認知症の早期診断 介護並びに回復と予防のシステム

アルツハイマー型認知症は、廃用症候群に属する老化・廃用型の生活習慣病なので、発病を予防でき、早期治療により治せるのです

アルツハイマー型認知症の発病原因、症状からの回復、介護の予防及び発病の予防を脳の機能データ面から実証【C-22】

2019-03-11 | 定年後の第二の人生をどう生きるか

第1章 脳の老化と加速のデータが示すアルツハイマー型認知症発病のメカニズム

Ⅰ.脳の働きとそのアウトプットである行為や行動(異常な「症状」)との関係

1.    脳の各部の機能とその概要

頭のてっぺんの所には、身体を動かす指令を出す運動の脳があります。脳卒中で、半身麻痺になる人がいます。運動の脳の左の部分が壊れると、右半身麻痺が起きます。右の部分が壊れると、左半身麻痺が起きます。

脳の後ろの左側部分には、勉強や仕事などをする為の左脳があります。左脳は、言葉や計算や論理や場合分けなどのデジタルな情報を処理しているのです。

脳の後ろの右側部分には、趣味や遊びや人付きあい等を楽しむ為の右脳があります。右脳は、色や形や空間の認知、或いは、感情の授受や表出などアナログな情報を処理しているのです。

額のところには、『前頭葉』(前頭前野)という脳機能があります。「前頭葉」には、自分が置かれている状況を分析し理解したり、当該状況下での為すべき「テーマ」を発想したり、実行の計画をしたり、実行の仕方を工夫したり、実行の決断をしたり、注意を集中したり、注意を分配したり、感情を抑制したり、感動したり等色々な働きが詰まっているだけでなくて、もう一つ、脳全体の『司令塔の役割』という大事な働きがあります。

2. 脳全体の『司令塔の役割』を担うのが「前頭葉」

周りの状況を分析し、理解し、判断して、どのようなテーマをどのように実行するのか、運動の脳をどのような目的の為にどのように働かせるか(身体を動かすテーマ)、左脳をどのような目的の為にどのように働かせるか(言葉や計算や論理や場合分けなどのテーマ)、右脳をどのような目的の為にどのように働かせるか(色や形や空間や感情などのテーマ)、全ては司令塔の『前頭葉』が判断して決めているのです。

老人会でゲートボールを楽しむ時も、お茶を飲みながら友達と趣味や遊びや政治問題等の世間話に花を咲かせる時も、家の周りに樹木を植えたり草花を咲かせたりして楽しむ時も、脳全体の司令塔の「前頭葉」が、周りの状況を判断して「テーマを発想し、何をどのようにするのかを決めて、必要な指令を出している」のです。これが、『意識的な行為や行動』の世界における脳の働き方のメカニズムなのです。実は、このメカニズムこそが、「アルツハイマー型認知症」の発病と密接不可分の関係にあることが見落とされている(気づかれないでいる)のです。

言い換えれば、左脳、右脳、運動の脳が牽引する三頭建ての馬車をあやつる「御者」の役割をしているのが『前頭葉」なのです。三頭の馬を十分に働かせられるのも、不十分にしか働かせられないのも、「前頭葉」の働き次第ということになるのです。御者が馬をあやつれなくなったら、どうなりますか?・・・馬はどこへ行ったらいいのか分からなくなってしまうでしょう。「前頭葉」を含む脳全体の働きが異常なレベルに衰えてきて、社会生活や、家庭生活やセルフケアにも支障が起きてくるのが「アルツハイマー型認知症」というタイプの認知症なのです。脳の司令塔の「前頭葉」がちゃんと働かなくなった時点で、ほんの少し前に食事をしたばかりなのに、そのことさえ思い出せないような重度の記憶障害の症状が出てくるようになる段階、それよりもはるか前の段階で、『アルツハイマー型認知症』はもう始まっているのです(認知症としての症状が発現してきている)。「アルツハイマー型認知症」の原因を見つけるにも、早い段階(小ボケ及び中ボケの段階)で見つけて治すにも、介護の予防及び発病の予防にも、「脳の働きという物差し」が不可欠になるのです。

Ⅱ.加齢による正常老化と「アルツハイマー型認知症」の発病による段階的症状の発現

1.    「前頭葉」の老化曲線(「正常老化」の曲線)

脳全体の司令塔で、状況を分析し、理解し、判断したり、状況判断に沿った「テーマ」を発想し、実行する為の計画を立てたり、工夫したり、洞察や推理をしたり、機転を利かせたり、各種の高度な働きを担当している「前頭葉」の個別認知機能(『実行機能』と総称される)、中でも、『実行機能』を正常に機能させる上でとりわけ重要な働き、実行機能の発揮度を左右し、下支えしている機能である(実行機能の機能発揮上の二重構造の問題)「意欲」、「注意の集中力」及び「注意の分配力」の機能には、以下に示すように(「意欲、注意集中力と注意分配力」のグラフのカーブが存在)、「加齢」の進行とともに働きが老化し、衰えていく(機能が低下していく)という性質があるのです。

18歳から20歳までがピークで、20歳を過ぎるころから100歳に向かって、緩やかではあるけれど、一直線に衰えていくのです。 「第二の人生」が始まる60代後半にもなると、「前頭葉」の働き具合は、ピーク時の18歳から20歳の頃に比べて、働きが半分以下になっているのです。70歳代、80歳代、90歳代、100歳代と、年をとればとるほど、前頭葉の働きがさらに衰えていく、正常な機能範囲内とはいえ、どんどん低空飛行になっていくという性質(「正常老化の性質」)が確認されるのです。

様々な種類が数ある認知症の内の大多数、90%以上もの割合を占めていて、皆さんが日常よく目にしている『アルツハイマー型認知症』の正体は、脳の老化という問題が基本にあるのです。「脳の老化」という問題が基本にあるから、アルツハイマー型認知症は、若者には関係なくて、お年寄りだけが発病の対象になるのです

2.    アルツハイマー型認知症の三段階(廃用性の加速度的で異常な機能低下)

(1)   厚生労働省の発表によると、認知症のお年寄りの数は2018年12月末現在で600万人超といわれています。600万人超もの認知症のお年寄りとは、自分が住んでいる家が分からなかったり、同居の家族の名前や顔も分からなかったり、ズボンを頭から被ってみたり、トイレの後始末も自分でできないで、セルフケアにも介助が要る、アルツハイマー型認知症の末期段階の人達、エイジングライフ研究所の区分で言う重度認知症(「大ボケ」)の人達だけの数なのです。アルツハイマー型認知症の早期段階として私たちが問題にしている軽度認知症(「小ボケ」)と中等度認知症(「中ボケ」)は、その数に入っていないのです。

(2)   認知症とは、「一旦完成された脳機能が、何らかの原因で全般的に機能が低下し、社会生活や家庭生活やセルフケア等に支障が起きてくる病気」と定義されています。つまり、もともとは正常な社会生活を営んでいた人に起きてくるものである以上、現在セルフケアもおぼつかなくなっている人であっても、過去に遡れば正常であった時期があり、発病後に症状が次第に重症化していった結果だということなのです。

(3)「アルツハイマー型認知症」は、症状が徐々に段階的に進むのが特徴なのです。昨日まで正常だった人が、発病した途端に、同居の家族の名前や顔も分からなかったり、ズボンを頭から被ってみたり、トイレの後始末も自分で出来ないで、セルフ・ケアにも介助が要るようにはならないのです。前頭葉を含む脳全体の働き具合を「二段階方式」テストで調べてみると、軽いほうから順に、「小ボケ」、「中ボケ」、「大ボケ」の三段階に分かれていることが分かります。

3. 脳の機能レベルを調べて確認される認知症の三段階を示すデータ

 私達が問題にしているのは、「大ボケ」に先立つ「小ボケ」と「中ボケ」の段階の症状が見落とされていることなのです。年のせいと言われたり、不活発病の名前を冠せられたり、MCI(軽度認知障害)という極めて曖昧な基準の判定対象にされていたりする「小ボケ」と「中ボケ」とをあわせると「大ボケ」の2倍から3倍にもなるのです。

4.「アルツハイマー型認知症」の発病の場合の上記三つの段階における脳の機能と生活実態との関係の概要を整理すると、以下の表のようになります。

脳機能

生活実態

レベル

正常レベル

正常

正常

前頭葉のみ異常なレベルに低下

 

社会生活面のみに支障

(指示待ち人)

小ボケ

前頭葉低下+後半領域やや低下

家庭生活面にも支障
言い訳のうまい幼稚園児

中ボケ

前頭葉低下+後半領域大幅低下

セルフケアの面にも支障
(脳の寝たきり児)

大ボケ

注)脳のリハビリ」の実施により、「小ボケ」は正常なレベルへの回復(認知症の症状を治すこと)が比較的容易であり、「中ボケ」の段階になると家族の献身的な協力を前提として回復させることが未だ可能であるが、末期の段階である「大ボケ」の段階になると「中ボケ」のレベルに回復させることさえも困難となります。

 5.  「アルツハイマー型認知症」の年齢別発生頻度

エイジングライフ研究所がこれまで蓄積してきた多数のデータの分析によると、発病の対象である「第二の人生」を送っているお年寄りの内で、「アルツハイマー型認知症」を発病する人達の年齢別の発病割合は、年をとるにつれて、どんどん増加していきます(特定地域の全数調査による概算を基礎とした推定値)。「小ボケ」、「中ボケ」、「大ボケ」の全部を含めた「アルツハイマー型認知症」の人達全体の年代ごとの割合は、第二の人生が始まったばかりの60代で12%もの高い割合を示します。60代のお年寄りが100人集まったら、12人はもうアルツハイマー型認知症を発病しているのです。「小ボケ」、「中ボケ」又は「大ボケ」のどれかのレベルになっているのです(厚労省の発表数値は、「アルツハイマー型認知症」の発病者の内の「大ボケ」の段階だけの数)。加齢が進行するにつれてこの割合は更に多くなり、70代で30%、80代で50%、90代で75%、大台の100歳代では97%もの人がアルツハイマー型認知症を発病しているのです(認知症の90%以上を「アルツハイマー型認知症」が占めることに注意。レビー小体型認知症は、若年性アルツハイマー型認知症と同様、認知症ではない病気を認知症と誤解しているだけなのです)。

※1   上述のデータから、次の三つのことが分かるのです:

①『アルツハイマー型認知症』の発病は、50歳代以下の若い人達には関係がなくて、『60歳代以降の「お年寄り」だけが発病の対象になる』のが特徴なのです。

② 年をとる程、認知症の人の割合がどんどん増えていき、身体も限界の100歳代では、殆の人(97%)が「アルツハイマー型認知症」を発病しているのです。

③アルツハイマー型認知症の発病者のお年寄りの年代ごとの割合が、北海道、東北、関東、東海、中部、北陸、近畿、中国、四国、九州と日本のどの地域をとってみても、どこも殆ど同じで、基本的に「地域差が認められない」のです。

※2更に、もう1つ重要なデータがあります。その詳細はⅤで説明している、「症状の期間と脳の老化のスピード差をもたらす要因」についての多数のデータです。 極めて多数の症例に基づくこのデータは、「脳の使い方」と言う視点から言う『生活習慣』が、「アルツハイマー型認知症」を発病した人達の症状の更なる進行、進行の抑制、又は認知症の症状からの回復と密接な関係があることを示しているのです。『アルツハイマー型認知症』の発病の要因と考えられるもので、上記4つの条件が全てあてはまるものは、食べ物でも金属の摂取でもない、ましてやアミロイドベータとかタウ蛋白とかの蓄積ではなくて、後述するように、「脳の老化」という問題及びナイナイ尽くしの単調な「生活習慣」の継続という二つの要因が確認されるのです。

加齢による「脳機能の老化」がアルツハイマー型認知症の発病の第一の要因であり、ナイナイ尽くしの「単調な暮らし方」と言う要因、脳の使い方としての単調な生活習慣の継続による廃用性の機能低下が発病の第二の要因であるとエイジングライフ研究所は考えています。第一の要因に第二の要因が加重されることに起因して、『前頭葉』を含む脳全体の機能が、廃用性加速度的異常機能低下を進行させていくことが発病及び症状の重症化が進行していく真の原因であると考えているのです。即ち、「アルツハイマー型認知症」は、廃用症候群に属する老化廃用型生活習慣病であると考えているのです。この故に、「アルツハイマー型認知症」の発病を予防したり、症状の進行を抑制したり、症状を治す効能を有する薬が開発されることは、未来永劫起こり得ないことと主張しているのです。

この考え方は、世間では未だ認知されていませんが、エイジングライフ研究所が開発した「二段階方式」の手技に基づいて北海道から九州まで日本全国の450を超える数の市町村で展開した「アルツハイマー型認知症の早期診断による回復及び発病の予防を明確な目的とした住民参加型の地域予防活動」の実践展開によるデータが、はっきりとこのことを証明しているのです(疫学的な手法により実証されている)。

こうした視点からエイジングライフ研究所は、2011年3月11日に起きた東日本大震災の被災者となった、60歳を超える年齢の高齢者の生活状況に、大きな関心を寄せています。この被災体験を「キッカケ」にして、「第二の人生」を送るお年寄り達の多くが意欲を喪失、ナイナイ尽くしの単調な「生活習慣」(生き甲斐なく、趣味なく、交遊なく、運動もせず、目標となるものも無い、単調な日々の暮らし方/脳の使い方としての生活習慣)に陥っていったのではないかと、危惧しているのです。「第二の人生」を送っている60歳を超える年齢の高齢者の多くが、「アルツハイマー型認知症」を発病し、重症化が進行してきている可能性が高いと考えているのです。今日は、震災後8回目の3月11日。マスコミも行政機関も医療機関さえもが、道路や箱モノの復興ばかりに目が向いていて、肝心要の「生活習慣」の復活に無関心なのです。自分なりの遂行すべき「テーマ」が有り、目標が有り、趣味や遊びや交遊や運動や、地域の催事や行事への参加の機会が有り、自分なりの生き甲斐や喜びが得られる「生活習慣」があった震災前の「生活習慣」を取り戻せていないお年寄り達の多くが、発病し、症状の重症化が進行しているはずなのです。大ボケの後半に発現する失語や失認や失行の症状が初期症状と誤解している認知症の専門家達は、気が付かないのです。

Ⅲ.『アルツハイマー型認知症』を発病するメカニズム(機序)

1. 『意識的な世界』(思索や行為や行動の面)における「前頭葉」の役割

「意識的に何かのテーマを発想し、実行に移す」ことは、三頭建ての馬車を動かしていくようなものであり、御者なくしては、どんなに立派な馬をつないだところで、馬車は動きようもありません。御者の働きが「前頭葉」の働きだと考えると、分かり易いと思います(「意識」の機能構造と「前頭葉」の機能構造の理解が不可欠)。

●   脳全体の司令塔としての役割を担うのが「前頭葉」の機能なのです。馬車が動くときいつも、御者が手綱を引いて馬を制御しているように、毎日の具体的な生活の場面で、「意識的に何かをしようとするとき」は、必ず前頭葉がテーマを発想し、理解し、何をどのようにするのかを判断し決定しているのです。意識的に何かのテーマを実行する場面では、「前頭葉」が脳全体の司令塔の役割を担っているのです。

  左は、「正常老化曲線」のデータ 

2. ナイナイ尽くしの単調な「生活習慣」の継続とアルツハイマー型認知症の発病

前頭葉の働きには、加齢とともに機能が低下(老化)していく性質があり、正常な老化の場合でも、65歳頃になると働き具合が20歳の頃に比べて半分程度にまで衰えてきているのです(「二段階方式」の手技の活用により集積した脳機能データが根拠)。「第二の人生」を送る60歳を超えた高齢者と呼ばれる年齢のお年寄りが、脳を積極的には使わないナイナイ尽くしの単調な「生活習慣」(生き甲斐や目標もなく、趣味や遊びや交遊もなく、運動もせず、地域の催事や行事への参加の機会も無い単調な暮らし方)を日々続けていると、廃用性の機能低下が惹起され、『前頭葉』を含む脳全体の機能の老化が加速されて、働きが加速度的に衰えていくことに因り、『アルツハイマー型認知症』を発病し、症状の重症化が進行するのです。

3. 「アルツハイマー型認知症」の重症度分類(「三段階」に区分される症状)

前述のように「アルツハイマー型認知症」は、日々の脳の使い方としての視点で言う『生活習慣』、ナイナイ尽くしの単調な『生活習慣』の継続が発病及び症状の重症化の進行を左右する最も重要で核心的な要因である「生活習慣病」なのです。「加齢に因る脳の老化」と「ナイナイ尽くしの単調な生活習慣の継続による廃用性の機能低下の進行」という「異なる二つの要因」が重なる(同時に存在し、且つ、充足される)ことに因り、その相乗効果によって、「前頭葉」を含む脳全体の機能が廃用性の加速度的で異常な機能低下を進行させることに起因して発病し、症状の重症化が進行していくと考えられる「アルツハイマー型認知症」は、「前頭葉」を含む脳全体の機能の衰え方にも明確な特徴があるのです。その「特徴」となるのは、

① 最初に、「前頭葉の働きだけ」が異常なレベルに衰えていく(小ボケ)

②次いで、前頭葉の更なる機能低下の進行に同時並行して「左脳と右脳と運動の脳の働き」が異常なレベルに衰えていく(中ボケ→大ボケ)

③更に、MMSEで判定される高次機能には「衰えていく厳密な順番」があります。

従って、脳の機能がどこまで衰えているのか及びその脳の機能レベルでは、どんな症状を特徴的に示すのかを調べることで、「アルツハイマー型認知症」を発病している人の認知症のレベル(「小ボケ」、「中ボケ」、「大ボケ」)を判定することができるのです。

※エイジングライフ研究所が開発した「二段階方式」の手技は、御者の働きをする「前頭葉」の働き具合を『かなひろいテスト』で判定し、馬の働きをする左脳と右脳の働き具合を『MMSE』で判定し、両者の機能レベルを総合的に判定することにより、『アルツハイマー型認知症』の重症度を判定することが出来ます。更には、回復が困難で介護するだけのレベルである「大ボケ」と回復可能な早期の段階の「小ボケ」と「中ボケ」とを区別して、脳の機能レベル毎に適切な対応ができるように工夫されているのです。

 4.  ナイナイ尽くしの単調な「生活習慣」が始まる契機としての「キッカケ」の存在

「アルツハイマー型認知症」発病の「第一の要因」である「加齢による脳の老化」という条件は誰にでも共通した条件なのですが、「第二の要因」である「ナイナイ尽くしの単調な生活習慣の継続」という条件は、「第二の人生」を送る個々人によって違います。ナイナイ尽くしの単調な「生活習慣」が始まる基礎としての『意欲の喪失』を惹き起こす原因である「出来事、又は、生活状況」の発生としての「キッカケ」を要約し、分類すると、次の2点のとおりです(詳細については、マニュアルBのP122以下を参照してください)。

(1)  本人の生きる意欲を支えてきた「それまでの生活習慣を継続できなくなる」こと

    〇 趣味も遊びも交友もなく、「仕事一筋の人生」を送ってきた人の定年退職、

    〇 趣味だけが生き甲斐の人が、その趣味を中止せざるを得なくなること、

    〇 親や兄弟、子や孫、友人、ペットなど大事な人や動物との別離

(2)    生きる意欲をなくしてしまう「状況の発生」に直面し、その状態が継続すること

 〇 自身の重い病気や大きなけがなど肉体的に困難な状況

 〇 子供の失業や借金問題、孫の不登校など家庭内に重大な問題が発生

 〇 配偶者や家族の看病や介護に追われるだけの毎日の暮らし方

とはいえ、同じような状況になっても、一人一人の生活習慣(日々の脳の使い方)は、それぞれに違います。以下のように、具体的に考えると理解しやすいでしょう。

例えば、退職して3年もたつと見る影もなくボケてしまう人もいれば、退職後に楽しく生き生きと生活していく人もいます。よく言われるように、夫を亡くしたおばあさんは、半年もたつと楽しげに生活をエンジョイするようになることが多いのに、同じように妻を亡くしたおじいさんの多くは、元気をなくしていくことが多いのです。

従来どおり、趣味や遊びや交遊の機会を自分なりに楽しみつつイキイキとして生活していく人と、キッカケを契機に何事に対しても意欲を喪失してしまい、元気をなくしていく人との差を理解するには、毎日の「生活習慣」(脳の使い方)を、その人に沿って、具体的に考え、確認する必要があります。前者と後者とを分けるキーポイントは、人生の大きな出来ごとの発生や生活環境の大きな変化が起きた状況で;その人の前頭葉を使う場面が従来どおり多い生活が継続しているのか、又は、その人の前頭葉を使う場面が極端に減ってしまった生活に変わってしまっていくかどうかなのです。『キッカケ』を契機にして、何事に対しても意欲を喪失し、ナイナイ尽くしの単調な「生活習慣」が継続していたことの確認が不可欠の作業となります。

 Ⅳ.単調な「生活習慣」に入っていく「キッカケ」の類型的な事例

人によって日々の生活習慣(脳の使い方)は異なりますが、大まかに言えば、上述のような状況が起きれば、ナイナイ尽くしの単調な「生活習慣」に陥る可能性が高いと言えるのです。とはいえ、その状況変化により、その人の脳の使い方としての「生活習慣」がどのように変わっていったのかは、その状況に対する当の本人の受け止め方次第という重要な要素が存在しているのです。どのように受け止めるかは、その人の「前頭葉」の機能に内在されている『評価の物差し』(対象に対する捉え方、感じ方、観方、考え方の基準となるもの)が、個々人毎に異なるからです。その結果、同様の状況に遭遇した場合であっても、其れまでと変わらない「生活習慣」(「脳の使い方」としての生活習慣であることに留意する)を続ける人がいれば、意欲を喪失してしまい、「前頭葉」の出番が極端に少ない単調な生活習慣、ナイナイ尽くしの単調な生活習慣に変わっていく多くのお年寄り達がいるのです。「キッカケ」の発生後から検査時に至るまでの期間の生活実態を具体的に聞き取り、ナイナイ尽くしの単調な生活習慣が継続されてきたことを確認し、「二段階方式」のテスト結果が示している「前頭葉」を含む脳全体の機能について、脳の老化が加速されてきた結果としての現在の状態(脳の機能レベル及びその反映としての症状)について、本人や家族に対し明確にさせることが、今後の生活改善(「前頭葉」を含む脳全体の活性化の達成を目的とした「脳のリハビリ」)の実施指導のスタートでもあり、生活指導の根幹をなすものでもあるのです。

二段階方式」の実施の目的と意義は、早期診断による回復(小ボケ及び中ボケの段階で発病を見つけて、脳のリハビリの実践指導により、「アルツハイマー型認知症」の発病患者を治して見せること)の実績を積むことに因り、介護の予防(症状を「大ボケ」の段階にまで進行させない事)だけでなく、第一次予防となる「発病自体の予防」という「テーマ」について、地域住民、当該市町村の首長、更には、国政に携わる官僚や政治家たち、最終的には、国民全体に情報発信していき、我が国が国策として実施すべき命題であることを理解させ、努力させることにあるのです。早期診断に基づいた「脳のリハビリ」の実践の指導により、実際に治して見せることが出来ないで、発病の予防の為の「脳イキイキ教室」を運営しているだけというのでは、不十分というしかないのです。

大抵の医療機関が現在行っているやり方、末期の段階である「大ボケ」の段階で見つけて、効きもしない薬を処方しているだけという実態(単なる「レッテル張り」)と大した差異は無いと考えているのです。『一定規模の売上高を稼ぎ出すことが至上命題』である医療機関には、「アルツハイマー型認知症」の早期診断による回復を目的とする業務も、発病自体の予防を目的とする業務も、両業務共に、医療機関には期待することが出来ないという問題を認識していただきたいのです。医療機関が発病の診断と称して使いまくっているCTやMRIやSPECTやPET等の機器の使用が、早期診断に不必要であり(「二段階方式」という神経心理機能テストの活用だけで早期診断が可能)、薬の処方も要らない(「脳のリハビリ」の実施のみが、症状を治すことが出来る唯一の方法であり、廃用症候群に属する老化廃用型生活習慣病が本態であるアルツハイマー型認知症の場合は、症状を治したり、症状の進行を遅らせたり、発病を予防することが出来る効能を有するが開発されることは未来永劫有り得ない事)のです。早期診断による回復の業務も、発病自体の予防業務も、両者共に、売り上げを稼ぎ出すことが命題とならない市町村の業務となるべきものであり、その実践の指導(私たちが政府に提言している、「二段階方式」の考え方に基づいた及び二段階方式の手技を活用した、「アルツハイマー型認知症」の早期診断による回復及び発病の予防を明確な目的とした住民参加型の「地域予防活動」の実践展開)を担うことが出来る人達は、市町村の保健師さん達しかいないのです。このことを理解し、強く自覚してほしいのです。

Ⅴ.症状の継続期間と「脳の老化のスピード差」をもたらす生活要因

「キッカケ」が起きて意欲を喪失し、ナイナイ尽くしの単調な生活習慣が開始され、半年から1年の経過で発病します。発病から3年の間が『小ボケ』の期間、次いで、2~3年の間が『中ボケ』の期間となります。即ち、発病から5~6年経つと『大ボケ』になる」が大原則です。この基準期間に適合しないケースは、下図のプラス要因とマイナス要因の質と量とが脳に働いて、「アルツハイマー型認知症」の症状の更なる進行や回復に影響を与えているのです(『特有な性質』)。ブログの字数枠との関係で、図は省略。

Ⅵ.『アルツハイマー型認知症』発病患者の脳機能の衰え方とその特徴

1.アルツハイマー型認知症は、「加齢による脳の老化」と「ナイナイ尽くしの単調な生活習慣の継続に起因した廃用性の機能低下」という、異なる二つの要因が重なることによる相乗効果としての「廃用性の加速度的で異常な機能低下の進行」に因り、前頭葉を含む脳全体の機能が衰えていく際に、「4つの特徴」が確認できるのです。

① 最初に、前頭葉だけにつき加速度的で異常な機能低下が進行する「小ボケ」

② 次いで、前頭葉が機能低下を継続する中で、左脳と右脳と運動の脳も同時に並行して、加速度的で異常な機能レベルに衰えが進行していく「中ボケ」

l③ 最後は、前頭葉並びに左脳及び右脳と運動の脳の加速度的で異常な機能の低下が同時に並行して進行し、身体が持つ間機能低下が進んでいく「大ボケ」

④ MMSEで判定される「下位項目」の機能には、衰えていく「厳密な順番」が認められる。

※1 MMSEで判定する下位項目について、『脳機能低下の厳密な規則性が存在』している

以下のグラフは、かなひろいテスト(前頭葉の機能テスト)とMMSE(左脳と右脳の機能テスト)を同時に施行した約15,000人のテスト結果の分布を示しています。

 

※2 かなひろいテストの成績良好群には、MMSEの成績が悪いケースは無いのです。他方、かなひろいテストの成績が悪くなっていくと、MMSEの成績には満点から0点まで大きな幅が見られます。このグラフから直接には見え難いのですが、MMSEが30点満点でも、かなひろいテストが0点のケースでさえ数多くみられるのです。このことはとても重要なことなのです。なぜなら、通常使われているMMSEのような知能検査だけでは、前頭葉機能の衰えは発見できないことを意味しているのです。言い換えると、「前頭葉」の機能テストを実施してみないと、脳機能の老化が加速された初期の状態(回復可能な早期の段階)をキャッチすることが、出来ないということなのです。

2.「MMSEテスト」を実施した場合に確認される『下位項目の低下順』の規則性

次に示すのは、「MMSEで判定される高次機能の働きには、衰えていく厳密な順番が認められる」という、「衰え方の規則性」の存在のことです。

以下は、各『下位項目の項目困難度』を示す指標である完全正答率50%(各下位項目について、満点をとる人が50%になる時のMMSEの総得点)のグラフです。

50%の横軸とクロスする点が、右に行くほどその項目は難しく、左に行くほど易しいことになります。

注1) このデータの意味するところは、脳の老化が加速された「アルツハイマー型認知症」の場合には、脳の機能がこの項目の順番に衰えていく(できなくなっていく)という厳密な規則性が認められるのです(アミロイドベータの蓄積とは無関係)。

注 2) 「MMSE各下位項目別の得点別分布グラフ」はマニュアルAのP129以下を参照してください(字数枠の関係で、此処では省略)。

※1 項目困難度の順番は、次の通り。即ち、想起、注意と計算、時の見当識、所の見当識、三段階口頭命令、模写、文を書く、記銘、書字命令、復唱、命名

※2 「想起」、「注意と計算」から出来なくなっていくのは、この項目には、前頭葉の「注意の分配力」の機能の高度な発揮が要求される為です。

※3 下位項目の衰え方がこの順番でないケースは、アルツハイマー型認知症の発病ではないのです(アルツハイマー型認知症の場合だけに特有で、極めて厳密な順番)。

第2章 「二段階方式」のテスト実施のアウトライン及び実施上の留意点

Ⅰ.「二段階方式」の活用と個別の生活改善(「脳のリハビリ」)の指導

1.  個別の生活改善指導のフローチャートブログの字数枠との関係で省略

 2. 「二段階方式」の導入の意義

「二段階方式」を介護予防及びアルツハイマー型認知症の早期診断による回復と予防のツールとして市町村に導入する場合、以下の目的が考えられます。

(1)    事業の費用対効果を考慮して、認知症の重症度に応じた施策へ繋げる。

(2)    正常下限、「小ボケ」及び「中ボケ」に対する個別の生活改善指導に用いる。

(3)    早期段階の相談窓口(早期診断による回復と進行の防止=介護の予防)。

(4)    共同参画事業から、地域での自主活動(介護の予防及びアルツハイマー型認知症の発病の予防並びに生きがい創造活動)への推進とその拡大を図る。

(5)    幅広い年代の住民に対する「脳の健康」をテーマとした啓蒙活動を行う。

 3.  個別テストの実施と個別生活改善指導

アルツハイマー型認知症の予防活動というと「予防教室」がクローズアップされ勝ちです。「予防教室」と銘打っては居ても、どこででも行われているデイサービスとはちょっと違うということをアピールするために、集団でかなひろいテストをやってお茶を濁すのでは、「二段階方式」を正しく導入したことにはなりません。

「二段階方式」を導入するとき最も重要なことは、「二段階方式」による脳の機能テストを個別の生活改善指導(脳のリハビリの指導)に活用することなのです。「二段階方式」を個別で活用できるようになると、おのずから集団での使用方法にも変化が生まれてきます。脳機能テストの目的や使い方がはっきりするので、適切な使い方ができるようになり、住民と保健師さんの双方が納得したうえで、テストに臨むことになるからです。その意味で、早期診断の結果を回復につなげることが極めて重要なのです。治して見せることが、発病の予防にも繋がるのです。

 「予防教室」の参加者に対する個別の脳機能テストの実施とその結果に基づく生活改善指導が行われて初めて、地域住民のアルツハイマー型認知症に対する理解と関心が高まります(正常な機能レベルのお年寄りは、正常なレベルのままに保たせ、小ボケ及び中ボケレベルのお年寄りに対しては脳のリハビリの指導により実際に治して見せることが極めて重要なのです)。予防教室に参加するお年寄りの脳が元気になる理由が参加者や家族に理解され納得されることによって、日常生活面での脳の使い方としての『生活習慣』に、実質的な変化と効果が出てくるようにもなるのです。

そうしたバック・グラウンドがあることが、地域住民の参加による自主的な地域予防活動の展開、アルツハイマー型認知症の早期診断による回復及び発病の予防を明確な目的とした住民参加型の地域予防活動の拡大展開にもつながっていくことになる。地方の地域の小さな隅々にまで、展開実施していくのです。

4.    前頭葉を含む脳全体の機能レベルと症状とのリンクが「二段階方式」の特徴

「二段階方式」においては、アルツハイマー型認知症を三つの側面から理解:

①   二つの神経心理機能テストによる『脳機能レベル』の判定(以下、「A」と言う)及びMMSE下位項目の低下順の通りであるか否かの判定が必須の作業。

② 「30項目問診票」による『生活実態』(三段階区分による具体的な症状)の確認と把握(以下、「B」)

③   過去数年間における脳の使い方としての生活習慣という視点からの『生活歴』(「キッカケ」の発生の確認作業及びその後のナイナイ尽くしの単調な「生活習慣」の継続の確認)の聞き取り(以下、「C」)という3つの側面をリンクさせ総合的に判定、鑑別することが、他に例のない特徴となります。

※脳の機能レベルAと生活実態Bとが一致して、更にそれを説明でき得る生活歴の存在Cの確認ができた場合のみアルツハイマー型認知症の発病と判定することになり、初めて個別生活改善(脳リハビリ)指導の対象となります(その割合は、90%を超えることになります:殆どのケースが、アルツハイマー型認知症)。      

「二段階方式」を使うということは、依拠する多数の症例により集積された脳機能データに基づいて、A・B・Cの各々が意味するところが、相互に一致するかどうかを「確認していく」作業であるともいえます(「判定の手順」が確立されている)『アルツハイマー型認知症の発病であれば、必ずA=B=Cになるのです』。

「二段階方式」では、ベースとなるのは前頭葉を含む脳全体の脳機能レベルです。脳機能テストは、教示の一つ一つ、用紙の提示方法、ヒントの出し方等すべての面で、マニュアル通りに実施します。その理由は、簡便な検査だからこそ、状況を統一しておいて、結果として生じる小さな差異も脳が機能した結果だと考え、テスティーの脳の機能レベルの内容理解に役立てたいからなのです(マニュアルAのP73参照)。

※MMSEのテスト実施結果としての「下位項目の低下順」が、老化が加速される場合の低下順とは異なっている場合は、アルツハイマー型認知症ではないことになります。

 ※脳機能テスト(A)をマニュアル通りに忠実に実施していく間に、「この脳機能レベルならば、生活実態(B)は、大体~位だろう」という予想を立てることも重要です。

そして、(A)と(B)とが一致するかどうかを確認していく姿勢が必要です。正常老化と老化が加速されたアルツハイマー型認知症の場合は、必ずA=Bになるからです。

更には、被検査者の大半のケースが、アルツハイマー型認知症の発病だからです(様々な種類が数ある認知症の90%以上を「アルツハイマー型認知症」が占める)。

そして、A≠Bの場合は、前出の表に当てはまらないことを確認できたら、何故その状況が起きているか(「防衛的」な態度の反映なのか、「家族関係」の悪さの反映なのか、他の種類の認知症なのか、認知症と紛らわしい他の病気なのかなど)推理を働かせます。それも生活改善指導の一要素になります。そして最後に、現在の「脳機能レベル」にまで衰えさせてきている原因である「ナイナイ尽くしの単調な生活習慣の継続」の確認を、「生活歴(C)」の聴取で行います。

この過程で、「日々の生活は、左脳、右脳、運動の脳を前頭葉が支配し、統括し、管理しながら営まれている」こと及び「『キッカケ』発生後に、ナイナイ尽くしの単調な「生活習慣」に入っていき、「脳を不十分にしか使わない生活習慣が継続していた」ことを確認していくことにより、本人や家族が、「アルツハイマー型認知症」の発病に至る経過を納得していきます。これが、生活改善指導(「脳のリハビリ」指導)の基礎になります。

※その為には、A・B・Cの各段階でなすべきことが、テスターに十分に、正しく理解されていなくてはいけません。またその結果が意味することを深く解釈できていなくてはいけません。「二段階方式」の実施の目的と神髄は、早期診断(小ボケ及び中ボケの段階で見つけること)により、実際に治して見せること(早期治療)にあるのですから。

特に脳機能テストAに比べて軽視されがちな、生活実態Bの確認と、生活歴Cの聞き取り作業における、「ナイナイ尽くしの単調な生活習慣の継続」とその「キッカケ」の確認とは、個別の生活改善指導の内容を組み立てる上で、重要な基礎となるという認識が不可欠となるのです(マニュアルBの関連個所に習熟してください)。

アルツハイマー型認知症は、廃用症候群に属する老化廃用型の生活習慣病なのです(但し、脳の使い方としての生活習慣であることに注意)。「第二の人生」を送っている60歳を超える年齢の高齢者だけが、発病の対象となるのです。発病の「第一の要件」は、『加齢』に起因した脳の機能低下(脳の正常老化の性質に起因)であり、マスコミが騒いでいるような30~50歳の年齢の若年層が発病することは起きてこないのです(正しい診断が行われたならば、『側頭葉性健忘症や緩徐進行性失語症や神経症や老年期うつ症状』との診断がなされるべきものを誤診しているだけなのです)。更には、60歳を超える年齢であっても、仕事が現職である場合は(肩書だけの場合を除く)、「アルツハイマー型認知症」を発病することは起きてこないのです。

発病の「第二の要件」は、キッカケを契機に何事にも意欲を喪失したことが端緒となり開始されたナイナイ尽くしの単調な「生活習慣」の継続に起因した廃用性の加速度的で異常な機能低下の進行なのです。その先に発病及び症状の重症化の進行が待っているということなのです。アルツハイマー型認知症は、「小ボケ」の段階に始まり、次いで、必ず「中ボケ」の段階を経て、最後に、末期の段階である「大ボケ」の段階という三つの段階に区分されるのです。三つの段階に区分する理由は、小ボケ及び中ボケの段階で見つけて、「脳のリハビリ」を実施することにより症状を治すことが出来るのであり、「大ボケ」の段階で見つけたのでは、治すことが出来ないからなのです。 

 追加テーマ 『生活歴の聞き取り方のポイント』については、以下の内容を良く理解して実施してください。

 &Ⅰ.「ナイナイ尽くし」の単調な「生活習慣」が開始されることになる「キッカケ」(個別事例判定マニュアルBのP122~P144を参照)の存在の確認

ⅰ)(その1)自分なりの目標を持って、自分なりに頑張って、自分なりに楽しみながら「第二の人生」を生きていこうとする上での「意欲」を支えてきた生活がなくなってしまうこと;

ⅱ)(その2)自分なりの目標を持って、自分なりに頑張って、自分なりに楽しみながら「第二の人生」を生きていこうとする上での「意欲」をなくしてしまうような状況が発生し、継続すること

2. その人のこれまでの生活を具体的に振り返り、何時、何を「キッカケ」に「意欲」を喪失したのか並びにキッカケを契機に開始された単調な生活習慣、脳の使い方としての「生活習慣」が変わってしまい、『前頭葉』の出番が極端に少ない「ナイナイ尽くし」の単調な「生活習慣」が継続されてきたのか(左脳・右脳・運動の脳の出番が極端に少ない生活=脳全体の司令塔の役割を担っている『前頭葉』の出番が極端に少ない生活習慣が始まり、継続されてきたのか)を具体的に確認して、脳の老化が加速され、異常なレベルに衰えてきている現在の状態を本人や家族に対し明確にさせることが、「生活改善指導」(「脳のリハビリ」の指導)のスタートでもあり、『生活改善』指導の根幹をなすものでもあるのです。『生活歴』の聞き取り方は、こうした視点から行うことが要求されるものなのです。

&Ⅱ.「生活歴」の聞き取り方の手順と要点

1.「キッカケ」の発生時期の確認

ⅰ)「キッカケ」は何時頃起きたのか、「脳機能テスト結果」から推定します。

①   個別事例判定マニュアル-Bの(P133~P135)の解説及び表を参照してください。

②   ところが、現実の生活の中では、個別事例判定マニュアル-BのⅢ-06に記載の「症状の期間と脳の老化のスピード差をもたらす生活要因」に説明してありますが、日々の生活には色んな出来事が起きてきたり、生活環境も著しく変わるのが常なのです。その中で、脳の老化を更に加速させる出来事が重なったり、逆に、脳の老化の進行を止めたり、或いは引き戻したりするようなことも起きてくるものなのです。

ⅱ)上記1)により推定された「キッカケ」の発生時期が、実態と合致しないときは、「老化のスピード差」の問題を考慮して、推定された発生時期を修正していくことになります。

2.「キッカケ」となった出来事や状況の発生の内容の聞き取りと確認の仕方

「それまでの生活で、自分なりに生き甲斐を感じて、自分なりの目標や喜びや楽しみがある生活習慣があって、意欲をもって、自分なりに頑張って生きてきていた本人が、何事に対しても「意欲」を喪失してしまい、生き甲斐なく、趣味なく、交遊なく、運動もせず、目標となるものも無い「ナイナイ尽くし」の単調な「生活習慣」に陥っていく契機となった出来事や状況の発生、或いは、状況の継続が、「今から(~年前頃)〔テスト結果から推定される時期〕に起きていませんか?」という風に尋ねます。

3. 「ナイナイ尽くし」の単調な「生活習慣」の継続の確認

ここでの作業は、「キッカケ」の発生を契機にして、何事に対しても『意欲を喪失』してしまい、脳を積極的に使わない「ナイナイ尽くし」の単調な「生活習慣」が開始され、更には、継続されてきたことにより、脳の老化が加速されて(廃用性の加速度的で異常な機能低下の進行)、異常な機能レベルに衰えてきていることを反映した症状が発現していることを本人〔家族〕に確認し、説明し、納得させることが必要で重要な作業となります。

1)     「キッカケ」発生前の生活ぶりについて、「前頭葉」を生き生きと働かせる原動力となっていた生活習慣とは、どんなものであったのかを聞き取り、確認すること(趣味、遊び、交遊、運動、行事、祭事、催事、農業、地域興し等を確認すること)。

2)     その生き生きとしていた生活が、「何」をキッカケにして、脳を積極的に使わない「ナイナイ尽くしの」単調な「生活習慣」の開始と継続に変わっていったのかを、具体的に聞き取り、確認しなければなりません。

注)廃用性の機能低下を惹き起こさせた、ナイナイ尽くしの単調な「生活習慣」がこのケースの場合は、何であったのかを具体的に聞き取ることが命題なのです。

3)     最後に、趣味も遊びも人付き合いも楽しまない、運動や散歩もしない、「ナイナイ尽くしの」単調な「生活習慣」の継続が、脳の老化を加速させて、異常なレベルに衰えさせてきたことを本人〔家族〕と共に確認するのです。

4)     老化廃用型の「アルツハイマー型認知症」の場合は、症状(脳の機能低下)が徐々に進行していくことが特徴。中ボケレベルは、前頭葉の機能が異常なレベルにあるだけでなくて、大脳後半領域の機能レベル(左脳及び右脳)も異常なレベルになってきているのです(マニュアルBのP81を参照してください)。

ナイナイ尽くしの単調な「生活習慣」が継続していくことに因り、廃用性の加速度的で異常な機能低下が進んでいき、前頭葉を含む脳全体の機能レベルを落としていき、大脳後半領域の働きも不合格、脳全体の機能が異常なレベルに衰えてきたのが「中ボケ」レベル

4.「キッカケ」の発生から現在までの、ここ(~年間)の被検査者の生活ぶりを見たとき、日々の生活が、「アルツハイマー型認知症」を生じさせる可能性の高い生活状況、即ち、生き甲斐や喜びや楽しい時間を過ごすこととなる体験や目標設定の対象となる趣味や遊びや人付き合いや運動や行事や催事への参加等の生活習慣が極端に少ない、「ナイナイ尽くし」の単調な「生活習慣」の継続であったこと、そうした単調な生活習慣に陥っていく「キッカケ」の発生(意欲を支えてきた生活がなくなってしまうこと;意欲をなくしてしまうような状況が発生すること)があった事を確認していく作業が必要不可欠なのです(これを基にして、「脳のリハビリ」(生活改善)指導の具体的な内容が組み立てられるからです。

&Ⅲ「脳のリハビリ」(生活改善)の実践のための指導

「アルツハイマー型認知症」の発病であり、「小ボケ」又は「中ボケ」のレベルであることが確認され、『生活歴』の聞き取りにより、「キッカケ」の発生時期及びその具体的な内容が確認され、「ナイナイ尽くし」の単調な「生活習慣」の継続が確認されたら、被検査者本人の脳の活性化を図る為の、「脳のリハビリ」の指導〈生活習慣の改善指導〉を行います。

1. 本人の現在の脳の使い方としての「生活習慣」の問題点を把握して、脳の活性化、即ち、「前頭葉」を含む脳全体が活性化する「生活習慣」への改善の為に、出来るだけ具体的で、実施可能な「脳のリハビリの処方箋」を提示することが目的。

2. 「前頭葉」が活性化するテーマは、個々人によって異なります。「評価の物差し」が異なる上に、人生体験自体が異なるからです。第二の人生を送っていた発病前の本人の脳の使い方としての「生活習慣」の具体的な内容を聞き取り、本人なりに継続して実践することが出来、テーマを実践することに因り「意欲」が湧いてきて、「注意の集中力」が継続するようになり、「注意の分配力」の機能の出番が多くて、発想し、工夫し、洞察や推理する機能、『実行機能』と呼ばれる「前頭葉」の個別認知機能が活性化して良く働くような「テーマ」を見つけ実践の指導をすることが、必要不可欠となるのです。継続されて、生活習慣化することに因り始めて、本人の「前頭葉」を含む脳全体の活性化に繋がるものだからなのです。

3. 実践のテーマは、原則として、趣味、遊び、人付き合い、運動、行事や催事などの地域興し関連のテーマへの参加が対象となります。本人が、関心や興味を覚えることが出来て、継続して実践することが出来て、実践し易いものであることが重要なのです。農作業の手伝いや台所作業の手伝いが始まりであっても良い。そこから、次第に実践のテーマと目標値を上げていけば良いのです。「前頭葉」を含む脳全体の機能レベルがそこまで衰えてきているということは、言い換えると、意欲、注意の集中力及び注意の分配力の機能がそこまで衰えてきているということなのです。考えることであれ、行為や行動を起こすことであれ、一定レベルでの意欲の発揮が出発点となるのであり、更には、注意の集中力の発揮の一定レベルでの継続が要求され、「前頭葉」の活性化が達成されるには、注意の分配力の機能(分析、理解、洞察、推理、シミュレーション、選択、感動等の実行機能を働かせる上で不可欠の機能)が、一定レベルで発揮されていることが不可欠となるのです。

4. テストの『やりっ放し』は、厳禁です。三ヶ月、更には半年が経過した時点で、二段階方式の手技を活用して、きちんと「脳の機能レベル」の変化を確認し、改善しているか否かを確認してください。改善の程度がさほどでない場合は、「脳リハビリ」の実践の内容と程度を確認し、必要な場合は、新たな「テーマ」を指導することが不可欠です。テストをやることが目的ではなくて、治すことが目的なのですから。

 注1)「アルツハイマー型認知症」というタイプの認知症は、器質的な原因病変が何等確認されないのに(存在していないのに)、意識的に何かのテーマを発想し、実行に移す際に、「前頭葉」を含む脳全体の機能レベルにリンクして、それを反映するものとしての症状が発現してきて(私たちの区分で言う、「小ボケ」、「中ボケ」及び「大ボケ」の三段階に区分される症状が発現してきて)、様々な場面での(高度な順番からいうと、「社会生活」面、「家庭生活」面、「セルフ・ケア」の面)支障が出てくるようになる病気なのです。その核となる要因が、一つには、加齢に起因した脳の老化であり、もう一つの要因が、ナイナイ尽くしの単調な「生活習慣」の継続に起因した廃用性の機能低下という要因なのです。

注2)『生活歴の意聞き取り』とは、廃用性の機能低下を惹き起こしている原因であるナイナイ尽くしの単調な「生活習慣」の具体的な内容の聞き取りと確認の作業であり、『脳のリハビリの指導』とは、検査時に判定された前頭葉を含む脳全体の機能レベル(「小ボケ」又は「中ボケ」)を基礎とし、且つ、対象として、発病前の状態(前頭葉を含む脳全体の機能が正常なレベルに在った元の状態)に引き戻させる為に、脳の使い方としての「生活習慣」の改善を目的とした、具体的なテーマの設定、目標値の設定、生活実施上の注意点についての指導を行うものなのです。目的はあくまで、元の正常な機能レベルに引き戻すこと(アルツハイマー型認知症の症状を治して見せること)にあるのです。そのことが、地域住民を発病の予防に向かわせることになるのです。

注3)趣味や遊びや人付き合いや運動、或いは、行事や催事や地域興し等の活動への参加など、自分なりに興味や関心が持てるテーマについて、自分なりの『目標の設定』が出来て、その目標を設定したり、遂行したり、達成する過程及び結果の獲得により、自分なりの生き甲斐や喜びや達成感が得られるような生活(脳の使い方としての「生活習慣」)が継続できている『お年寄り』であれば、「アルツハイマー型認知症」を発病することは無いのです。『前頭葉』の個別認知機能である状況の分析と理解、「テーマ」の発想、実行の計画、洞察、推理、シミュレーション、比較と選択、更には感動等の『実行機能』を動かす核心的な機能である『注意の分配力』の機能の出番が多い「生活習慣」の実践が、発病の予防には最も効果的なのです。専門家とされる人達が憶測だけを根拠に主張している「仮説」の類、アミロイドベータ説、タウ蛋白説、脳の萎縮説及びアセチルコリン説は全て、「アルツハイマー型認知症」の発病原因とは無関係、発病との間に因果関係自体が存在していないものなのです。

 本著作物「Cー22」に掲載され、記載され、表現された内容に係る著作権は、(有)エイジングライフ研究所に帰属しています。このブログ中の内容の一部を引用する際は、必ず、著作権法の規定に則って引用してくださるようお願いします(今回のブログ記事は、個別事例判定マニュアル使用の手引きからの抜粋により作成しています)。

    エイジングライフ研究所のHP左の部分をクリックしてください)

      脳機能から見た認知症(具体例をベースとしたもう一つのブログです)

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