よもやま解体新書

山下和也の制作、見聞記. 北へ西へ南へ。

山水画雑感

2011-05-23 21:20:57 | Weblog
展覧会が大津(滋賀)から東京に移動しました。
作品を描いていると、考えが整理されることもあれば、逆にシャッフルされることもあります。大津展で自分が取り組んだ「山水」をはじめて眺めてみた初日、「山水」に対する自分の捉え方がシャッフルされてしまいました。
展覧会によせて、僕は下記のような文章を寄稿していました。

・山水画という画題に取り組むということ
 画題という括りをあえて使うのは、それをひとつのものさしとして日本画を検証し、可能性を探ることが目的です。古典的な画題にあえて取り組むのは、日本画を再構築するためのひとつの方法です。
 山水画という画題は西洋にはありません。山水という言葉もなければ思想哲学もありません。山水画は東洋における世界観、宇宙観を表現しています。山水画は宗教芸術とは異なりながらも、世界をどうとらえるかという点において、どこか通じるものを感じます。そして、日本の山水画は、本流である中国とは別の個性を持った展開をしている点でも、興味深く感じています。今回の試みは、私にとって、現在における山水画の可能性に対する検証のはじまりとなるものです。

歴史的なことやその言葉のもつ意味を比較し、違いを認識することは大切なことだと思います。しかし、それとは別に、風景画と山水画との違いや中国と日本の山水画との違いを直感的にみて感じられるのは一体なぜなのでしょう。何をものさしとして、線引きするのでしょう。
会場に立ち、ただただ眺めていると、なんだかあらためてそう思いはじめたのです。
僕の描いた山水画は絵の中から生まれた山水です。手法としては私のこれまでの制作と同様に、いくつかの既存のイメージや古典技法を組み合わせてひとつの統一した画面をつくる。既存のイメージ(絵画や写真)の部分模写を行い、それらを融合させてあらたな作品を作るというものです。室町から近代までのイメージを組み合わせているので、山水から風景へと移行してゆく作品も含まれています。陳列している作品達のその幅で、見ていてふと思ったのです。これは、山水画なのか?

つづく

絹に描いて・みる

2011-05-18 22:46:26 | Weblog
「どうやって絹に作品を描くのですか?」
会場にいる僕に男性が質問しました。「この作品は、まず最初に絹を木枠に張り、滲み止めをしてから絵具で描いています。ここには、最後に紙で裏打ちをして、絹と紙が一体になったものをパネルに貼り込んだものが並んでいます。」

絹に日本画を描くことは、ある時期を境に一般的には減少しました。
昔は紙を継がなければ大きな作品が描けなかったのですが、制作側の需要に応えて紙をつくる職人が工夫しました。作品の巨大化や岩絵具の重ね塗りによる重厚な作品に対応しました。厚くて透けずに丈夫な紙のおかげで、裏打ちせずともパネルに貼り込んで簡易に描くような事が、美術大学でも教えられ、普及しました。便利なもののかげで、手間なものはおざなりになってしまいます。
絹に描くことは、手間がかかります。慣れてしまえば気になりませんが、木枠に貼り込んで透過する状態で描き進めます。裏打ちを必ずしますが、素人では難しく、表具師にしてもらう事が一般的です。
僕はこれまで絹に作品を描く機会に恵まれ、手織りの絹にもいくつか描いています。絹に描けば、絹に描く面白さだけでなく、紙の面白さも発見するし、その逆もあります。今回の展覧会では3種類の絹を使っています。それぞれ風合が違うので、このチャレンジは描いていてとても楽しかったです。
展覧会をみて、絹に興味を持ち、描いてみたいと思う人が増えると嬉しいです。

展覧会はじまりました。

2011-05-18 22:45:20 | Weblog
数寄和 大津での展覧会がはじまりました。まず、会場の空間と作品がここちよく並んでいて、とても嬉しく思いました。何故でしょうか。作品自体がなんだかとても心地よさそうに見えたのです。
数寄和 大津はゆっくりと作品と向き合えるやさしい光の空間で、昼と夕方でまた違った趣があります。ちなみに僕は、昼間の障子越しにはいる柔らかい光の下で、のんびりと作品を眺めるのが好きです。
今週の土曜日が滋賀での最終日となります。是非、御覧いただきたいと思います。

展覧会のおしらせ

2011-05-12 00:08:55 | Weblog
あっという間にG.Wも終わり、5月も半ばになりました。
今週末から新作の個展が、滋賀と東京を巡回します。
いつもお世話になっている数寄和さんでの展覧会となります。
展覧会情報は数寄和さんのホームページに詳しくあります。

http://www.sukiwa.net/

山下和也展 絹に描く3

2011.5.14(土)~5.21(土) 11:00~18:00 火休 初日16:00~ オープニング 

数寄和 大津(滋賀・石山) 

2011.5.26(木)~6.2(木) 11:00~19:00 無休

数寄和(東京・西荻窪) 


この展覧会は数寄和さんが企画されている、「絹に描く」というシリーズの展覧会です。第一回目は東北(宮城)の及川聡子さん、第二回目は関東(千葉)の西川芳孝さん、そして今回の第三回目は関西(大阪)の山下和也となりました。大阪とは言っても、先月に、7年過ごした滋賀の湖西から、実家の近くの大阪に移住したところで、さらに、今もほぼ毎日滋賀に通っているので、さほど滋賀から離れた気がしないというのが正直なところです。

この展覧会のシリーズのみどころは数寄和さんのホームページにもありますが、「絹に描く」ということです。
今回は3種類の絹を使い描いていますが、描き方はそれ以上に変化しています。また、あらためて、山水画という画題に取り組みました。是非ご高覧ください。