よもやま解体新書

山下和也の制作、見聞記. 北へ西へ南へ。

能海士山本能楽堂

2013-03-11 20:01:03 | Weblog
大阪の山本能楽堂に海士の演目を見に行きました。今回はダムタイプの藤本さんの照明とコラボレーションでLEDライトによる演出が行われていました。個人的には能という舞台制約の中で、光というかたちで参入しているというのは面白いなと思いました。安易でも過剰でもやらしくなるから、とても難しいように感じましたが、とても可能性のある内容だったと感じました。また、アフタートークでは山本さんの演じる側からは、普段より少し薄暗闇の中で演じるからか、聴覚などがいつもに増して研ぎ澄まされたと言っておられました。また、この演目では曲線の動きが全体的に意識される演目だそうで、龍女や海女など水が動きの中でもひとつのイメージとなっているようです。観客側から見えているものと演者側から見えているものの世界の違いも大変面白いなとトークによって改めて感じる事ができました。今度は雪の演目を光と陰の演出によって試みたいと言われていたのも大変興味深かったです。
能楽は物語を追っていても、イメージを誘発する身体の動きや意匠が一体となって別次元の空間を作り出していることを実感する。見処となる箇所では言葉に尽くしがたい美的体験がそこにある。 数年前には眠たくて仕方なかった能が、今はとても魅力的でその世界に引き込まれている。

広島と岡山へ

2013-03-11 19:12:56 | Weblog
先日、広島県立美術館の船田玉樹展と岡山の竹喬美術館の入江波光展を日帰りではしごした。
船田は速水御舟、小林古径の弟子で前衛日本画家。個人的には氏の水墨の仕事が好きで、この度の展覧会は練馬で開催されている時から楽しみにしていた。作品は予想以上の充実だった。また、関連作品の御舟の芥子の花の作品がとても印象的だった。船田の作品には広島的なものが感じられた。これは東京や京都画壇にはない、ある種の広島臭さなのだが、丸木位里などの作品とどこか同じ空気を感じる。岩橋英遠や平山郁夫とは違う広島出身画家の匂いとでも言おうか、そのようなものを感じる。そして水墨の作品はやはり良かった。

入江波光の大規模な展覧会は実際はじめて見る。非常に充実した内容で摸写から大作、小品まで波光の卓越した技術力にやられてしまう。波光の作品は基本的に水墨か墨画淡彩である。この淡彩が、なかなか丁寧で効果的で、発色も好く深さがある。大作であっても淡彩である。この淡彩は盟友の村上華岳とは違いクールである。波光の作品にはゆらぎがない。華岳の作品は常にゆらぎの中にある。波光への感動と華岳への感動は全く別なのである。
当日は、森山知己さんのお話があり、こちらもなかなか興味深い内容だった。美術館とコラボレーションして生徒達と摸写を行ったのだか、制作のための摸写の取り組みは、寧ろ失敗を重ねながら作品との対話を深めるも久々にお会い出来て嬉しかった。