昔、「格闘技通信」とゆー雑誌に「武道論」みたいな対談があった。
当時、アメリカでUltimate Fighting Championship(以下UFC)という金網の中で”何でもあり”の戦いをする格闘技イベントがはじまり、日本の格闘技界にかなりの衝撃を与えた頃で、UFCの第1回大会が開催されたのが1993年だから、今からもう16年前になる。
今でこそ総合格闘技の技術も進歩したため、レベルの高い攻防が多くなったが、初期のUFCは総合の技術体系や戦い方のセオリーがほとんど知られていなかったため、試合はさながら街のケンカ屋の殴り合いに近く、倒れている相手に攻撃を加えるなど、かなり凄惨な試合が続出し、その映像自体、相当なインパクトがあった。
その中でもパンクラス王者にもなったウェイン・シャムロック(ケン・シャムロック)や極真空手出身のジェラルド・ゴルドーのような名の通った選手も出場したが、そうした強豪をおさえ、優勝したのはグレイシー一族のホイス・グレイシーであった。
この大会でグレイシー柔術は名を上げ、一躍、格闘技界の中心となり、注目を集めた。
グレイシー柔術は”黒船”と恐れられ、事実、UFCの第2回大会には大道塾の重量級3連覇の市原海樹という日本格闘技界の実力者が参戦するも、1回戦でホイスに何も出来ずに敗れている。
一族最強のヒクソン・グレイシーは”400戦無敗”ともいわれ、日本で行われた試合でも高田延彦や船木誠勝といった当時のトップファイターたちが挑むも、まったく土付かずのままである。
K-1がはじまったのも、実はこの1993年。
1990年に崩壊した第2次UWFの流れをくむパンクラスが旗揚げしたのもこの年である。
アントニオ猪木がストロング・スタイルを追求して旗揚げした新日本プロレスは、異種格闘技戦で団体のカラーを打ち出したが、そこから独立したUWFは、より格闘技色の強いもので、パンクラスに至り、”Uの遺伝子”はプロレスとは決別し、総合格闘技への道を歩みはじめていた。
このように93年頃、日本の格闘技界はボーダーレス時代に突入し、さらにUFCやグレイシー柔術といった外国からの脅威に震撼していた時で、そうした中で、日本の格闘技界は生き残れるのか?
今、待たれるものこそ、日本人の魂ともいえる「武士道」―あるいは「武道」ではないか?・・というよーな論調だったと思う。
何せ16年も前の話で、しかも、さらっとしか読んでないので、それほどハッキリ内容は覚えていない。
だいたい「武士道」と「武道」って、そもそも違うんじゃない?・・とかゆー細かいツッコミもまず置く。
要は武道や格闘技をやる理由とは何か?
・・そんなテーマであり、そこで武道に求められるものとして、「用」「道」「美」というキーワードがあった。
街のケンカみたいなル-ル無用のUFCの試合を見て、野蛮だの、暴力的だのと非難するコトは簡単である。
しかし、そうした不意の暴力に対抗する護身術という目的がまず果たされなければ、武道としてイミをなさない。
武道やってます、でもケンカには勝てません・・ではやるイミがない。
闘って勝てる、強くなる、すなわち、使える技術であるか?
―これが「用」である。
しかし、いくら強くても、倒れてる相手に攻撃を加えるというのはどうか?
ただ相手を制する技術を覚えるだけではなく、心身を練磨し、自己を修め、人格を磨く。
常に謙遜に精進を重ねていく姿勢、求道精神を涵養する「道」。
「美」は、見て美しいものであるか?
今では総合の戦いにおける1つのセオリーとして認知されているが、馬乗りになって完膚なきまでに相手をボコボコにするマウントポジションからのパウンドのような技術は、単なる”弱い者いじめ”に見え、当時の日本人にとってはちょっと受け入れがたいものであったコトは間違いない。
まあ、親がそんなもん子どもに習わせたいかというと、絶対に「NO!」であろう。
戦いにおける美意識のようなもの・・とすると「道」に通じる世界になるので、より”技”という観点に重きをおいた技術体系の完成度・・とゆーコトではなかったかと思う。
つまり、当時は”馬乗りになって相手を殴る”・・なんてものは”技”ではない、技術として美しくない・・とゆー論調だったのだ。
相手を制する技術を教える武道家や格闘家たちがそれを言うのだから、おかしな話ではあるが、当時のUFCにはそれほどインパクトがあり、日本の武道界、格闘技界が我々がやってるコトは全く通用しないのではないか?・・とゆー危機感を感じるほどの大会であったとゆーコトだ。
なんにせよ、この「用」「道」「美」がなければ、「武道」とは呼べない。
まして「武の道」なのであるから
「道」なくして武道なし!
―これは絶対に譲れないものだと思うのである。
いくら強くても、相手に対するリスペクトがない選手が勝った試合後の態度などは、ちょっと目に余るモノがあるなあ・・なんて思う時も、よくあるんよねぇ・・。