カトリック社会学者のぼやき

カトリシズムと社会学という二つの思想背景から時の流れにそって愚痴をつぶやいていく

神学講座2020 ー H・キュンクを読む

2020-01-16 15:30:48 | 神学

 神父様が他教会に移られて、神学講座の講義がなくなってしまった。そこで友人と語らって勉強を続けようということになった。専門家のいない勉強会は不安が無いわけでもないが、おしゃべり会の代わりくらいになるだろうということで、勉強会を始めることになった。
 何を読むかだが、とりあえずキュンクから読み始めようと言うことになった。キュンクを取り上げる特別な理由はないが、第二バチカン公会議が終わって半世紀しか経たないのに、第二バチカン公会議の精神を否定するような議論が強まっている今日、この公会議に大きな影響を与えた神学者の一人であるキュンクが何を言っていたのか、もういちど思い返してみたい、というくらいの理由しかない。

 

 

 取り上げる本は、『キリスト教思想の形成者たち ー パウロからカール・バルトまで』(ハンス・キュンク著 片山寛一訳 新教出版社 2014)である。原著は Grosse christliche Denker by Hans Kueng 1994 である。勉強会にはドイツ語に堪能な方もおられるが、著者は西欧中世哲学の著名な専門家なので、日本語訳のみを読むことにした。

 キュンクの評価は現在でも定まっていないようだ。かれは第二バチカン公会議においてエキュメニズムの思想を主導し、カトリック教会が「世界に開かれた教会」であることを宣言したことは高く評価されている。もちろんエキュメニズムそのものに疑念を持つ人も教会の中にもいるので、そういう人たちはキュンクの評価は低いだろう。
 もう一つキュンクの評価が分かれるのは、キュンクが教皇無謬説を退け、公会議首位説の立場に立つがゆえにヨハネ・パウロ二世(在位1978-2005)によって教会から遠ざけられたからであろう。異端ではないが「逸脱」とみなされたようだ。その後のベネディクト16世(在位2005-2013)による「叱責」と「賞賛」は興味深い話だが、それは勉強会のなかで触れられるかもしれない。その意味では本書が1994年に出版されているということを覚えておこう。キュンクは1928年生まれだがまだ健在なようだ。

 本書は、「神学への小さな入門書」と題されている。「比較的やさしいキリスト教神学への入門書」だという。つまり、カトリックだとかプロテスタントだとかいうのではなく、「キリスト教思想家」の紹介である。

 取り上げられる思想家は7人だ。パウロ、オリゲネス、アウグスティヌス、トマス・アクィナス、マルチン・ルター、フリードリヒ・シュライエルマッハー、カール・バルト だ。なぜこの7人かとか言い出したらキリが無いが、名前は知っているがちゃんと読んだことはないわれわれにとっては格好の解説書だろう。
 ところがキュンクは「序文」で、本書を神学の「解説本」として読んではならないと言っている。さてさてどうするか。まず、「序文」を覗いてみよう。

序 ー 神学への小さな入門書

 本書は「キリスト教神学への入門書」とされている。本書のタイトルは『キリスト教思想の形成者たち』と訳されているが、原題は直訳すれば『偉大なキリスト教思想家』である。つまり本書は「思想家」を通して浮かび上がる神学を取り扱っている。神学者の紹介というよりは、思想家の紹介という意図があるようだ。

 では、「偉大な」とはなにか。偉大というのは、、神学を作ったとか、後世への影響力が大きいとかいう意味ではないという。それは「それぞれの時代を代表する」からだという。さらに、「偉大な」とは、自分の理念ではなく、神の言葉を語っているからだという。教会史や世界史のなかの評価ではない。「キリスト教的使信」を語っているか、「み言葉の奉仕者」になっているかどうかが、「偉大さ」の判断基準だという。いかにもキュンクらしい言い回しである。

 本書が使う方法論は「叙述と批判」だという。7人の思想家は、たんに世界の新しい解釈の仕方を示してくれただけではない。かれらは世界を変えた。だから彼らの生涯や思想を描写し、要約することは簡単ではない。叙述は、かれらにとって「中心的であった事柄」を析出し、批判的に「結び合わす」ことだという。だから、本書は「彼らの著作を読むことの代用にはならない」(11頁)という。彼らの著作そのものに飛び込めと言う。

 そうはいわれてもわれわれにはなかなかすべて読むことは出来ない。ここはキュンクがこれら7人の思想家のどのような主張を「中心的な事柄」と捉えたのかに注目しながら読んでいきたい。7人の思想家の思想の内容を、神学を、理解することも重要だが、この勉強会の最後の目標は、結局キュンクの視点の特徴はどこにあるのか、を理解することにあるからだ。
 ちなみに、F・カーはその著『二十世紀のカトリック神学』(2007)のなかで、キュンク神学の特徴を、バルト論・エキュメニズム論・公会議首位主義説・教皇不可謬説批判・グローバリズム論として整理している。

 

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