いささか大げさな題名ですが、意味としては2つあるそうで、一つは世界史と日本史を融合させた意味での大世界史。もう一つの意味は歴史だけでなくて哲学、思想、文化、政治、軍事、科学技術、宗教なども含めた体系知、包括知としての大世界史。どっちにしても大風呂敷といえますが、新書本1冊では全く足らない。この本は「新・戦争論」の続編のようなものですが、これからまだまだ続編が出てくるのでは。
佐藤優の知力というか博識にはいつも驚きますが、専門のロシア情報に偏っていて、イスラエルと公明党への高い評価には強い違和感を感じています。でもそこを池上彰がうまくマイルドにしつつ分かりやすく解説してフォローしているので、そこはさすが池上彰です。
冷戦が終わって現在の世界は「新帝国主義」の時代に入ってきている。そしてその時に震源地となるのは中東。かつてのオスマン帝国の復興を目指す(少なくともエルドアン大統領は考えているのでは)トルコにペルシャ帝国の記憶をとどめるイラン。ここにスンニ派、シーア派の宗教戦争とイスラエルが絡んで覇権争いをしている。
因みに中国も中華帝国=明(清は満州民族の国なのでモデルはあくまで漢民族の帝国である明)の復興を目指して周辺諸国ときな臭い状況を作っている。
ヨーロッパでも経済的にはドイツ帝国ができつつあるのですが、ヨーロッパに混乱をもたらしているものは私は通奏低音としての「民族大移動」だと思います。ゲルマン民族大移動であのローマ帝国は滅んだのですが、塩野七生の「ローマ人の物語」を読むとローマが他民族の侵入によって徐々に体力を無くしてついに滅んでいく姿はヨーロッパの将来に暗い影を投げかけているような気がしています。
ウェストファリア条約によって国民国家の原型ができてきたのですが、移民の大量流入によって今やその国民国家の姿が問われているかもしれません。イギリスのEU離脱もEUという理念と国民国家という理念の対立が移民問題によって露わになったということでしょうか。すでに多くのイスラム教徒の国民がいる中で、このまま移民が大量に流入し続ければイギリスもフランスもそのうちにイスラム国家になりかねないのではと思ってしまいます。
この本では中東問題を皮切りに中国、ドイツ、そしてクリミア併合からのウクライナ問題とアメリカとロシアの対立、さらにはイスラム国の意味と現代の諸問題の底流にあるものを読み解いています。
今の風潮は陰謀論(昔なら何でもCIAの陰謀、今はもう少しソフィストケイトしていて内田樹などのアメリカの隠された意向のような議論になっているのでしょうか、孫崎亨の論も同様ですね)と反知性主義(実証性や客観性を軽視もしくは無視して自分の欲するように世界を理解する態度)に傾いているので、そこに流されないためにも世界史の知識が必要です。まあ、あまりにも世界を単純に割り切ってこうだと言い切る議論はわかりやすくて格好もいいのですが、少し考えれば当たり前なのですが、世界はそんなに単純ではなく分かりやすくもないということでしょう。
そして、世界史を学ぶことの重要性を説いていますが、世界史を学ぶには何を読めばいいかにも触れています。おすすめは「世界史A」の教科書とか。第一学習社のがいいそうです。AとBがどう違うか知りませんが、確か私が学んだのは世界史B。こちらは受験用なんですかね。Bの教科書をベースにした受験教材の「世界史B講義の実況中継」もよくできているみたいです。
佐藤優の知力というか博識にはいつも驚きますが、専門のロシア情報に偏っていて、イスラエルと公明党への高い評価には強い違和感を感じています。でもそこを池上彰がうまくマイルドにしつつ分かりやすく解説してフォローしているので、そこはさすが池上彰です。
冷戦が終わって現在の世界は「新帝国主義」の時代に入ってきている。そしてその時に震源地となるのは中東。かつてのオスマン帝国の復興を目指す(少なくともエルドアン大統領は考えているのでは)トルコにペルシャ帝国の記憶をとどめるイラン。ここにスンニ派、シーア派の宗教戦争とイスラエルが絡んで覇権争いをしている。
因みに中国も中華帝国=明(清は満州民族の国なのでモデルはあくまで漢民族の帝国である明)の復興を目指して周辺諸国ときな臭い状況を作っている。
ヨーロッパでも経済的にはドイツ帝国ができつつあるのですが、ヨーロッパに混乱をもたらしているものは私は通奏低音としての「民族大移動」だと思います。ゲルマン民族大移動であのローマ帝国は滅んだのですが、塩野七生の「ローマ人の物語」を読むとローマが他民族の侵入によって徐々に体力を無くしてついに滅んでいく姿はヨーロッパの将来に暗い影を投げかけているような気がしています。
ウェストファリア条約によって国民国家の原型ができてきたのですが、移民の大量流入によって今やその国民国家の姿が問われているかもしれません。イギリスのEU離脱もEUという理念と国民国家という理念の対立が移民問題によって露わになったということでしょうか。すでに多くのイスラム教徒の国民がいる中で、このまま移民が大量に流入し続ければイギリスもフランスもそのうちにイスラム国家になりかねないのではと思ってしまいます。
この本では中東問題を皮切りに中国、ドイツ、そしてクリミア併合からのウクライナ問題とアメリカとロシアの対立、さらにはイスラム国の意味と現代の諸問題の底流にあるものを読み解いています。
今の風潮は陰謀論(昔なら何でもCIAの陰謀、今はもう少しソフィストケイトしていて内田樹などのアメリカの隠された意向のような議論になっているのでしょうか、孫崎亨の論も同様ですね)と反知性主義(実証性や客観性を軽視もしくは無視して自分の欲するように世界を理解する態度)に傾いているので、そこに流されないためにも世界史の知識が必要です。まあ、あまりにも世界を単純に割り切ってこうだと言い切る議論はわかりやすくて格好もいいのですが、少し考えれば当たり前なのですが、世界はそんなに単純ではなく分かりやすくもないということでしょう。
そして、世界史を学ぶことの重要性を説いていますが、世界史を学ぶには何を読めばいいかにも触れています。おすすめは「世界史A」の教科書とか。第一学習社のがいいそうです。AとBがどう違うか知りませんが、確か私が学んだのは世界史B。こちらは受験用なんですかね。Bの教科書をベースにした受験教材の「世界史B講義の実況中継」もよくできているみたいです。