よもやま解体新書

山下和也の制作、見聞記. 北へ西へ南へ。

千葉市美術館の玉堂ワークショップ終了しました。

2016-11-28 09:39:00 | Weblog
千葉市美術館で開催されている「文人として生きる-浦上玉堂と春琴・秋琴父子の芸術-」関連ワークショップが11/26に開催されました。
今回は皆さんに模写をしていただいて玉堂作品について新たな発見をしていただくという趣旨です。応募者が20名枠に53名という人気のワークショップとなり、こちらも気合いが入ります!まずは墨を擦っていただきながらパワーポイントで文人画や水墨画の話を少しして、事前に熟覧させていただいてた館蔵の玉堂作品のディテール画像から玉堂作品にみられる多様な筆触を見ていただき、今回の模写対象の作品の画像を見ていただきました。今回の「雨褪臙脂」という作品は玉堂作品の中でも渇筆・擦筆という水を如何にきってぎりぎりのところで描くので水と墨をたっぷり含ませて描く水墨とは真逆の表現。枯淡の味わいのある作品です。ワークショップは三つの濃淡をまず皿につくり、そこから淡墨で描き始めてもらいました。前景、中景、後景と3つの空間に分けて捉え、前景から目の流れに沿って描き始めてまた全体を見ながら帰ってくる。墨も徐々に濃くしていきます。上げ写しと敷き写し(臨模)の二つの方法で模写をしていただきました。皆さん模写は初めてですし、水墨も初めての人も多かったのですが、果敢にチャレンジされていました。今回は原寸大コピーを使用して行っていただきましたが、A4程の作品なのに枯れた中に多様な筆致と手数の多さに皆さん悪戦苦闘。原画と同じく宣紙なので水を給水しやすく乾くと墨色が分からないという人も多数。水のきり具合も想像以上にコントロールが難しいことを実感していただきました。上げ写しで苦戦していただいたあとは手本を横に置いて描く臨模をしていただきました。2枚目なのと横に置きながら描くので全体感を掴みやすく皆さん運筆に勢いが出てきました!最後に今回の成果をボードに貼り付けてプチ講評。原寸大の手本はそのまま持ち帰っていただくので、また描いていただくためによく描けているところと今後の課題をひとつずつ説明しまとめとしました。今回のワークショップにあわせて私の作品もワークショップ会場に飾り、オマージュ的な作品も2点描いて展示しました。作品への反応も好評でした。ワークショップ終了後のアンケートでも、作品を見る目が変わったとか、初めての経験だがとても難しいことがわかったとか、また描きたいなどというご意見を沢山いただきました。2時間半のワークショップは短く感じるくらいあっという間の体感時間でした。
今回は模写を通じて作品の鑑賞の変化を促すことが趣旨なので技術を習得されたいと思う方には短時間では難しかったと思います。渇筆・擦筆の専門的な内容に踏み込んだ技術習得にはやはり教室的な規模で行わないと難しい。私の作品では渇筆・擦筆を使いますが、筆を何本も使ったり、擦筆用の筆をカスタマイズしてます。擦筆は紙に擦りつけるので筆を傷めますので筆を潰す覚悟でやります。私はそれでも硬い毛、柔毛、腰のある毛など使い分けています。限られた制約の中でも多彩に工夫して変化を生むことは可能なのです。玉堂作品は筆触による反復と変化の多様で重層的なリズムが生み出す絵画で、物質的な描写ではなく、自然の持つ感性的、宇宙的リズムの描出でなければ説明がつかないほど激しくめまぐるしい筆致の絵画です。
私の「松風」は真逆な位に筆数が一見少ないのですが、余白と筆致の関係や響きがどこか音楽的だなと直感することがままあります。しかし玉堂の作品はあれだけの筆致を用いながらうるさくなく静かに観ていられるので、そこがかえって凄いと思います。多様な変化が見るものを飽きさせない玉堂、描かないことでより拡張される余白というとらえどころのない空間の豊さによる絵画。別のベクトルの作品なので比較のしようがないのですが、限られた中でも筆触という東アジアの芸術の伝統が根をはっていると私は思います。玉堂展はこれから展示替えです。後期は「山紅於染」という渇筆と彩色の擦筆の組合せによるさくひんが出品されます。そして「雨褪臙脂」もでます。是非ご高覧ください。

そして私の個展も京都で開催中ですので是非足をお運びいただけると幸いです。12/17の最終日遺がいはアポイントメント制なのでギャラリーに御連絡お願いします。

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