つごもりの夜、いたう暗きに、松どもともして、夜半過ぐるまで人の門たたき走りありきて、何事にかあらん、ことごとしくののしりて、足を空に惑ふが、暁がたより、さすがに音なくなりぬるこそ、年のなごりも心細けれ。亡き人の来る夜とて魂祭るわざは、此の頃都にはなきを、あづまのかたには、なほする事にてありしこそあはれなりしか。
かくて明けゆく空の気色、昨日に変りたりとは見えねど、引更へ珍らしき心ちぞする。大路の様、松立て渡して、花やかに嬉しげなるこそ、またあはれなれ。
(徒然草 第十九段)
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