認知症の早期診断 介護並びに回復と予防のシステム

アルツハイマー型認知症は、廃用症候群に属する老化・廃用型の生活習慣病なので、発病を予防でき、早期治療により治せるのです

アルツハイマー型認知症の「症状」の進行と段階的症状の各期間(A-67)

2012-11-11 | アルツハイマー型認知症に対する正しい知識

前回の報告で例示し説明した「生活状況」の発生が「キッカケ」となり、ナイナイ尽くしの「単調な生活」が始まり、ナイナイ尽くしの単調な生活が始まってから半年から 1年後には、「アルツハイマー型認知症」を発病することとなり、発病してから3年の期間が(軽度認知症)「小ボケ」の期間、(中等度認知症)「中ボケ」の期間が2~3年間続いて、発病してから5~6年が経過すると(重度認知症)「大ボケ」になる」というのが「大原則」であり、「二段階方式」による期間判定の標準的な指標となります。別の言い方をすると、「キッカケ」から速い人で半年遅い人で1年経つと発病し(「小ボケ」となり)、「小ボケ」の期間が短い人で1年長い人で3年続くと「中ボケ」になり、「中ボケ」の期間が2~3年続くと「大ボケ」になるということなのです。

「キッカケ」が発生してから「小ボケ」になるまでの期間に早い人と遅い人とがあるのは、「キッカケ」が発生した時の本人の「年齢」(第一の要件)並びに「キッカケ」となった「生活状況」の質と量の差及び本人の受け止め方の差(意欲を喪失する程度の差)によるものなのです。また、「小ボケ」の期間及び「中ボケ」のそれぞれの期間に短い場合と長い場合との差があるのは、本人の「年齢」並びに当該期間中に本人に生じた生活状況により差異が生じてくるのです(下図に例示するような、「脳の老化を加速させる条件」が発生したこと及び「脳の老化を引き戻す条件」が発生したことの相乗効果により差が生じてくるのです)。「生活歴」を聞き取る際は、この具体的な生活条件を聞き出すことが必要かつ重要なことなのです。なお、「大ボケ」の期間は、症状が「大ボケ」のレベルに進んできてから死亡するまでの期間であり、個人ごとに異なり、一定の期間というものはありません。世の中の認知症の専門家といわれる人達は、「大ボケ」のレベルの症状が出てきて初めて「アルツハイマー型認知症」であるとの診断をしているので、末期の段階である「大ボケ」の期間だけを取り上げて「認知症の期間」と言っているのですが、正確に言うと、「小ボケ」、「中ボケ」及び「大ボケ」の各期間を合計した期間が「アルツハイマー型認知症の期間」なので、ケースによっては相当な長期にわたることになるのです。「脳がもたないのに、身体がもつ」、それが「アルツハイマー型認知症」の特徴なのです。但し、「回復」の可能性という視点から言うと、「小ボケ」は回復容易、「中ボケ」は回復が未だ可能、「大ボケ」は回復は困難ということになります。(ここを「クリック」してください)。

「小ボケ」(回復容易)や「中ボケ」(回復可能)のレベルの間であれば、脳の活性化を目的とした「生活習慣」の改善により(前頭葉の「三本柱」である意欲、注意の集中力、注意の分配力の出番が増える生活を極力増やす生活「テーマ」の取り込みを工夫すること)、脳の機能レベルの顕著な「改善」が期待できるのです。廃用性の機能低下が起きてきた(使われる機会が極端に少ない生活の継続により、脳の機能が異常なレベルに衰えてくること)直接の結果として、低下した脳の機能レベルに見合った症状が発現してきているだけなので(言い換えると、世の中の専門家と呼ばれる人達が言っているような、アミロイドベータやタウ蛋白の影響によって神経細胞が脱落してきている直接の結果として「アルツハイマー型認知症」の症状が発現してきている訳ではないので)、「前頭葉」(前頭前野のことを言うものとする。以下、同じ)を中心とした脳を使う機会が増えてくる生活が継続される(脳の使い方としての生活習慣の改善)中で、脳の機能が回復してくるのです。ただし、「アルツハイマー型認知症」の末期の段階である「大ボケ」のレベル(この段階のみをとらえて、世の中の専門家達は、「アルツハイマー型認知症」と診断しています)になると、「正常」レベルへの回復のみならず、「小ボケ」レベルへの回復を期待することも、基本的に困難となります。その「大ボケ」(回復困難)のレベルの中で、運動の脳や右脳を刺激する「生活改善」の継続により、或る程度の改善がみられることはあるのですが、「中ボケ」レベルへの改善の見込みさえも極めて困難なものになってしまうのです。

 

個々人の実際の生活の場面では、上に例示してあるようなそれなりに「プラス要因」の生活(脳の働きを活性化させ、機能を改善させる生活)が入り込んできたり、逆に「マイナス要因」の生活(脳の働きを不活発にさせ、機能を悪化させる生活)が入り込んできたりするものなのです。上述した各段階(「小ボケ」、「中ボケ」)の期間の基準に適合しないケースでは、上の図に例示する「プラス要因」或いは「マイナス要因」と考えられる要因が入り混じり、或いは重なって起きてくることの「生活習慣」の質と量とが脳に働いて、「アルツハイマー型認知症」の症状の更なる「進行」や「回復」に影響を与えているだけなのです。

 エイジングライフ研究所の「二段階方式」を実践活用するときは、「前頭葉」の働き具合及び「左脳と右脳」の働き具合を神経心理機能テストで定期的に測定し、「生活実態」の聞き取りから確認される生活の自立度を判定し(「脳の機能レベル」のアウトプットとしての「症状」の確認)、更に、「生活歴」の聞き取りから、その対象期間中の脳の使い方としての「生活習慣」を具体的にチェックします。その上で、「神経心理機能テスト」により、脳の働き具合の総合的な判定結果を、「改善」、「維持」、「悪化」の三段階に区分して評価し、対象期間中の「生活習慣」を脳の機能レベルの判定結果と照らし合わせるのです。「改善」、「維持」、「悪化」の各々のケースについて、その人の脳を活性化させるような「生活習慣」としての生活実態がどうであったのか、「プラス要因」や「マイナス要因」がどのように入り混じっていたのか、或いは、ナイナイ尽くしの「単調な生活」が継続したままだったのか等を詳細にチェックする訳です。そうした評価によると、脳の機能レベルの推移(改善、維持、悪化)と対象期間中の脳の働き具合を支える「生活習慣」としての生活実態とは、必ず合致していることが分かるのです。

 そうした極めて多数の事例の分析とデータの積み重ねから、上記「老化のスピード差」の期間が導き出されているので、この「小ボケ」、「中ボケ」の期間が「標準的な指標」として、大多数のケースに合致するのです。この指標となる期間と実際の個別のケースの期間との間に差異があるときは、「プラス要因」と「マイナス要因」とが複合して脳の機能レベルの変化に影響を与えているので、その実態を丁寧に確認する作業がとても重要なのです。こうした多数のデータの積み重ねから、専門家達から(原因も分からないし治らない病気)とされている「アルツハイマー型認知症」を発病する原因は、「加齢」(60歳を超える年齢)が「第一の要因」であり、その年齢の下での脳の使い方としての「生活習慣」(ナイナイ尽くしの「単調な生活」の継続)が「第二の要因」であることが分かったのです。「第一の要件」と「第二の要件」とが同時に充足される場合に限って、「アルツハイマー型認知症」を発病してくること並びに発病後のナイナイ尽くしの「単調な生活」の継続によって「症状」の更なる進行が確認されること及び「症状」の各段階の期間(「小ボケ」及び「中ボケ」の各期間)が確認されることがわかったのです。

この場合、どのような「生活習慣」が脳の活性化と脳の機能レベルの改善に効果的なのかについては、上述の例示のように標準的なものを類型化して導き出すことはできるのですが、絶対的なものはなくて、あくまで相対的なものだということが留意すべき重要なポイントです。その「生活習慣」を個々の本人の「前頭葉」がどのように評価したのかが、前頭葉の「三本柱」の意欲、注意の集中力と注意の分配力の働き具合に直接影響しているからです。ところが、「東日本大震災」を被災した地域のお年寄りの場合は、上述したケースとは状況が根本的に異なることに注意が必要だと考えています。未曾有の大災害がもたらした「生活状況」と復興に向けての国や自治体の一向に進まない対応振りという問題とが重なっているのです。今回の被災では、前頭葉の「三本柱」の中核をなす「意欲」自体を大きく阻害してしまう「種々の喪失体験」並びに「マイナス要因」としての生活状況が極めて大きく且つ数も多い上に、脳を活性化させる「プラス要因」となる状況が極めて想定しにくい状況にあるからです。現地を訪ねて見えるのは、全体的な復興が遅々として進んでいないことと、個人のレベルでの「目標」を構築することができにくい状況(脳を活性化させるような「テーマ」の構築と維持が期待できにくい状況)に置かれたままで居るという現実でした。このような環境下では、上述した「進行の標準的な期間」の基準よりも速く「症状」が次の段階に進んで行ってしまう(「小ボケ」が「中ボケ」に、「中ボケ」が「大ボケ」に進むまでの期間が短くなってしまう)のではないかと危惧せざるを得ないのです。

「二段階方式」を導入して、「アルツハイマー型認知症」の地域予防活動を展開している市町村での実践指導を通じて、「小ボケ」と「中ボケ」のレベルであれば、「生活習慣」の改善により正常レベルへの脳機能の回復が可能であることが実証されたのです。但し、「大ボケ」のレベルにまで脳の機能が衰えてしまった人達は、「中ボケ」レベルへの機能の回復さえも期待できないことも分かったのです。従って、「アルツハイマー型認知症」の場合は、「早期発見と早期治療」が極めて重要だということなのです。また、認知症の「予防」というテーマについて言えば、世の中で認知症の専門家と言われている人達が「予防」というときは、「脳血管性認知症」のみを対象として考えているという問題があります。余談になりますが、私たちの知る限りでは、「予防」というテーマの対象に「アルツハイマー型認知症」を正面から取り上げているのは、東京都老人総合研究所だけではないかと思います。認知症の大多数は、「アルツハイマー型認知症」であること及び「アルツハイマー型認知症」は廃用症候群に属する単なる「生活習慣病」なのであり、脳を活性化する「生活習慣」の構築と維持により、発病自体を予防することができるのだということを声を大にして、世間の専門家たちに問題提起しておきたいのです。

現在、殆どの医療機関で行われているような、「重度の記憶障害」及び失語、失行、失認という「重度の症状」を基準にして診断する方法では、回復困難な(重度認知症)「大ボケ」の段階でしか、「アルツハイマー型認知症」を見つけることが出来ないのです。回復容易な「軽度認知症」(「小ボケ)と回復可能な「中等度認知症」(中ボケ)の早期段階を見逃してしまうと、回復の見込みはなくなり、介護だけの対応となってしまうのです。「大ボケ」の段階になった「アルツハイマー型認知症」のお年寄りの介護を家族の手だけにゆだねるのは、家族の精神的および経済的負担が大きすぎて、国の政策として取るべきものとは考えがたいのです。(「大ボケ」のレベルで発現してくる「症状」については、ここを「クリック」してください)。その意味で、「アルツハイマー型認知症」は、原因も分からないし治らない病気とするのが医学界の主流の考え方である中で、厚生労働省が「早期診断による回復及び予防」と言うテーマを重要施策として打ち出してきたことは、極めて大きな社会的な意義があると私たちは考えています。

(コーヒー・ブレイク) 東日本大震災の被災地のお年寄り達に、(「アルツハイマー型認知症」についての正しい知識を持ってもらいたい)、(どんなに困難な状況下にあっても、自分なりの「目標」を設定して取り組んでいく生活がないと、必ず「アルツハイマー型認知症」が襲ってくることを知ってもらいたい)との、強い思いから毎週記事を書いてきましたが、全体としての体系的な説明及び特に重要なテーマについての詳細な説明をほぼ完了しましたので、今後は毎月1日、11日、21日に記事を出します。どうか、このブログのことを忘れないで読んでください。2~3年のうちに、「読んで、実行していて、本当によかった」という日が必ず来るのですから。

      

注)本著作物(このブログA-67に記載され表現された内容)に係る著作権は、(有)エイジングライフ研究所に帰属しています。

    エイジングライフ研究所のHPここをクリックしてください)

脳機能からみた認知症の初期の見わけ方(IEでないとうまく表示されません)

  http://blog.goo.ne.jp/quantum_pianist

 http://blog.goo.ne.jp/kuru0214/e/d4801838dd9872301e0d491cd8900f1a

 

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