怪しい中年だったテニスクラブ

いつも半分酔っ払っていながらテニスをするという不健康なテニスクラブの活動日誌

「格差大国アメリカを追う日本のゆくえ」中原圭介

2016-11-26 07:54:17 | 

題名だけで何を言わんか分ってしまいそうですが、本の紹介はいつも長たらっしくグダグダ書いてあってスルーするという声を聞くのでごく簡単に。

国家の盛衰を左右するのは礎を担う中間層が意識をもって社会を支えているかによるということを、ギリシャ、ローマ、中国(唐)の歴史を俯瞰することで論証している。
翻ってアメリカはどうかというと空前の株高好況の下、上位5%とそれ以外の格差はどんどん拡大してしまい中間層は没落してきている。このような格差拡大に対して行き過ぎた資本主義批判として「ウオール街を占拠せよ」などの運動が起こってきた。
そして大統領選挙におけるサンダース現象とついにはトランプの勝利!次の文章はこの本の最後に書いてあるところですが、非常に今の状況の暗喩となっています。でもそれがアメリカの民主主義の健全さの証と言えるのか…
「現在のアメリカでは、もともと弱者よりであったはずの民主党ですら、大企業とその株主である富裕層に近づいており、そうした行動への失望がオバマ大統領や民主党の支持率を引き下げています。
その結果として、共和党優勢の政治状況が続いていますが、長い目で見れば、アメリカの政治家がヒスパニック系などの品構想やその予備軍からの支持を必要とすることは明らかでしょう。
1930年代の世界恐慌をきっかけに、フランクリン・ルーズベルト大統領の政策にケインズ経済学が取り入れられ、それが1960年代まで続いたように、アメリカの民主主義が健全である限り、現在の富裕層偏重の政策や社会システムはやがて変更を余儀なくされるでしょう。」
あえて言えば世界恐慌に際してドイツでは世界一民主的なワイマール憲法の下ヒットラーが台頭してきたのですが、トランプはどうなんでしょうか。
格差を拡大して中間層を没落させたアメリカこそ「失われた40年」であり、日本の「失われた20年」は経済成長率を犠牲にして、雇用と社会の安定を守ったのであり、失われたのではないというのは小気味の良い啖呵です。2015年4月出版ですが、トランプ現象を考えるにもその底流にあるものをあぶりだしているようで示唆に富んでいます。
簡単に結論のさわりだけを紹介しましたが、詳しくは本を読んでください。250ページほどで図表も適当に入っていて読みやすい文章です。アベノミクスのいかがわしさを感じている人は一読をお勧めします。
コメント
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