が差し込まれるのが特徴的。ほとんど移動することがなかったろう病床を中心とした三女の生活がどのように積み重なっていったのか、過去の描写とともに明らかになる。近作「さようなら僕の小さな名声」ならば、現実にはありえないファンタジー空間が現実とつながっていたが、それがこの過去の作品(の再演)では、ファンタジーではなく過去に現実がつながる分、大きなダイナミズムは生まれない。静かな、叙情的な舞台。姉妹相互あるいは父親や友人との関係のディテールを丁寧に開いていく、その点では素晴らしく面白いのではあるが、何か物足りない気持ちにもなる。