「A LIFE~愛しき人~」が最終回を迎えた。ドラマという作品である以上,評価の視点や方法はいくらでもある。
まずストーリーであるが,主線は沖田と深冬のプラトニック不倫であろう。それを象徴するシーンはいくらでもあるが直接的なものは二人の視線の絡み合いと実際の抱擁シーンである。これはヤングアダルトコミックか少女コミックの類だ。
これに対し副線の壮大と沖田,院長の絡み,壮大と深冬の間の薄膜のようなしかし強い家族劇。これは劇画調の青年コミックともいえようか?
この二つのトーンのコミックを埋めるのが井川や柴田,弁護士の菜々緒らである。脇の線とでもいえる狂言廻しのような役どころだ。さしずめ「4コマ漫画」のような味付けであろうか?
玄人なら劇画調の青年コミックのほうが見ごたえがあるのは通常の感覚だろう。このドラマが後半になるにつれ青年コミックのほうが成功してきて,少年少女コミックは軽すぎてつまらなくなってしまうようになるのである。
このドラマの落ち着きのなさはかようか要素がからまりあっているからである。それが何とか視ることができるのは,芸達者の役者たちの力である。
所詮ドラマという虚構である以上,鑑賞後にいろいろと考えさせてくれるようなものか,単に娯楽に徹しているかが良いように思う。しかしてこのドラマはどっちであったろうか?
そうそう,さいごまで理解不能だったのがインチキな手術小道具だ。脳腫瘍の開頭術なら髪の毛を剃って行うものではないのか?それなのにそのシーンの小道具はいつもと同じ黄色みがかった皮膚なのである。にシリアスなシーンが興ざめになった!しかも不謹慎ながら笑えるところとなってしまった。