認知症の早期診断 介護並びに回復と予防のシステム

アルツハイマー型認知症は、廃用症候群に属する老化・廃用型の生活習慣病なので、発病を予防でき、早期治療により治せるのです

意識的な行為と脳の働き方(A-24)

2012-04-06 | 意識的な行為と脳の働き

これまでの報告で詳しく説明してきたように、いろいろな程度と態様の「症状」を評価の基準があいまいなままに並べてみたり、いろいろな程度と態様の「脳の萎縮」の度合いを計測するだけの方法では、「アルツハイマー型認知症」の原因を見つけることも、更には、回復可能な軽い段階(「小ボケ」や「中ボケ」)を見つけることも出来ないのです。

どんな程度と態様のものであれ、(「症状」は、脳の働き具合のアウトプット)なのだから、「脳の働き具合」と症状とをリンクさせて計測することが不可欠になるのです。そのためには、脳を解剖してみるのではなくて、働いてる脳の「働き具合」を計る物差しの開発が不可欠となります。「二段階方式」と呼ばれる「神経心理機能テスト」は、協働して働いている前頭葉と左脳及び右脳との働き具合を客観的に計測できる優れた手技なのです。

「二段階方式」により私たちが計測したデータの詳細な説明に入る前に、脳の機能について、ここで概観しておきたいと思います。頭のてっぺんの所には、身体を動かす指令を出す「運動の脳」があります。脳卒中で、半身麻痺になる人がいます。運動の脳の左の部分が壊れると、右半身麻痺が起きます。右の部分が壊れると、左半身麻痺が起きます。運動の脳の左の部分が右半身を動かしていて、右の部分が左半身を動かしているのです。

 脳の後ろの左側部分には、勉強や仕事などをする為の「左脳」があります。左脳は、言葉や計算や論理や場合分けなど「デジタルな情報」を処理しているのです。

 脳の後ろの右側部分には、趣味や遊びや人付きあいなどを楽しむ為の「右脳」があります。右脳は、色や形や空間や感情など「アナログな情報」を処理しているのです。

額のところには、脳全体の司令塔の「前頭葉」(前頭前野を言うものとする。以下、同じ)があります。私たちが意識的に何かのテーマを実行しようとするとき、どのようなテーマをどのように実行するか、「運動の脳」をどのような目的のためにどのように働かせるか」(体を動かすテーマ)、「左脳」をどのような目的のためにどのように働かせるか」(言葉や計算や論理や場合分けなどのテーマ)、「右脳」をどのような目的のためにどのように働かせるか」(色や形や空間認識や感情などのテーマ)、全ては司令塔の「前頭葉」が周りの状況を判断して決定し、指令を出しているのです。

その前頭葉には、発想したり、計画したり、工夫したり、推理やら洞察をしたりするための様々な働きが詰まっています。更には、自分の置かれている状況を判断し、種々ケースワークしたうえで、実行テーマの内容や実行の仕方を選別して、最終的に決定するために必要な「評価の物差し」という大事な働きがあります。

 老人会でゲートボールを楽しむ時も、お茶を飲みながら友達と趣味や遊びや家庭の問題など世間話に花を咲かせる時も、友達を家にお呼びして得意の手料理でもてなす時も、家の周りに樹木を植えたり草花を咲かせて楽しむ時も、脳全体の司令塔の前頭葉が、「周りの状況を判断して、テーマを企画して、何をどのようにするかをケースワークした上で決定し、必要な指令を出して、実行させている」のです。

これが、意識的な行為における脳の働き方の全体像なのです。言い換えれば、運動の脳、左脳、右脳という三頭建ての馬車をあやつる御者の役割をしているのが、「前頭葉」なのです。 三頭の馬を十分に働かせられるのも、不十分にしか働かせられないのも、前頭葉の働き次第ということなのです。御者が馬をあやつれなくなったら、どうなりますか? 馬はどこへ行ったらいいのか分からなくなってしまうでしょう。

 脳の働きが異常なレベルに衰えてきて、そのために社会生活や、家庭生活やセルフ・ケアにも支障が起きてくるのが、「アルツハイマー型認知症」という病気なのです。脳の司令塔の「前頭葉」がちゃんと働かなくなった時点で、ほんの少し前に食事をしたばかりなのに、そのことさえ思い出せないような「重度の記憶障害」が出てくるようになるはるか前の段階で、「アルツハイマー型認知症」はもう始まっているのです。

 「アルツハイマー型認知症」の原因を見つけるにも、小ボケや中ボケの軽い段階で見つけて治すにも、適切な介護をするにも、更には予防するにも、「脳の働きという物差し」が不可欠になるのです。

 注)本著作物(このブログA-24に記載され表現された内容)に係る著作権は、(有)エイジングライフ研究所に帰属しています。

 エイジングライフ研究所のHP(ここをクリックしてください)

 

 

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