物理と数学:老人のつぶやき

物理とか数学とかに関した、気ままな話題とか日常の生活で思ったことや感じたこと、自分がおもしろく思ったことを綴る。

量子力学の名著

2018-05-01 10:57:56 | 物理学

量子力学の名著といえば、Diracの『量子力学』、Pauliの『波動力学』と朝永の『量子力学』の3つだといわれる。

その中で一番読んだことがあるのは朝永の『量子力学』であるが、それでも第1巻だけであり、第2巻はちょっとは読んだが、あまり全体を読んではいない。

Diracの『量子力学』は日本語訳を大学院の講義で数年はじめの数章を学生に読ませて解説をしたことがある。一番読んだことがないのはPauliの『波動力学』である。

量子電気力学としてセミナーを大学院時代にしてもらった、Handbuch der Physik 叢書のK"allenの"Quantenelektordynamik"(Springer)の前の書がまさにこのPauliの『波動力学』であった。

もっとも、それはその書を何十年も以前にPauliが書いて同じSpringer社の古い版のHandbuch der Physik 叢書に収録されたのだが、再度、新版のHandbuch der Physik 叢書に再録するにあたり、その文章をPauliが見直したそうだが、ほとんど修正しなくてよかったという。

これを私の、大学での先生であった、Oさんは大学時代に何回か読んだと聞いた。これは多分単独で読んだのだと思う。これは名古屋大学でのOさんの先生である、坂田昌一先生がこのPauliの『波動力学』にもとづいて講義をされていたためかもしれない。

そういえば、Oさんはエリー・カルタンの『スピノール理論』をフランス語と知らないで読もうしたら、読めなかったが、それがフランス語だと友人に教わって急遽『フランス語3週間』でフランス語を学び、『スピーノル理論』を読んだとも聞いた。

そのことを聞いたので、数学科の図書室に出かけて、このエリー・カルタンの『スピノール理論』の講義録をコピーして、いまでももっているが、実際にこれを読んだことはない。

今では、この講義録の英訳がDoverから出ている、それで英訳の方も購入して持っているが、どちらもあまり読んだことはない。これは小著『四元数の発見』(海鳴社)を書くときに四元数と2行2列の行列の対応させるというところだけ参照したことはあるけれども。

Pauliの『波動力学』の本はベクトルを表すのに字の上に矢印をつけるという私などから見たら、古めかしい記述法であるので、すくなくとも、ここは太字でベクトルを表すように変更すべきだと思っている。

Pauliの『波動力学』は今では日本語訳も英訳もでているが、そのベクトルの表記が変更されているのかどうかは覚えていない。

(2021.10.29付記:残念ながら日本語訳がそれほど普及したとは思えない。もっともその訳は貴重なのではないかと思う。この訳はほとんど私と同年代の堀節子、川口教男夫妻が訳をされているが、その訳書はもっていない)

と、ここまで書いて英訳を見に行ったが、ベクトルは字の上の矢印で表されており、太字は演算子を表しているようである。演算子の表し方を別に考えて、太字はベクトルを表すことに譲るべきであろう。

いまでもときどき字の上に矢印でベクトルを表す人がときどきいるが、これは私にとっては耐えがたい。「絶対に」ベクトル表記を太字に変えるべきだと思っている。

(2018.5.3付記)  どうもベクトルを字の上に矢印をつける方法で表すことは好きになれない。高校生のころにはベクトルなど数学のテクストに出てこなかったが、物理のテクストには出ていたと思う。

小著『四元数の発見』(海鳴社)では最小限だが、字の上に矢印をつけた箇所が2,3カ所ある。これはしかたがなかった。『数学・物理通信』での投稿で字の上に矢印でベクトルを表した論文が投稿されたときには、すべて太字に変えてもらったことがある。


(2021.10.29付記)村上雅人『なるほどベクトル解析』(海鳴社)が太字の上に矢印をつけた記号でベクトルを表している。

これは太字(ゴチック)のベクトル記号に代えるべきだと思うのだが、学生時代にベクトル記号で苦しんだことのある、村上さんの苦心の工夫らしい。しかし、この記号はいただけないと個人的には思っている。

もっともこれはベクトルの表記の問題だけで、その内容は他のベクトル解析の本と比べてぐっとわかりやすい。ひそかな名著だと思うが、多くの方はどう感じられているのだろうか。

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