よもやま解体新書

山下和也の制作、見聞記. 北へ西へ南へ。

とある日本美術感

2008-07-26 23:14:27 | Weblog
東京に行ったついでに夜間拝観で対決 巨匠達の日本美術に行きました。
あれだけ御馳走並べると、どれもじっくり味わうのは難しいけど、ぐるり日本美術の中の自分好み再発見ツアーまたは名所巡り?という感じの展観でした。たっぷりだけどあっさり。後味は極上の上汁スープ飲んだ感じですかね。全部ちゃんと食べるとまんかんぜんせきでしょうか。

今回何度か気になったのはりん派と茶碗と芦雪、松林図、文人画、円空の十一面観音。あれだけアクの強いものがあったせいか、さらっとなんでもないものがとてもよく見えた。そしてこのさらっとしたものの中にある風格としなやかな存在感にあらためて日本美術の発見をみた気がした。

大学の博物館では林司馬の展覧会が行われている。司馬先生は模写室を作った方で、先生亡き後も僕達は先生の肉筆手本から模写や日本画の第一歩を学んでいる。出品はスケッチや簡素な巻物が多いがジワジワと心地よい。柔らかで優しく、この品と風格は僕達が親しんだあの手本達であり、どれも司馬先生でした。

確たる自分でありながら、無私の世界が広がっていて、作品存在そのものが自然になるという感覚。
私という存在無く無私は有り得ないという事なのですね。

ワヤン・クリ ~ジャワ島の影絵~

2008-07-23 19:18:37 | Weblog
神戸のポートターミナルにあるStudio Q2でガムランと影絵の公演を見に行く。
ガムランはランバンサリという東京に拠点があるグループで、題名のない音楽会やケンタッキーのCMで演奏したりしているそうです。ガムランはバリ島に以前行った時に聞いて依頼の生演奏で、影絵は今回初めて観ます。
影絵を操る人形使いはジャワ島で数々の受賞をされ、大学教授であり、今最も旬なプルボ・アスモロさんの初来日となる。

前奏曲でガムランが1.5時間、影絵が2時間の公演。
ガムランは踊りとの組み合わせの他に影絵と演奏する事もひとつらしいのだが、本物はラーマヤーナの物語を夕方から明け方までか、一日中行うらしい。なので、今回はその長い物語の一部を公演する。
面白いのは影絵は影絵師一人が全部の役を演じる。楽団に合図を送りながら台詞や動きをアドリブでやる自由さがある。光を計算した影の使い方が巧妙で、人形の動きも思いのほか緩急が激しく、宙空にクルッと人形を放り投げてキャッチしたり、人形で人形を受けたり弾き飛ばしたり。
また、影絵はスクリーン側と裏側を自由に行き来してよく、現地の人は寧ろ裏側から見るのが主流で、極彩色の人形や人形使いの動きを見るのだという。
実際に横から見ると人形使いは両手で自在に人形を操って目をキラキラさせている。まるでウルトラマンとバルタン星人を両手に持って遊ぶ子供のような顔付きで完全に別世界に入り込んで楽しんでいる。

劇中、半ばで物語を一休みする休憩劇みたいなものがあり、日本語や日本の歌に合わせて人形を操り歌うパフォーマンスも披露された。

はじめてみた影絵は私の全く想像していないものでした。

あと、勝手に客層も私なりに見ていて楽しかったです。普段行かない所へ行くとなんか不思議な感じですね。

模写拝観

2008-07-19 22:42:08 | Weblog
京博の常設の特集展示で杉本哲郎のアジャンタとシーギリヤの模写が出品されている。アジャンタは蓮華手菩薩と2点、シーギリヤは6~7点だろうか?これがなかなか面白い。アジャンタの件の壁画は過去の修理の際にニスを塗布したため、彩色がニス色に覆われ、私達が今観る画像などは本来の色を有していないそうだ。それでこの模写と荒井寛方原画の木版(国華に掲載)は彩色が確認出来る数少ない資料となっているらしい。青蓮華に青と白の腰巻きを巻く姿はアフガン系の仏画にみる感覚をふと思い興したがが、描写は杉本作品の雰囲気と融合して、忠実に写すというよりも結果として感覚的な描写印象の模写といえる。

奈良博では法隆寺展で金堂壁画の模写が一堂にみられる。焼失後の模写でコロタイプ印刷の上からの模写だが、非常に短期間で仕上げている。
飛天とはいえ本物も出品しているので、壁画の質感や描線の支持体への様子等もイメージできる。模写にあたった画家は常は制作の画家も多いので、やはり馴れない画家もいたのだろうとは推測される。
作家や壁によりいろいろ差異はあるが、現地の状況ではなくてもこうして原寸大の肉筆の壁画群をみるのは面白い。
六号壁は阿弥陀浄土図だか、今回よく見てあらためたのが、六号壁は画面上部まで岩や山の景が描かれていて、しかも他の壁画に現れる山と色が違い、赤い事。供養菩薩の数が思ったより多い事。身光もある事。台座が奈良時代の繍仏の釈迦説法図の背もたれに似ている事などなど・・・。
いつもの小さな図版じゃなかなか気付かなかったけど、あらためてこんな絵だったのかな~と、薄目でぼんやり脳内で勝手に彩色復元してみる。なんて高密度の空間なんだろうと思うと同時にこの模写の存在意義を感じる。しかし、模写としての存在感と作品としての存在感を感じる時、この作品は何だろう。何をかたらんとしているのだろうと、やはり似て非なるこの作品に対して感じるのです。実際、模写によって原本同等または別の美やそれを超える美を生み出すのはたやすくない。
法隆寺壁画の模写は部分を含めて一体現在、この世にどのくらいあるのだろう。この模写壁画群の存在はやはりなにか不思議である。

こんちきちん 2008

2008-07-16 21:49:50 | Weblog
祇園祭は祇園祭大好きな社長の指揮の下、STAFFで納涼する。
雨あがりと平日なので人の数は歩きやすい程度に賑わっている。稀に浴衣を着るチャンスだから、浴衣姿の女性達がそぞろ歩いてみるに楽しい。

六角通りのとある町屋の玄関には鈴木松年の水墨に金泥の大作屏風がある。
二匹の狼が叢に在り、月が浮かんでいる。狼というと岸竹堂の絵を思い浮かべたが、狼ってこの時代、なんで描かれたのかな?
大学の時に博物館の学芸員の方が「あの絵、いいよ。」と言っていたのですが、場所がわからず仕舞だったのですが、まさかお目にかかるとは思いませんでした。また道中、浴衣姿の大学の先輩にもバッタリお会いしましたが、相変わらずお綺麗でしたね。
今年はいろいろお目にかかれてなかなか素敵な宵宵山でした。

大阪滋賀東京

2008-07-07 15:15:36 | Weblog
免許更新に行ってきました。久々に琵琶湖大橋を自転車でかけ登り降り。
昼過ぎには大阪日本民藝館に行きました。インドの布の展示ですが、取り分け私のお目当てはカンタというベンガル及びバングラデシュの刺繍。刺しすぎなのか布はよじれてますけどー、このチクチクはなんかグッときます。子供が刺したのか、ヘタヘタのもあったけど、それもご愛嬌で、よい作品が寧ろ引き立ったように思います。他に芹沢、浜田の作品は勿論、そばちょこコレクションや米英スリップウェアの展示があって良かったです。
私は万博世代ではないけど、今のこの万博記念公園には民博や国立国際美術館があったのでよく来たので、くる度に懐かしく、あぁ今日もタロウは立っていると仰ぎ見るのでした。

そこから滋賀会館のレイトショーでピーター・グリーナウェイのレンブラントの夜警を観る。いかにも濃ゆ~いグリーナウェイ節炸裂な感じでした。

土曜日は東京へ。第一目的は上野の井上雄彦展。朝、9:30から整理券を配っているとネットにありましたが、その時間にはかつてない程の長蛇の列!整理券貰うのにそこから1.5時間かかって、観ると19:00~20:00の券。こりゃ凄いありえへん動員数。
とりあえず近場の東博に行って常設と東洋館に行く。常設には曾我直庵の水墨の龍虎屏風。横には海北友松の山水屏風が並び、しばし眺めいる。
東博を出ると出光美術館へ。ルオーの大回顧展。これだけまとめてみるのは初めてでした。ミセレーセの表紙の顔2点はいかにもルオーな作品。あらためて並べてみると、またひとしお。見終わると休憩室横のやきもの部屋に。ここはカケラが多いけど、唐津の見事な松の大皿や李朝もある。ひと休みして資生堂ギャラリーと西村画廊の町田久美さんの個展に立ち寄り、華雪さんの個展を観に行く。華雪さんは篆刻の作品集で知って以来、京都や大阪で何度か観ている。私は井上有一の書をいつも頭に思い浮かべるが、華雪さんの作品は勿論それとはまた違う。今回は展示も良かったが、展示の前にやはりこの目の前にある墨跡としばし対話したくなる。そうしたくなるのは華雪さんの作品が私にはまだ謎だからです。詩でなく、字を書いたものは、かろやかにそして印象は強く、ただ一枚のヒラヒラとした物体なのに、すっきり潔く、それでいて謎に満ちてそこにある。あのヒラヒラの空間が、なんとも自然に見える余白の持ち様が、僕にはなんだか美しい。会場の片隅で静かに本を読んでおられたので、話したかったけど、時間がないので、さっとその場を去る。白い空間に黒のドレスでち
ょこん
とそこにいる姿は、空間に 、 を打ったような、そんな印象を僕に残していった。

で、上野に行くと相変わらずの長蛇の列。入れたのは21:30!!
でも、良かったですよ。楽しかったから。1時間も見なかったけど。悔いなく滋賀に帰れます。

おしらせです。

2008-07-02 23:52:00 | Weblog
三井寺付近にある大津市伝統芸能会館で「妙なる調べ」という笛と鼓のコンサートを聴きに行きました。能の観劇ではなく、完全に音楽だけなのでなかなか面白い体験でした。二人の流派もキャラも違う笛の音が好対象で、奇才と堅実な実力派の組み合わせは実に妙なる感じ。ピークのところはもう音と演奏者がいれこになっていて、一種の狂いの世界が広がって感極まる感じ。舞台の臨場感というか、この現場感覚は実に気持ちいい。ライブはいいねとあらためて思いました。この狂いの空間を感じながら、龍の姿が私の脳裏に過ぎった。龍とは何か。その尻尾がみえたような気がして、龍が自分のモチーフとして降りてくるのを静かに感じました。

ところで、滋賀の石山または唐橋前付近に数寄和大津というところがあるのですが、そこで今度ゲスト出品および出演します。
若山卓さんという武蔵野美大の院卒された作家の個展ですが、縁あって10年振りの再会となります。去年の日本画滅亡論展といい、武蔵野美大の方々とはなにかとご縁をいただいております。
数寄和大津での若山さんの個展は下記内容です。↓


若山卓 「像(かたち)」
会期:8/17~8/31 
11:00~18:00 火曜休み

詳細はWebで↓
www.sukiwa.net/otsu


それで、私の出品は参考出品で1点なのですが、関西では初披露になる作品です。8/17(日)13:30から若山さんとギャラリートークします。

トークは数寄和大津のスタッフが私達に話して欲しいテーマを決めてくれましたが、「良い絵とは?」という議題で若山さんとトークしていきます。
これ、素朴かつ難しいテーマだなと思いますが、故に面白いなと思いました。二人が良いと思う絵を具体的にあげて、その中から議題の「良い絵とは?」という輪郭を浮かびあげていく共同作業?あるいは共闘作業?
若山さんがどんな作品を選んでくるか、とても楽しみです。

お盆の時期ですが、お時間のある方は是非、お越し下さい。