なんとか時間をとっていくつかの原稿を書きたい。
いま拾い読みしている金重明『13歳の娘に語るガロアの数学』(岩波書店)のpp.28-31の書き方に不満を感じている。
それに以前に出版された長沼伸一郎さんの『物理数学の直観的方法』(通商産業研究社)の「e^{i\pi}=-1の直観的イメージ」にも不徹底との感じをもっている。
前に購入した本の宮腰忠『高校数学+¥alpha』(共立出版)の序文の冒頭部分に、著者が書いてあるのだが、
「ある年の最初の授業は遅刻者が多く、彼らを待つ間基礎的なことでも話をするかと、負数の演算について話し出しました。”マイナスのマイナスはプラス”、負*負は正”だね。なぜだ。その日はそれらを解明するするつもりはさらさらなく、”そうなるように数学は創られてあるのだ。文句あっか”てな調子でやったら、なんと馬鹿受け。その日の授業はチョウ(超)ノリノリであった」
とあります。これは数学を教える人としては、すこし情けないというのが私の偽らざる気持ちです。
こういう反応がまだあるのなら、そういう反応がなくなるように私たちの努力がまだまだ足りないということです(注)。
(注)中学校の数学の時間に「負*負=正」とか「正*負=負」とか教えられるわけですが、それが高校生くらいになって複素数を学び、その極表示を知れば、きちんとそれが合理的に定義されていたことを知ることができる。
中学校ではちょっと難しいかもしれないけれど、数直線を導入してマイナスの数をかけることが、この数直線上の原点の周りの180度の回転であることがキーポイントです。
数直線上の正の部分は原点の周りの180度の回転によって負の数となります。またこのこのとき負の数は正の部分に回転で移っていきます。このことは正*負=負、負*負=正を表しているわけです。
またもう一度、数直線を原点の周りに180度の反時計方向の回転をすれば、数直線上の負の数はすべて負と負の数の掛け算が正の数を与えることは自明です。
このことをきちんと説明するのが、複素数の極座標表示での積の定義です。このことは高校生くらいになれば、十分にわかるはずと思っています。