美濃屋商店〈瓶詰の古本日誌〉

呑んだくれの下郎ながら本を読めるというだけでも、古本に感謝せざるを得ない。

地下鉄で見た夢

2013年04月14日 | 瓶詰の古本

  地下鉄の座席で睡り込んでいるうちに、こんな夢を見た。大道がある。それは、片田舎の土埃舞う大往還なのか、町々を結ぶ大街道なのか。とにかく、広々として真っ直ぐな道がある。そこに、人影を見ない。人語は聞こえず、ただ静かな広い道が陽の光を浴びている。そして、ふと気がつくと、わきへと逸れる枝道がある。油断すると見過ごしてしまうほどのひっそりとした小道がある。
  その幅狭い小道に足を踏み入れ、一歩、二歩と先へ進んで行くと、いつの間にか道の両側には色とりどりの品物を揃えた様々な商いの店が連綿として軒を連ね、人々がにぎやかに往来している。談じつつ笑いつつ、老いた人、若い者、男も女も伸びやかに楽しそうに行き交っている。さっきまで歩いて来た幹線の大道は整々としてひどく物寂しく、だからなおのこと、この小道の無限に続く雑踏は、生まれてこの方味わったことのない大きな幸福感を与えてくれるようだ。

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