認知症の早期診断 介護並びに回復と予防のシステム

アルツハイマー型認知症は、廃用症候群に属する老化・廃用型の生活習慣病なので、発病を予防でき、早期治療により治せるのです

アルツハイマー型認知症発病の原因を知る鍵は、脳の働き方のメカニズム(A-77)

2013-02-21 | アルツハイマー型認知症発病のメカニズム

○   意識的な行為の世界における脳の働き方のメカニズム

私たちが、「意識的」に何かの「テーマ」を実行しようとするとき、その行動や行為や思考は、すべて「脳の働きの仕組み」とその「働き具合」の結果なのですが、脳の働きについて、皆さんはどんなイメージをお持ちなのでしょうか。「二段階方式」により私たちが計測した脳の働き具合(脳の機能レベル)についての詳細な説明に入る前に、「意識的な行為」の世界における「脳の働き方」のメカニズムについて、ここで概観しておきたいと思います。

「人間の脳の働きの仕組み」を知るには、医学会でよく使われている「ラット」などの行動ではなくて、脳が壊れた人に発現してくる「症状」を調べると、そのメカニズムの概要を知ることができます。頭のてっぺんの所には、身体を動かす指令を出す「運動の脳」があります。脳卒中で、半身麻痺になる人がいます。運動の脳の左の部分が壊れると、右半身麻痺が起きます。右の部分が壊れると、左半身麻痺が起きます。「運動の脳」の左の部分が右半身を動かしていて、右の部分が左半身を動かしているのです。

 脳の後ろの左側部分には、勉強や仕事などをする上で不可欠の「左脳」があります。左脳が壊れると、言葉や計算や論理や場合分け等に支障が起きてきます。「左脳」は、言葉や計算や論理や場合分けなど「デジタルな情報」を処理しているのです。 脳の後ろの右側部分には、趣味や遊びや人付きあいなどを楽しむ為の「右脳」があります。右脳が壊れると、色や形や空間の認知や感情の処理に支障が起きてきます。「右脳」は、色や形や空間や感情など「アナログな情報」を処理しているのです。

  額のところには、脳全体の司令塔の役割を担っている「前頭葉」(前頭前野のことを言うものとする。以下、同じ)があります。私達が意識的に何かの「テーマ」を実行しようとするとき、どのようなテーマをどのように実行するか、「運動の脳」をどのような目的のためにどのように働かせるか」(身体を動かすテーマ)、「左脳」をどのような目的のためにどのように働かせるか」(言葉や計算や論理や場合分けなどデジタル情報を処理するテーマ)、「右脳」をどのような目的のためにどのように働かせるか」(色や形や空間の認知や感情や感覚などアナログ情報を処理するテーマ)、全ては司令塔の「前頭葉」が「左脳」「右脳」及び「運動の脳」と協働しつつ、周りの状況を判断し、実行結果をシミュレーションし、最終的な実行内容と実行の仕方などを決定し、「左脳」、「右脳」及び「運動の脳」に実行の指令を出しているのです。

ところが、肝心の「前頭葉」の働きの仕組みの理解や働き具合(機能レベル)の計測や判定については、世界的に研究が遅れているのです。その働き具合を調べる方法を開発するのが難しいからです。人間の脳の働きは、人間に最も近いとされる類人猿のそれと比較しても、比較にならないほど複雑で高度で多様な働きをしています。そのため、通常よく使われる方法である、「ラット」や「猿」などの行動を調べるくらいでは、人間のそれを理解する根拠資料としては不十分で役には立たないのです。

「アルツハイマー型認知症」発病の原因について、アセチルコリンとする説やアミロイドベータとする説やタウタンパク質とする説や脳の委縮とする説等が唱えられては消えてきました。それらの学説は、「アルツハイマー型認知症」の末期の段階(私達の区分で言う「重度認知症」の段階)にあって何年間も生きた人達の脳を死後に解剖した「解剖所見」を基礎とした「推測」に基づいたものばかりなのです。それらの学説は、発病の「原因」も主張する原因と結果である認知症の症状との間の「因果関係」も、未だに説明できないままでいるのです。因果関係の説明ができないのでは、単なる「推測」の域を出ない主張というほかないのです。

生きている人間(特に、60歳以上の「高齢のお年寄り」)の「脳の働き具合」(脳の機能レベル)とそれにリンクした「症状」を分析して、その多数の分析データと全国的規模で展開された「440を超える多数の市町村での地域予防活動」の実践の成果に基づいて、「発病のメカニズム」及び早期診断による「回復の方法」並びに生活習慣の改善による「予防の方法」をシステム化しているのが、私達の「二段階方式」なのです。その「二段階方式」の考え方の概要を、このブログで公開しているのです。

公開する理由は、我が国の「高齢化」が予想をはるかに上回るスピードで進行していることにあります。我が国の高齢化の進捗状況は、高齢化率(65歳以上の年齢のお年寄りの総数が、人口全体の数に占める割合を言います)が40%を超える町や村がいくつも出てきているうえに、国全体の高齢化率までもが25%に迫るところまで来ているのです。早期診断による「回復」と生活習慣の改善による「予防」をできるだけ早急にシステム化し制度化しないと、取り返しのつかない状況に追い込まれてしまうことを私たちは恐れるのです。その前提条件として、(そのことを少なくとも実践の対象となる「地域住民」全体の共通認識にしておく必要がある)というのが実践体験に基づく私たちの考えなのです。地域住民自体が積極的に参加しないのでは、『笛吹けど踊らず』になってしまうからです。私たちが、「地域予防活動」の実践開始に先駆けて、地域住民を対象とした「講演会」を実施するのを必須としているのは、地域住民の理解と要求のもとで実践するのでなければ、深く浸透することもないし、長続きもしないからなのです。

この写真は、陸前高田で撮影したものです。

「アルツハイマー型認知症」は、脳の使い方としての視点から言うところの、廃用症候群に属する単なる「生活習慣病」に過ぎないのです。言い換えると、「生活習慣」を改善し脳を活性化することができれば、治すこともできるし(脳の機能レベルを正常ベルに改善させることができる)、発病を予防することもできる病気なのです。「原因も分からないし、治すこともできないし、予防することもできない」病気とされているのは、米国精神医学会の診断基準である『DSM-4』の規定自体に重大な誤りがあるために、その基準に依拠して診断すると「見つけるのが遅すぎる」のがその理由なのです(回復可能な早期の段階を見逃していて、回復が困難な末期の段階でしか見つけられないでいるだけなのです)。『DSM-4』の規定に依拠して、「アルツハイマー型認知症」の診断を行っている専門の医師達も、このことに早く気付いて欲しいと切に願うのです。

それでは、本題に戻りましょう。脳全体の司令塔の役割を担っている「前頭葉」には、自ら様々なことに取り組むための「自発性」、色々なテーマを思いつくための「発想」、実行しようとする内容を組み立てる上で必要な「理解」や「計画」や「工夫」、実行内容をシミュレーションする上で必要な「考察」や「分析」や「予見」、実行した場合の結果の推測に必要な「推理」や「想像」や「洞察」、予期しない状況に対応するための「機転」や「修正」、状況や実行内容の「判断」、感情の高ぶりを抑えるための「抑制」、実施を指令するための「指示」、その他、「創造」、「感動」といった機能等、私たち人間だけに備わる様々な働きが詰まっています。こうした高度な脳機能は、チンパンジーやゴリラにさえも備わっていないのです。ましてや、「ラット」などに備わっているはずもないのです。ラットの行動を分析して、人間の「記憶」にかかわるメカニズム等を研究している人達がいますが、「本能」に基づくラットの行動の記憶に比べ、「前頭葉」の指令に基づく人間の行動の記憶は、異次元のものなのだとだけ言っておきましょう。

更に「前頭葉」には、自分の置かれている状況を判断し、種々ケースワークした上で、実行テーマの内容や実行の仕方を最終的に選択し決定するために必要な「評価の物差し」という大事な働きも備わっています。これも、私たち人間だけに備わった、特有な機能なのです。こうした「前頭葉」の機能が備わっているからこそ、私たち人間だけが、道具を深化させ、ここまで文明を発展させてくることが出来たのです。

 私が今住んでいる伊豆高原の別荘地も(伊豆半島の東海岸にあって、熱海と下田の中間あたりに位置し、国立公園の中にあります)、このところ天気がぐずつく日々が続いていて、久しぶりに晴れ間を見ることができました。温度はやや低いものの、小雪がちらつきそうにもありません。久方ぶりに味わう日和の良い今日のこの日に、「何処か」へ出かけて楽しんで何かを体験するための「テーマ」を考えつけるのも、その楽しみを一緒に味わえる友達を選べるのも、テーマと季節に合った服装を選択できるのも、全ては、脳全体の司令塔の役割を担っている「前頭葉」が左脳や右脳や運動の脳と協働して、「周りの状況を判断し、テーマを企画し、何をどのようにするかをケースワークした上で決定し、且つそれらに必要な指令を出して、実行させている」からなのです。

 これが、「意識的な行為」における「脳の働き方」のメカニズムの概観なのです。言い換えれば、運動の脳、左脳、右脳という「三頭建ての馬車」をあやつりつつ、「テーマ」とされたその目的に沿った内容の実行を目指す「御者」の役割をしているのが「前頭葉」なのです。 三頭の馬を十分に働かせられるのも、不十分にしか働かせられないのも、「前頭葉」の働き方次第ということになるのです。ところで、「御者」が「馬」をあやつれなくなったら、どうなりますか?たちどころに、馬はどこへ行ったらいいのかが分からなくなってしまうでしょう。

脳全体の司令塔である「前頭葉」の働き具合(機能レベル)が異常なレベルに衰えてきたとき、その直接の結果として、「アルツハイマー型認知症」の症状が発現してくるのです。認知症の専門家達が「アルツハイマー型認知症」の診断基準として、金科玉条のように信望している米国精神医学会の診断規定である『DSM-4』の規定の「第一の要件」に規定されている記憶障害、言い換えると、ほんの少し前に食事をしたばかりなのに、そのことさえ思い出せないような「重度の記憶障害」が出てくるようになるはるか以前の段階で、「アルツハイマー型認知症」はもう始まっているのです。その始まりの時期とは、脳の司令塔の「前頭葉」がちゃんと働かなくなった時点ということなのです。「二段階方式」の手技を活用して計測し判定すると、この時点では、左脳も右脳も未だ正常なレベルであって、「前頭葉」の機能レベルだけが異常なレベルにあることが分かるのです。

私の家の庭の景色です。

60歳という節目の年齢を超えて第二の人生を生きている高齢の「お年寄り」が、何かの出来事を「キッカケ」にして、生き甲斐なく、趣味なく、交友なく、運動もせず、目標もない、ナイナイ尽くしの「単調な生活」を日々継続するようになると、「前頭葉」を含む脳の働きが異常なレベルに衰えてきて(「廃用性の機能低下」)、そのために「社会生活」面や、「家庭生活」面や「セルフ・ケア」の面に支障が起きてくる、それが「アルツハイマー型認知症」という病気なのです。

そして、「アルツハイマー型認知症」の症状を発現させている犯人(原因)は、一部の学者が主張しているような「アセチルコリン」でも、「アミロイドベータ」でも、「タウ蛋白」でも、「脳の委縮」でもないのです。「アルツハイマー型認知症」は、ナイナイ尽くしの「単調な生活」が日々継続される下で、異常なレベルに衰えてきた「前頭葉」を含む脳の機能レベルの直接のアウトプットが、そのまま「症状」として発現してくるタイプの認知症なのです。1995年以来、北海道から九州まで、440を超える市町村で私たちが実践指導してきた保健師さんとの共同による「地域予防活動」の実践に伴う多数のデータ(「脳の機能レベル」と直接リンクした「認知症の症状」のデータ)が、そのことを明快に語ってくれているのです(ここを「クリック」してください)。

○   「前頭葉を含む脳の働き具合」(脳の機能レベル)を測る「物差し」が必要不可欠

 「アルツハイマー型認知症」発病の原因を見つけるにも、回復可能な「早期の段階」(小ボケや中ボケの段階)で見つけて「治す」にも、適切な介護をするにも、更には発病を「予防」するにも、「脳の働きという物差し」が不可欠になるのです。使用による「保険点数」が極めて高い「CTやMRI」等の高額な精密機器で調べてみると、脳の形(脳の委縮の度合い)を精密に計測することはできるのですが、肝心の「脳の働き具合」(脳の機能レベル)を計測し判定することはできないのです。このブログでこれまでに詳しく説明してきたように、様々な程度と態様で発現してくる「アルツハイマー型認知症」の「症状」について、評価の基準があいまいなままに「記憶の障害」にかかわる症状をメインにして並べてみたり、或いは、様々な程度と態様の「脳の萎縮」の度合いをCTやMRIなどの機器を使用して計測するだけの方法では、「アルツハイマー型認知症」発病の原因(メカニズム)を解明することも、更には、「回復」させることが可能な早期の段階(「小ボケ」や「中ボケ」)を見つけることも、ましてや発病することを「予防」する方法を見つけることも出来ないことに、認知症を専門とする医師たちが早く気付いて欲しいのです。

どんな程度と態様のものであれ、「アルツハイマー型認知症」の症状は、司令塔の「前頭葉」を含む脳全体の働き具合である「機能レベル」のアウトプットに過ぎないのだから、「脳の機能レベル」と「症状」とを直接「リンク」させて計測し判定することが、発病の原因を解明するためにも、早期の段階を見つけて治すためにも、更には、発病自体を予防するためにも不可欠になるのです。そのためには、脳を死後に解剖してみるのではなくて、生きて使われている脳の「働き具合(機能レベル)」を計る物差し」の開発が必要不可欠となるのです。

私たちが開発し、市町村の「地域予防活動」での実践に活用している「二段階方式」と呼ばれる「神経心理機能テスト」は、御者である「前頭葉」と前頭葉と協働して働いている「左脳及び右脳」との働き具合(機能レベル)を客観的に計測し判定できる優れた手技なのです。簡便ではあるが、脳の働き具合をとてもセンシティブに測ることが出来る優れものなのです。

 ○ 認知症の専門家達は、司令塔である「前頭葉」の働きを無視している

ところで、所謂「物忘れ」を経験されている年齢の皆さんならご存知のように、「記憶の障害」と言っても様々な程度と態様とがあるものなのです。ところが、世間で認知症の専門家と言われる人達は、世界的に権威がある米国精神医学会の診断規定である「DSM-4」の定義の影響を強く受けているので、「重度の記憶障害」の症状を「アルツハイマー型認知症」診断の「第一の要件」と考えているのです。言い換えると、私達の区分で言う末期段階の「重度認知症」(大ボケ)の段階で出てくる「重度の記憶障害」の症状が現れるようにならないと、「アルツハイマー型認知症」とは診断しないのです。

そもそも、「第二の要件」として『DSM-4』に規定されている、失語や、失行や、失認という症状は、末期の段階である重度の症状(私達の区分で言う「重度認知症」の症状)の中でも後半にならないと発現してこない症状なのです。ところが、「DSM-4」の規定は、或る特定の人が「アルツハイマー型認知症」であるかどうかを診断するための規定なので、第一の要件(「記憶の障害」)も第二の要件も同じ人の同じ時に計測し判定された症状でないといけない訳です。従って、その人の症状が第一の要件と第二の要件を「同時に充足する」ということは、第一の要件として規定されている「記憶の障害」という要件は、第二の要件を充足する症状を発現している人の記憶の障害でなくてはならないことになる、このことが理解できたでしょうか。つまり、認知症の専門の医師が「アルツハイマー型認知症」と診断する人の「記憶の障害」は、ほんの数時間前に摂ったばかりの「食事」のことさえも覚えていないような(「記銘」も「保持」もできていない、「想起」することもできない)程度態様の「重度の記憶障害」のことを意味するということになってしまうのです。

世間では、私たちが「アルツハイマー型認知症」の始まりの段階と考えている「軽度認知症」(小ボケ)の段階を単なる「不活発病」として、「中等度認知症」(中ボケ)の段階を「老化現象」としてしか捉えていなくて、「アルツハイマー型認知症」とは考えもせずそのまま放置し、見逃してしまっているのです。脳の働き具合(機能レベル)という視点から言うと、「軽度認知症」(小ボケ)の段階では、馬の役割しかしていない「左脳も右脳も」働きが未だ正常なレベルにあるのに対して、三頭立ての馬車の御者の役割をしている(脳全体の司令塔の役割を担っている)「前頭葉」の機能だけが既に異常なレベルに衰えてきていることを知ることが、極めて重要な視点になるのです。アミロイドベータ説やタウタンパク説や脳の委縮説等の主張内容が正しいのであれば、セルフケアや家庭生活面には何の支障も起きてきていなくて「社会生活」面にだけ支障が起きてきているこの「軽度認知症」(小ボケ)の段階で、(老人斑が前頭葉の部位だけに生成)されていたり、(神経原繊維変化が前頭葉の部位だけに起きて)きていたり、(脳の顕著な萎縮が前頭葉の部位だけに認められる)はずということになるのです。それぞれの学説にかかわる人達は、この私の問題提起に対する「説得力ある回答」を出していただきたいと思うのです。

「脳の機能レベル」と「症状」との関係について、私たちが開発した「二段階方式」のような「神経心理機能テスト」を活用して、多数の症例を対象にして、詳細且つ厳格に計測し分析してみると、「脳の働き具合」(機能レベル)のアウトプット自体が直接「症状」となって現れてくることが分かるはずなのです。「二段階方式」の手技に代表される「神経心理機能テス」の活用により集積された「前頭葉」を含む脳の機能「データ」を更に解析してみれば、「左脳や右脳」の働きが未だ正常なレベルにあっても、それらをコントロールしている脳の司令塔の「前頭葉」が正常に機能しなくなった段階で、その働き具合のアウトプットである症状も同時に異常なレベルのものになってしまう、言い換えると、認知症の「症状」として発現してくることが分かるはずなのです。

生活面(生活の自立度)という視点から説明すると、私達の区分であるこの「軽度認知症」(小ボケ)の段階で既に「社会生活」面に支障が出ているのです。つまりは、脳の司令塔の「前頭葉」が正常に機能しなくなった段階で、「アルツハイマー型認知症」はもう始まっていると考えるべきだということになるのです。そして、「脳の働き具合」(機能レベル)を正常なレベルに回復させることが可能な「小ボケ」や「中ボケ」の早期の段階で「アルツハイマー型認知症」を見つけるには、「前頭葉」の働き具合を計測する手技を活用することが不可欠になるということを私達がこれまでに集積した「データ」が証明しているのです。医療の現場で行われている主流の方法である、CTやMRIで計測し判定する方法では、脳の形(萎縮の度合い)を計測することはできても、肝心な脳の働き具合(「前頭葉」を含む脳の機能レベル)を計測する(判定する)ことはできないということなのです。ところが、このことに関連して、「神経心理機能テスト」の活用に適用される「保険点数」が極めて低く、医療機関が「アルツハイマー型認知症」診断の手技として採用することには、「事業採算的に極めて困難」という問題が存在していることを政府関係者は認識しておいていただきたいのです。

(コーヒー・ブレイク) 「二段階方式」では、「前頭葉」のコントロールのもとで「前頭葉」と協働して働いている「左脳や右脳」の働き具合を計測するために「MMS」の活用をしています(「租点」のままでは、判定がややルーズになるので、「二段階方式」では「換算点」を使用しています)。MMSテストで30点の満点を取る人たちの中にも、「前頭葉」の機能テスト(私たちは、「かなひろい」テストを使います)で調べてみると、異常なレベルに衰えている人達が相当数いるのです。加えて、この人達の「生活の自立度」を調べてみると、「社会生活」面に支障が出てきているのです。従って、「左脳や右脳」の機能レベルが正常レベルでありながら、司令塔の「前頭葉」の働きだけが異常なレベルに衰えてきている段階があることに、認知症の専門家達が早く気づく必要があるのです(私達の区分で言う「軽度認知症」の段階)。「神経心理機能テスト」を活用して、「前頭葉」の機能レベルと「左脳及び右脳」の機能レベルを同時に計測しその組み合わせ結果を判定すると、回復させることが容易な「小ボケ」の段階と回復させることが未だ可能な「中ボケ」の段階と回復させることが困難な「大ボケ」の段階の3つの段階に区分されることが分かるのです。 

 

○   前頭葉の三本柱(意欲、注意集中力と注意分配力)の加齢による老化のカーブ   

脳全体の「司令塔の役割」を担っていて、自分の置かれている状況を「判断」したり、実行する「テーマ」を思いついたり、実行する「計画」を立てたり、実行の内容や仕方を「工夫」したり、実行結果の「シミュレーション」をしたり、状況の変化に対応して「機転」を利かせたり、各種の高度な働きを内包している「前頭葉」の機能、中でも、その認知機能を正常に発揮する上でとりわけ重要な「認知度」を左右する本柱の、「意欲」、「注意の集中力」及び「注意の分配力」の働きには、「生活習慣」の如何にかかわらず「加齢と共に老化し衰えていく」という重要なしかし専門家からは見過ごされている性質があるということを、ここで問題提起しておきたいと思います(「正常老化」の性質)。

この「三本柱」の機能の「働き具合」(機能レベル)は、18歳から20歳代半ばまでがピークで、20歳代半ばを過ぎるころから100歳に向かって、緩やかではあるけれど、一直線に衰えていくのです。 「アルツハイマー型認知症」を発病する人の割合が急に多くなってくる60歳代後半にもなると、前頭葉の働き具合は、ピーク時の18歳から20歳代半ばの頃に比べて、「働き」が半分以下に衰えてきているのです。70歳代、80歳代、90歳代、100歳代と、年をとればとるほど、前頭葉の働きがさらに衰えていって、正常なレベルを保ちつつもどんどん低空飛行になっていくのです。

認知症の大多数90%以上を占めていて、皆さんが普段よく目にしていて、専門家からは「原因も分からないし治らないし予防することもできない」と言われている「アルツハイマー型認知症」の正体は、「加齢による脳の老化」という問題が基本にあるのです。「加齢による脳の老化」という問題が基本にあるから、「アルツハイマー型認知症」は、若者には関係なくて、「60歳代以降のお年寄りだけが対象になる」のです(ここを「クリック」してください)。

「アルツハイマー型認知症」発病の原因の(第一の要件)は、この「加齢による脳の老化」を充足することなのです。つまりは、アルツハイマー型認知症を発病する対象は、60歳代以降の「高齢者」であることなのです。その第一の要件を充足する年齢の「高齢者」が、(第二の要件)である、ナイナイ尽くしの「単調な生活」の継続(生き甲斐なく、趣味なく、交友なく、運動もせず、目標もない「単調な生活」のことを言います)という要件を充足するとき、「アルツハイマー型認知症」を発病することになるのです。30代や40代の若い人たちが、どんなにぐうたらな生活、ナイナイ尽くしの単調な生活を日々送っていたところで、「アルツハイマー型認知症」を発病することは絶対に起きてこないのです。第一の要件と第二の要件を充足すること、つまりその「相乗効果」によって、「アルツハイマー型認知症」が惹き起こされてくるのです。「アルツハイマー型認知症」の専門家とされる人達(医師や研究者や学者)は、このことに早く気付いて欲しいと願うのです。

だからこそ私たちは、「東日本大震災の被災地の高齢者たち」のことをとても心配しているのです。その人たちの多くが、第一の要件と第二の要件を共に充足する生活を日々送っているとすれば、その人たちは必ず「アルツハイマー型認知症」を発病することになるからです。被災から起算して半年から3年の期間は「軽度認知症」(小ボケ)の段階が続きます。その後の、1~2年の期間は「中等度認知症」(中ボケ)の期間で、その後の期間が「重度認知症」(大ボケ)の期間となります。「小ボケ」と「中ボケ」の段階までは、脳を活性化させる「生活習慣」の改善による脳のリハビリにより回復させること(「前頭葉」を含む脳の機能を正常レベルに引き戻すこと)が未だ可能なのですが、「大ボケ」の段階にまで脳の機能が衰えてしまうと、回復させることは困難となり、身体が持つ限り脳の機能は衰え続ける(症状がひたすら重くなっていく)のです。 

       

回復が困難で「介護の対象」でしかない「大ボケ」レベルの人達は、2012年8月時点での厚生労働省による発表数字で300万人超とされています。 私たちが蓄積してきたデータによると、「小ボケ」と「中ボケ」とを合わせた人数(大ボケの予備軍)は、「大ボケ」の人数の4倍にもなります。回復困難な大ボケの人数に、「回復」可能な早期レベルの認知症の人たち、小ボケと中ボケとを加えると、日本ではすでに1300万人を超える数の「お年寄り」達が、「アルツハイマー型認知症」を発病していることになるのです。

そして、「アルツハイマー型認知症は、原因不明で治らないし予防することもできない病気」として手をこまねいたままでいると、「小ボケ」の人は中ボケに、「中ボケ」の人は「大ボケ」に進んでしまうのです。「大ボケ」に進んでしまうと、もはや回復は困難となり、「介護」だけがテーマとなるのです。その上、「アルツハイマー型認知症」と言う病気は、脳の機能がどんどん衰えていくのに比して、身体はよく持つのが特徴でもあるのです。巨額な「介護費用」(介護保険による負担と自費負担の費用)の問題に加えて、「家族介護」の負担の問題とがあるのです。「アルツハイマー型認知症」の早期診断による回復と予防のシステムを制度化するという「テーマ」が国民的な喫緊の課題となってきていることを認識していただけたでしょうか。

○   「アルツハイマー型認知症」の年齢別発症頻度とその意味

 私たちがこれまでに「アルツハイマー型認知症」の早期発見と回復及び予防の為の「地域予防活動」を展開してきた市町村(高齢化率が30%を超える市町村)において畜積したデータによると、「アルツハイマー型認知症」を発病している「小ボケ」以下の人達(「小ボケ」、「中ボケ」及び「大ボケ」レベルの全て)の年代ごとの割合は、定年退職などで「第二の人生」が始まったばかりの60歳代で12%もの高い割合を示していて、70歳代で30%、80歳代で50%、90歳代で75%、加齢の極まりの100歳代で97%というように、年をとるにつれて、どんどん増加していくのが特徴なのです。

「高齢化率」が30%を超える市町村のどこかの地域で、70歳代のお年寄りがアトランダムに100人集まると、30人はもう「アルツハイマー型認知症」を発病しているのです。「小ボケ」(「社会生活」に支障がある)か、「中ボケ」(「家庭生活」に支障がある)か、「大ボケ」(「セルフケア」にも支障がある)か、どれかのレベルになっているのです。認知症の専門家たちは、私達の区分で言う「重度認知症」(大ボケ)の段階の症状を発現していないと、認知症とは診断しないので、「小ボケ」と「中ボケ」とは見逃されていて、放置されたままになっているのです。

       

私たちが「二段階方式」の手技を活用して集積してきた多数のデータは、以下のことを示しています。

○  「アルツハイマー型認知症」の対象は、50歳代以下の人は殆どいなくて、高齢者と呼ばれる60歳以上の年齢のお年寄りに限られている;

○  年をとるほど「アルツハイマー型認知症」の人の割合が増えていき、身体も限界の100歳代では、殆どの人が(97%の人が)「アルツハイマー型認知症」になっている;

○  「アルツハイマー型認知症」になっているお年寄りの年代ごとの割合が、北海道、東北、関東、東海、中部、北陸、近畿、中国、四国、九州のどの地域をとってみても、どこも殆ど同じで、地域差が認められない。

 こうした「データ」から、「アルツハイマー型認知症」を発病する要因は、食べ物でも金属の摂取でもなくて、「加齢による脳の老化」という問題が基本的な条件(「第一の要件」)として考えられるのです。上述のように、「アルツハイマー型認知症」を発病する対象者は基本的に60歳以降の高齢者だけなのです。「脳の老化」と言う問題が基本にあるから、「アルツハイマー型認知症」は若者には関係なくて、「60歳以降のお年寄りだけが対象になる」と考えられるのです。但し、年をとれば誰でも「アルツハイマー型認知症」を発病するわけではありません。70歳代の人たちの70%の人達は、「前頭葉」の機能が正常レベルを保っていて、年相応のレベルでの「社会生活」を送っているのです。「アルツハイマー型認知症」を発病する30%の人達と発病しない70%の人達とを区分けしている鍵となる「第二の要因」とは一体何なのか。その第二の要因は、実は、第二の人生での脳の使い方(「生活習慣」)にあるのです。「アルツハイマー型認知症」発病のメカニズムについては、第二の要因の「類型パターン」を含めて、今後のブログの記事の中で詳しく説明する予定です。

 注)本著作物(このブログA-77に記載され表現された内容)に係る著作権は、(有)エイジングライフ研究所に帰属しています。

エイジングライフ研究所のHPここを「クリック」してください)

 

脳機能からみた認知症の初期の見わけ方(IEでないとうまく表示されません)

 

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