認知症の早期診断 介護並びに回復と予防のシステム

アルツハイマー型認知症は、廃用症候群に属する老化・廃用型の生活習慣病なので、発病を予防でき、早期治療により治せるのです

アルツハイマー型認知症の発病と単調な生活が始まる「キッカケ」(A-66)

2012-11-01 | アルツハイマー型認知症に対する正しい知識

 私達が意識的に何かの「テーマ」を実行しようとするとき、置かれている状況を判断し、どのようなテーマをどのように実行するのかを決めるのが、脳全体の司令塔である「前頭葉」の役割なのです。その「前頭葉」には、発想したり、計画したり、工夫したり、洞察したり、機転を利かせたりする等様々な働きが詰まっています。更には、自分の置かれている状況を判断し、種々ケースワークしたうえで、実行テーマの内容や実行の仕方を選別して、最終的に決定するために必要な「評価の物差し」という大事な働きがあります。認知症の大多数、90%以上を占める「アルツハイマー型認知症」は、前頭葉を含む脳の機能が廃用性の機能低下を起こしてくること(使われる機会が極端に少ないために、機能が衰えて行くこと)により、認知症の症状が発現してくる病気、廃用症候群に属する「生活習慣病」なのです。「アルツハイマー型認知症」発病のメカニズムについては、ここを(クリック)してください。

私達の日常生活の場面で、「前頭葉」がどのように働くのか、その働く場面を「大事な仲のいいお友達を家にお呼びして、得意の手料理でもてなす場合」を例に挙げて、説明してみましょう。お友達が大好きな料理が、例えば「魚料理」だったとしましょう。どんな「種類の魚」にするか、「煮つける」のか、「焼く」のか、「刺身」で出すのか、或いは、「手巻きずし」を出すのか、「量」をどの程度にするのか、どんな「お皿」に盛るのか、メインの「魚の料理」の他にもう一品つけるとしたらどんなものにするか、テーブルクロスの色や柄をどんなものにするか、部屋の雰囲気をどんなふうにしておくか等、お友達との付き合いの深さによって、「テーマ」の内容がどんどん広がり、深くなっていくでしょう。自分がどんな服を着てお友達を迎えるるのかを決めるのも一大事です。お友達との関係の深さ次第で、お化粧にかける時間も異なるでしょう。部屋もきれいにしておかないといけない、そのあわただしさと忙しさとが気持ちをわくわくさせ、そうした忙しささえもが脳を活性化させるのです。お友達との食事中の会話も、「どんなことをどんなふうに話す」のが良いのか、「どんな表情で話す」のがいいのか、「どんなふうに相槌を打つ」のがいいかなど、何時も気にかけながら話すでしょう。こんな場面では、あなたの「前頭葉」(前頭前野のことを言うものとする。以下、同じ)活性化し、フル回転しているのです。こうした「テーマ」の内容の広さや深さなどの程度態様をシミュレーションしたうえで最終的な内容を決定しているのが司令塔の「前頭葉」なのです。「高齢者」だけを発病の対象とする「アルツハイマー型認知症」は、この司令塔の「前頭葉」の働きだけが異常なレベルに衰えることから始まるのが特徴なのです。

上記の例示とは対極の使われ方としての「生活習慣」、発想したり、計画したり、工夫したり、洞察したり、機転を利かせたりする等様々な「前頭葉」の機能が使われる場面が極端に少ない、ナイナイ尽くしの「単調な生活」の継続が原因で、「 脳の働き」が異常なレベルに衰えてきて、且つ、脳の機能の衰えに付随していろんな症状が出てくるために、「社会生活」や、「家庭生活」や「セルフ・ケア」にも支障が起きてくるのが、「アルツハイマー型認知症」という病気なのです。こうした生活習慣が継続する中で、脳の司令塔の「前頭葉」がちゃんと働かなくなった時点、ほんの少し前に食事をしたばかりなのに、そのことさえ思い出せないような「重度の記憶障害」が出てくるようになるはるか前の段階、そこから「アルツハイマー型認知症」はもう始まっているのです。左脳、右脳および運動の脳の機能が「異常なレベル」に衰えていくにつれて、「中ボケ」、更には「大ボケ」へと症状が進行し重くなっていくのです。認知症の専門家達(医師や研究者)は、早くこのことに気付いて欲しいのです。

生き甲斐なく、趣味なく、交友なく、運動もせず、目標もない、ナイナイ尽くしの「単調な生活」、前頭葉の出番が極端に少ない生活の継続により、脳が廃用性の加速度的な老化(機能の低下)を速めていく過程を対象として、脳の神経心理機能の測定による脳の機能レベル(正常、小ボケ、中ボケ、大ボケ)とそれにリンクした特有な「症状」について、定期的な検査によるその変化(改善、維持、悪化)「二段階方式」の手技で詳細にチェックしてみると;最初に、脳全体の司令塔の役割をしていて最高次機能である「前頭葉」の働きだけが加速度的に衰え始めることが分かるのです(この間は、「左脳」と「右脳」と「運動の脳」の機能は正常なレベルのままなのです)。この最初の段階である「軽度認知症」(小ボケ)の詳しい症状については、(ここを「クリック」してください)。

第二の人生を送っている「高齢者」が、ナイナイ尽くしの「単調な生活」が継続する日々を送っていると、最初に「前頭葉」の働きだけが加速度的に衰えて異常なレベルに入り込み、「社会生活」に支障がでてきます(ここからが「小ボケ」の段階)。その後も「単調な生活」が継続したままでいると、「前頭葉」の機能の加速度的な衰えが更に進行していきます。「社会生活」に支障が出てくる域と「家庭生活」に支障が出始める域との境界点に達したときになって初めて、「前頭葉」を支えて協働する働きをしている「脳の後半領域」の「左脳」と「右脳」の働きも、その順番で加速度的な衰えを示して「異常なレベル」に衰えてくるのです(ここから、「家庭生活」に支障が出てくる「中ボケ」の段階に入ります)。「前頭葉」と左脳及び右脳の加速度的な「機能の衰え」の進行に連動して、その機能障害の相乗効果が症状(態様及び程度)となって現れてくるのです。「中ボケ」レベルになっても何も対策が取られないで(或いは、「年のせい」などと誤解されて放置され)「単調な生活」がそのまま継続されていると、脳全体の機能が更に加速度的に衰えていき、「セルフ・ケア」に支障が出てくるようになったところが回復困難な末期段階の「重度認知症」(大ボケ)なのです。

生き甲斐や目標もなく、趣味や遊びや人付きあいもなく、運動もしない、ナイナイ尽くしの「単調な生活」を送っていると言うことは、脳の機能面から言うと、もともと加齢により機能が衰えていく性質を持っている「前頭葉」の働きが、ナイナイ尽くしの「単調な生活」を送っている中で、脚の筋肉と同じように、「廃用性の機能低下」を起こしてくることになるのです。「廃用性の機能低下」を起こしてくるにつれて、発想、創意、企画、構成、計画、観察、分析、理解、把握、考察、洞察、推理、予見、シミュレーション、抑制、工夫、修正、整理、機転、興味、創造、感動、判断及び決断等の「前頭葉」の認知機能の働き具合が衰えていき、[その直接の結果として]、いろんな程度態様の認知症の「症状」が発現してくるのです

前回の報告で説明したように、人によって「生活状況」の発生に対する受け止め方が違うので、「生活状況」の発生がナイナイ尽くしの「単調な生活」に入っていくことに直結するかどうかは一概には言えません。その「生活状況」に遭遇した本人の「受け止め方」次第で、「キッカケ」となるかどうかが決まるからです。それ迄と変わらず、それなりに生き甲斐や目標がある楽しい生活を続ける人もいれば、意欲をなくしてしまい、生き甲斐や目標もない、趣味や遊びや人づきあいも楽しまない、言い換えると「前頭葉」の出番が極端に少ない生活に変わってしまう人もいます。ある程度重要なものでも、本人の痛手が小さければ「キッカケ」にならないし、周りからみてそれ程重要でなくても、本人の痛手が大きければ「キッカケ」になるのです。

 

集積した多数のデータから言えば、以下のような「生活状況」が起きてくれば、「ナイナイ尽くしの単調な生活」が始まるキッカケ」となる可能性が高いと言えると言うことなのです。

□ 仕事の第一線を退くこと(定年退職、家業の廃止、家業を息子に譲る、嫁に家事を譲る)

□ 役を降りること(子供や孫の手離れ、地域の世話役を退く、趣味や遊びの会の会長を退く)

□ 配偶者の死亡(特に、妻が死亡したときの夫)

□ 趣味や遊びやお茶飲み会などの「集いの会」の中止

□ 重大な病気や怪我、腰痛その他の身体上の不具合、配偶者の看病生活

(自身の病気や怪我による入院や療養生活、病気や怪我あるいは身体の痛みなどの不具合が継続する生活、認知症その他の重い病気の配偶者の看病生活)

□ 重大な災害の被災により、財産や家族や友人や思い出を失うこと

□ 家庭内のトラブルや心配事

  (息子のリストラやサラ金問題、息子や娘の離婚、孫の不登校、家庭内の不和)

□ ペットの死亡

□ 友人や自分自身の転居(転居により旧来の友達を失い、新しい友達が出来ない)

□   兄弟姉妹の死(特に、相手が自分より年少の場合は痛手が大きい)

□   周囲との接触もない孤独な一人暮らし(趣味や遊びや交遊を楽しんでいるような暮らし振りの一人暮らしなら、ボケとは無縁です)

□ さびしい生活

 (二世代同居といいながら、家庭の隅に追いやられて家族との会話もないさびしい生活)

「左脳」(仕事)中心の生活だけを生き甲斐に第一の人生を送ってきた人は、定年退職や家業の廃止や家業を息子に譲って仕事がない毎日が始まり、「左脳」を使う機会が極端に少なくなっても、趣味や遊びや人づきあいや運動など、「右脳」や「運動の脳」を使う生活を楽しむ生き方への切り替えが出来ないのです。そのため、「時間だけはたっぷりあるのにすることがない」毎日、「前頭葉」の出番が極端に少ないナイナイ尽くしの「単調な生活」で毎日を過ごすことが多いのです。

他方、趣味や遊びや人づきあいや運動などを自分なりに楽しむ毎日を過ごし、生き甲斐や目標があり脳全体をしっかり使う「生活習慣」がある人たちも、安心するのは未だ早いのです。「ボケ」とは無縁の毎日を過ごしているのに、そうした「生活習慣」とは関係なく、ある日突然降ってわいたように上述した「生活状況」に遭遇することになるのです。それに大きな痛手を感じて、意欲をなくしてしまって、趣味や遊びや人づきあいや運動を楽しむ生活、生き甲斐や目標がある生活ができなくなり、「前頭葉」の出番が極端に少ないナイナイ尽くしの「単調な生活」で毎日を過ごすようになると、同じことが起きてくるのです。

「東日本大震災」のような例のない大規模な災害によって、親や子供や孫や兄弟や親戚の人達や友人達をなくしたり、住む家や田畑や船や店舗等の生活の基礎となる財産をなくしたり、大切な思い出が詰まっている街や景色等をなくしたりしたお年寄りにとって、今回の被災は、夢も希望も喪失させ、何かをしようとする意欲も達成しようとする目標も奪い去ってしまったのです。多くのお年寄りは、この被災が「キッカケ」となって、ナイナイ尽くしの「単調な生活」に入って行き、今もその状態が継続しているのではないかと心配し、恐れているのです。速い人の場合は、ナイナイ尽くしの「単調な生活」が始まってから半年もすると、最初の段階である「軽度認知症」(小ボケ)の段階に入って行くからです。それは、学者が言っているような「不活発病」ではなくて、「アルツハイマー型認知症」そのものだからです。このまま単調な生活が継続していると、その先には「中等度認知症」(中ボケ)の段階が待っているのです。この段階になってきて初めて、周りの人達や認知症の専門家達が騒ぎだすようになるのです。

 第二の人生を送っている「高齢者」である以上、正常であるとはいえ緩やかな傾きの直線の下で、脳が「老化のカーブ」を描いてきている(「正常な老化」)のです。仕事で「左脳を使う場面はない、さりとて、趣味や遊びや人づきあい等で右脳や運動の脳を使う場面も極端に少ない」毎日では、三頭建ての馬車の御者の役割をする「前頭葉」の出番が少なすぎるのです。「キッカケ」を契機に、生き甲斐なく、趣味なく、交友なく、運動もせず目標もないというナイナイ尽くしの「単調な生活」が始まるのです。そうこうしているうちに、出番をなくした「前頭葉」が居眠りし始め、廃用性の機能低下との相乗効果により、加速度的に「脳の老化」を速めていき(「異常な老化」)、「アルツハイマー型認知症」を発病することになるのです。その最初の段階が社会生活に支障が出てくる「軽度認知症」(小ボケ)で、次が、家庭生活に支障が出てくる「中等度認知症」(中ボケ)で、最後が末期の段階の「重度認知症」(大ボケ)なのです。

 注)本著作物(このブログA-66に記載され表現された内容)に係る著作権は、(有)エイジングライフ研究所に帰属しています。

 エイジングライフ研究所のHPここをクリックしてください)

 脳機能からみた認知症の初期の見わけ方(IEでないとうまく表示されません)

 

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