美濃屋商店〈瓶詰の古本日誌〉

呑んだくれの下郎ながら本を読めるというだけでも、古本に感謝せざるを得ない。

コンロンの山並みを越えて

2010年08月03日 | 瓶詰の古本
   コンロンの山並みを越えて、憂愁の一隊がやって来る。珍奇、幻妖の品々が薄絹につつまれ運ばれた。美髯豊かな男どもは、峨々たる山々をものともせず、山神あるいは虎、熊、獅子の呪い、祟りを蹴散らし、長い旅をして来たのである。
   里の者どもは、一人残らず大通りに出迎えた。喜びは街中に溢れ、見るもの、聞くものことごとくが宝物であった。手に触れては笑いさざめき、話を聞いては躍りまわり、街は煌々と輝き渡り、人々の顔は華やかな松明となる。
   そこで手に取るもの、異国の財宝。桑虫の衣装、白銀の輪軸、処女の眸の遠眼鏡。紫水晶の影法師。千年を経た瑠璃の溜息。
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