テレビで見る限り、温首相に元気さはないからな・・・・・・・
中国首相の釈明に「事実でない。証拠ある」の報道=鉄道事故
中国の温家宝首相は28日、浙江省温州市内で発生した高速鉄道の事故現場に、発生6日目になって足を運んだことについて「病気になって11日間寝ていた」と釈明した。同発言に対し「事実でない。外国の首脳と会った写真も発表されている」と、首相の誠実さを疑う声が出た。香港メディアが伝えた。
温家宝首相はこれまで、大災害や事故が発生した際に、可能な限り早期に現場に駆けつけ、対策を指示すると同時に被災者/被害者の慰問、政府責任者としての見解の表明を行ってきた。23日夜に高速鉄道事故が発生し、5日目の27日まで現場に足を運ばなかったことが、むしろ異例だった。
中国政府は24日、張徳江副首相を現場に派遣した。張副首相は同日、温州市内で事故対策会議を主宰し「事故現場を早く整理せよ。復旧を急げ」と指示した。
事故現場で28日に行われた記者会見で、温首相は記者の質問に対して「病気になって11日間寝ていた。今日も、医者がとめるのを無理に振り切って来た」と釈明した。中国の指導者が、自らが病気になったと述べることは異例だ。
温首相の言葉が事実とすれば、17日から病床にあったことになる。しかし、温首相は18日、北京市内でイラクのマリキ首相と会談、19日には気候変化などにかんする会議を主宰、21日にはカメルーンのビヤ大統領と会談(写真)、24日には日本の河野洋平国際貿易促進協会会長と会談などの活動をこなしている。25日と26日には、活動にかんする報道がなかった。
温首相が「11日間、病床にあった」との発言後、「事実と異なる。その期間中も活動していた」との指摘が相次いだ。これまで「誠実な人柄」と評価されていた温首相の発言が、疑われることになった。
中国では2008年、山東省で72人が死亡、416人が負傷する鉄道事故が発生している。同事故では、張徳江副首相が現場に急行し、救助活動を指導した。1997年に湖南省で発生した鉄道事故では126人が死亡、230人が負傷した。
そのため、中国政府は23日に発生した鉄道事故は「過去の例と比較して、首相が現地に足を運ぶ必要がないだろう」と判断したとの指摘が出た。温首相が体調を崩していたことは事実としても、現地訪問を見合わせた「副次的な理由」にすぎなかったとの見方だ。
中国では2011年になり、高速鉄道建設に絡む汚職が明らかになり、政府の担当責任者である鉄道部長も解任された。このため、政府・鉄道部門に対する庶民の見方は相当に厳しくなっていた。政府側はしきりに「高速鉄道技術では世界のトップ」などと宣伝し、国民を満足させようとした。
しかし、6月30日に開業した中国高速鉄道のシンボルともいえる「京滬高速鉄路(北京・上海高速鉄道)」は当初から故障続きで、あらためて批判の声が高まった。
中国では、国内問題については「共産党・政府」への批判が、対外関係では「愛国主義」の世論が盛り上がる傾向が強い。そのいずれもが関係する「高速鉄道」の死傷事故について、中国政府は「国民世論の沸騰(ふっとう)」を見誤ったと考えることもできる。
◆解説◆
温家宝首相は、「病床にあった」と述べた期間中に、外国の要人と会談していた。ただし、外交日程は一般的に変更できず、体調面などで相当に無理をしても予定通りに進めることが多い。また、政府要人の会議も「テレビ会議」の形式で行うことがある。したがって、温首相が「うそを言った」とまでは結論できない。
問題のひとつは、中国の上層部の健康状態は「国家秘密」級の扱いになることだ。どの国でも似たような状況はあるが、中国では特にこの傾向が強い。中国人の意識には「上意下達」の傾向が極めて強く、トップにある人間は「気力・体力ともにスーパーマン」であることが求められる。健康面に少しでも不安があると、指導力がとたんに低下してしまうことが、背景にあると考えられる。かつては高齢の毛沢東やトウ小平が、長江を泳いでみせるなどのパフォーマンスをしたことがあった。
もうひとつの問題は、温首相の自分自身の発言に対する考慮だ。体調不良が続いていたとしても、すでに発表されている「活動」が指摘されることは、考えれば分かるはずだ。また、現場到着が遅くなったことに対して疑問の声が出ることも、事前に予測して当然だ。
中国では地位のある人間が、「初歩的なレベルで不用意な発言」をすることが時おりある。批判的な姿勢で報道するメディアに対応する経験が薄いため、自分の言葉が及ぼす「制御困難な反応」を推測する能力が乏しいとの意見もある。(編集担当:如月隼人)