美濃屋商店〈瓶詰の古本日誌〉

呑んだくれの下郎ながら本を読めるというだけでも、古本に感謝せざるを得ない。

かくて明けゆく空の気色(吉田兼好)

2009年01月01日 | 瓶詰の古本

   つごもりの夜、いたう暗きに、松どもともして、夜半過ぐるまで人の門たたき走りありきて、何事にかあらん、ことごとしくののしりて、足を空に惑ふが、暁がたより、さすがに音なくなりぬるこそ、年のなごりも心細けれ。亡き人の来る夜とて魂祭るわざは、此の頃都にはなきを、あづまのかたには、なほする事にてありしこそあはれなりしか。
   かくて明けゆく空の気色、昨日に変りたりとは見えねど、引更へ珍らしき心ちぞする。大路の様、松立て渡して、花やかに嬉しげなるこそ、またあはれなれ。
   (徒然草 第十九段)

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