9日は,信託の研修最終日でした。信託学界では著名な学者を呼んでの講義です。一研究会に著名な学者が来るという事は研究会の力を表していると思います。さて,講師の論述はスタンダードで明快でした。スタンダードとは,信託にとって譲れない基本構造である。①委託者からの財産分離を信託の成立要件とすること②受託者に対する規制を厳格にすること。とりわけ批判的なのは,信託契約を契約により成立し,効力を有するとしたことである。信託法第4条1項。さらに,自己信託を可能にし,信託宣言といって「以後私のこの財産を信託します。」と言うだけで効力を発生させたこと。法4条3項に,特定の者が一定の目的に従い自己の有する一定の財産の管理又は処分及びその他当該目的の達成のために必要な行為を自らすべき旨の意思表示を公正証書その他の書面又は電磁的記録・・・によってする方法 とあります。つまり,法は契約だけで成立し,特定の文書の作成のみで成立するとしていて,財産分離を効力要件とはしていないのです。・・・こんなの信託じゃない! と言ってました。このような状態だと,委託者本人の財産なのか既に信託された財産なのか第三者からは判別がつきません。さすがに,自己信託の場合は,後から期日を遡って設定できないように,公正証書あるいは受益者に対する確定日付のある証書によって通知されたときとしているが,自分の物と信託した物がごっちゃになっている場合,例えば,債権者が預金差押えをして,銀行も差押えに応じようとして処理をしたが,受託者(自己信託の場合は差し押さえられた人自身)が,いやこの預金は,信託されているから差押えは無効だよ,ほれこのとおり,公正証書や確定日付のある書面があるじゃないか。とされたらどう収拾をつけるつもりなのでしょうか?
聞くところによると,受益証券発行型の信託を念頭に置いて,少しでも早く資金の回収を図るために対抗要件は後付けで良いとしたようです。でも,これってあまりにも特定の信託(特定のスキーム)に配慮しすぎた規定であり,私も到底理解できません。信託は,要物契約(物の移転・分離を要件)にすべきです。
次ぎに,受託者の規制です。確かに,成年後見人制度でも同様ですが,疑って掛かるべきは受託者の良心です。人間ですから,何時でき心が起きるとも限りません。不正を0%にする方法は有りませんから,不正ができにくい制度にすると共に,不正が起きた場合の原状回復というか完全に補填がされる制度にすべきです。現行法では,親族等が受託者となる場合に,受託者の責任を当事者の意思で軽減することできるという規定が可能になっています。
最後に,受託者の担い手です。現行法では,信託を業として行う場合,信託銀行や信託会社しか受託者になれません。この規制があるため,採算ベースに乗らない信託は,親族等の知り合いが1回限り受託するに近い形にしなければなりません。
でも,財産管理という仕事は,プロに任せるべきです。必ずしも含め知り合いに財産管理に堪能な人が存在するわけではありません。そのような人を探すのが大変です。これについては,成年後見(財産管理も任務の一つ)で既に実績をあげている司法書士,弁護士等あるいは,彼等が設立した団体を活用し,この場合は,信託業法の規制を外すべきです。信託の利用が適する事例は,数多くあります。高齢化社会を迎え,このニーズは増えることがあっても減ることは想定できません。信託利用の背景を,速やかに実態に合わせるべく地道にかつ普段の活動が必要になってきています。
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1 コメント
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- ねぇ (nene777ne@yahoo.co.jp)
- 2012-05-12 14:38:07
- はじめまして!( )/!ーロハ ンッ( ・) コッチダ!(^ー^)/ハロー!! 初めてコメント残していきます、おもしろい内容だったのでコメント残していきますねー私もブログ書いてるのでよければ相互リンクしませんか?私のブログでもあなたのブログの紹介したいです、私のブログもよかったら見に来てくださいね!コメント残していってくれれば連絡もとれるので待ってますねーそいじゃ。.。:+* ゜ ゜゜ *+:。.。:+* ゜アドレス残していくのでメールしてね!そいじゃ。.。:+* ゜ ゜゜ *+:。.。:+* ゜
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